善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

BOOK

敗れざる者 柳広司「アンブレイカブル」

柳広司「アンブレイカブル」(角川書店)を読む。 作者は「ジョーカー・ゲーム」などで知られるミステリー作家。ミステリー好きとしては新刊が出たというので手にとるが、ミステリーというよりサスペンスタッチの社会的メッセージを込めた小説で、なかなか読…

ナイジェリア発のミステリー「マイ・シスター、シリアルキラー」

オインカン・ブレイスウェイト「マイ・シスター、シリアルキラー」(栗飯原文子訳、ハヤカワ・ポケミス)を読む。 ナイジェリアのミステリー。 2019年のロサンゼルス・タイムズ賞(ミステリ部門)、アンソニー賞最優秀新人賞、アマゾン・パブリッシング・リ…

「ネヴァー・ゲーム」「素晴らしき世界」

2冊続けて海外ミステリーを読む。 1冊目はジェフリー・ディヴァー「ネヴァー・ゲーム」(訳・池田真紀子、文藝春秋)。 リンカーン・ライム、キャサリン・ダンスのシリーズに続く新シリーズの第1作。主人公は姿を消した人間を追跡する名人、コルター・ショウ…

「果てしなき輝きの果てに」「その手を離すのは、私」

女性作家によるミステリーを、2冊続けて読んだ。 1冊目はリズ・ムーアの「果てしなき輝きの果てに」(訳・竹内要江、ハヤカワ・ポケミス)。 舞台はアメリカ・フィラデルフィア郊外の街ケンジントン。薬物蔓延と連続殺人事件に揺れる街で、失踪した娼婦の妹…

柳美里「JR上野駅公園口」意外なテーマ

柳美里「JR上野駅公園口」(河出書房新社)。 2014年に出版された小説だが、今年11月、米国で最も権威のある文学賞の1つとされる全米図書賞の翻訳文学部門に選ばれたというので読む。 読んでみたらこの本は意外なことに、天皇制と私たちについて考える本で…

圧倒的な自然と命の描写 ザリガニが鳴くところ

ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」(訳・友廣純、早川書房)を読む。 作者はジョージア州出身の動物学者、小説家。ジョージア大学で動物学の学士号を、カリフォルニア大学ディヴィス校で動物行動学の博士号を取得し、動物にまつわるノンフィク…

「椿井文書―日本最大級の偽文書」が問うもの

馬部(ばべ)隆弘著「椿井文書(つばいもんじょ)―日本最大級の偽文書(ぎもんじょ)」(中公新書)を読む。 著者は気鋭の日本中世史・近世史の研究家で現在大阪大谷大学文学部准教授。 本書の扉にこう書かれてある。 「中世の地図、失われた大伽藍や城の絵図…

数学者訪問 輝数遇数 PART I

現代数学社発行の単行本「数学者訪問 輝数遇数 PART I」を読む。 写真/河野裕昭、文/内村直之・亀井哲治郎・里田明美・冨永 星・吉田宇一。 現代数学社は「現代数学」という月刊誌を発行していて、2015年4月号から「数学者訪問」という連載をスタートさせて…

ボンベイ、マラバー・ヒルの未亡人たち

スジャータ・マッシー「ボンベイ、マラバー・ヒルの未亡人たち」(訳・林香織、小学館文庫)を読む。 今からほぼ100年前の、イギリス領下にあった1921年のインド・ボンベイ(今のムンバイ)を舞台にした歴史ミステリー。 ちっちゃな文字で、文庫本629ページ…

愛=御大切=人はみな平等 中村文則「逃亡者」

第2次世界大戦時に日本軍を鼓舞したという「ファナティシズム(熱狂)」と呼ばれる伝説のトランペットを偶然、手に入れたジャーナリストの山峰は、謎の組織から追われることになる。 話はドイツや日本を舞台にしたサスペンスタッチの逃亡劇に始まり、潜伏キリ…

特捜部Q アサドの祈り

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q アサドの祈り」(吉田奈保子訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリー)を読む。 デンマークの警察を舞台にした特捜部Qシリーズ第8弾。 フィクションの世界を描いているが、そのときどきの社会問題に光をあてるジャーナリ…

「黒と白のはざま」と「Black Lives Matter」

ロバート・ベイリー「黒と白のはざま」(吉野弘人訳、小学館文庫)を読む。 前作の「ザ・プロフェッサー」に続くリーガル・サスペンス。 続きが気になって一気読みしてしまった。 白人至上主義結社KKK(クー・クラックス・クラン)誕生の地、テネシー州プラ…

マイクル・コナリー レイトショー

マイクル・コナリー「レイトショー」(吉沢嘉通訳、講談社文庫)を読む。 マイクル・コナリーの30冊目の長編小説。 これまでリンカーン弁護士のミッキー・ハラーや、ロス市警の刑事ハリー・ボッシュ(たしか60代後半で引退年齢のはずだが)のシリーズを続け…

スウェーデンの歴史ミステリー「1793」

ニクラス・ナット・オ・ダーグ「1793」(ヘレンハルメ美穂訳、小学館)を読む。 スウェーデンを舞台にした歴史ミステリー。 おぞましい箇所が次々と出てくるのだが、文章は流麗で(訳者のヘレンハルメ美穂さんの功績大だと思うが)、史実もよく調べられてい…

ジェイムズ・A・マクラフリン 熊の皮

ジェイムズ・A・マクラフリン著「熊の皮」(ハヤカワ・オステリ、青木千鶴訳)を読む。 2019年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀新人賞に輝いた作品。 ミステリーというより自然と融合したような冒険ノワール。 主人公はアパラチア山脈の一角に…

時計の役割

6月にフランスを旅したとき、どのカテドラルにも立派な機械式の時計があった。ストラスブールにはからくり付きの天文時計があったし、リヨンのサン・ジャン大聖堂では14世紀につくられたという天文時計が見事だった。 そういえば以前プラハに行ったときに見…

マイクル・コナリー 訣別

マイクル・コナリー「訣別」(上・下、古沢嘉通訳、講談社文庫) 原題は「The Wrong Side of Goodbye」 ロサンゼルス市警の刑事で一匹オオカミのハリー・ボッシュを主人公としたシリーズの19作目。ちなみにボッシュの本名はヒエロニムス・ボッシュ(Hieronymus…

木内昇 化物蝋燭

木内昇の「化物蝋燭」(朝日新聞出版)を読む。 江戸の市井を舞台にした7つの奇譚集。 読んでいるうちに心が優しくなる怪談話。 背筋が寒くなる話もあった。 何年か前、「光炎の人」を読んで以来ファンになった。 前作の「求道恋々」も痛快でおもしろかった…

山口晃 親鸞全挿画集

「親鸞全挿画集」(山口晃)青幻舎刊 今、注目の画家、山口晃の画集というので手にとる。 695ページにも及ぶ大型本。片手で持っているとつらいほどの重さ。しかし、ページを開き出すと止まらずに一気読み。いや挿画だから一気見というべきか。 「親鸞」は200…

西村玲さんの仏教における「創世記」

4月10日の朝日新聞のウェブ版で、大きな研究成果を上げて将来を期待されながら自ら命を絶った女性研究者の話を読んだ。 西村玲(りょう)さんという人で、2016年2月に亡くなったが、享年43という若さだった。 東北大学で日本思想史を学び、仏教研究で博士(…

アレン・エスケンス 償いの雪が降る

アレン・エスケンス「償いの雪が降る」(務台夏子訳、創元推理文庫) 原題は「The Life We Bury」 新人作家のデビュー作。といっても複数の大学で学んだあと、25年間、刑事専門の弁護士として働き、現在は引退。2014年に発表したのが本作というから、決して…

ウグイスの初鳴き

火曜日朝の善福寺公園は晴れ。雲が多いがかんかん照りよりはいいかも。 きのうは午前中を中心に激しい雨が降った。 その前日、カワセミはせっせと巣作りしていたが、どうなったか? 心配で真っ先に見に行ったが、やはり穴はかなり泥で埋まっていて、カワセミ…

A・J・フィン ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ

A・J・フィン「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」( 上・下巻、池田真紀子訳、早川書房) 精神分析医のアナ・フォックスは、夫と娘と離れてニューヨークの高級住宅地の屋敷に10カ月もひとりこもって暮らしていた。広場恐怖症のせいで、そこから一歩たりとも…

アンドレアス・フェーア 弁護士アイゼンベルク

アンドレアス・フェーア「弁護士アイゼンベルク」(酒寄進一訳、創元社文庫)を読む。 ドイツのミステリー。著者のアンドレアス・フェーアはドイツのバイエルン州生まれ。バイエルン州の放送メディアで法律関係の職務に携わりながら、1991年からミステリ・ド…

極夜行 冒険家と犬の関係

角幡唯介「極夜行」(文藝春秋)を読む。 数カ月間を極夜、太陽のない暗闇に閉ざされた極北の地を単独行した探検記。 大学時代からさまざまな未知の空間を追い求めて旅をしてきた著者は、この数年、冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇…

ブルーバード、ブルーバード

アッティカ・ロック「ブルーバード、ブルーバード」(高山真由美訳・ハヤカワポケミス)を読む。 東テキサスの中心を南北に貫くハイウェイ59号沿いの田舎町で白人女性と黒人男性の死体が発見される。人種差別が根深く絡む事件に黒人のテキサス・レンジャーが…

ブルックリンの少女

ギヨーム・シュッソ「ブルックリンの少女」(吉田恒雄訳、集英社文庫)。 人気小説家のラファエルは、婚約者のアンナと南フランスで休暇を楽しんでいた。なぜか過去をひた隠しにするアンナに彼が詰め寄ると、観念した彼女が差し出したのは衝撃的な光景の写真…

贖罪の街 炎の色

正月に読んでおもしろかった本。 まずはマイクル・コナリーの「贖罪の街」(訳・古沢嘉通、講談社文庫 上・下)。 ロス市警の刑事だったボッシュとリンカーン弁護士ハラーの共演による物語。 もともとマイクル・コナリーはボッシュ・シリーズとリンカーン弁…

監禁面接

ピエール・ルメートル「監禁面接」(橘明美訳・文藝春秋) 最新作とかいってるけど、2011年の「その女アレックス」のヒット以来それまで日本ではあまり知られてなかったルメートルの発掘?出版が続いていて、本書も2010年の作品。 原題は「Cadres coirs」 「…

偽りの銃弾

「偽りの銃弾」(ハーラン・コーベン、訳・田口俊樹、大谷瑠璃子。小学館文庫)を読む。 何者かに夫を射殺された元特殊部隊ヘリパイロットのマヤ。2週間後、自宅に設置した隠しカメラに映っていたのは殺されたはずの夫だった。夫の死の謎を追い、マヤは姉ク…