善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

#小説

知らなかった言葉と出会う 「雪旅籠」

戸田義長「雪旅籠」(創元推理文庫)を読む。 江戸末期から明治へと移り変わる時代を舞台にした話に、現代風のミステリーの手法をほどこしての謎解き小説。 主人公は、若き日より“八丁堀の鷹”と謳われてきた北町奉行所定町廻り同心の戸田惣左衛門と、その跡…

敗れざる者 柳広司「アンブレイカブル」

柳広司「アンブレイカブル」(角川書店)を読む。 作者は「ジョーカー・ゲーム」などで知られるミステリー作家。ミステリー好きとしては新刊が出たというので手にとるが、ミステリーというよりサスペンスタッチの社会的メッセージを込めた小説で、なかなか読…

ナイジェリア発のミステリー「マイ・シスター、シリアルキラー」

オインカン・ブレイスウェイト「マイ・シスター、シリアルキラー」(栗飯原文子訳、ハヤカワ・ポケミス)を読む。 ナイジェリアのミステリー。 2019年のロサンゼルス・タイムズ賞(ミステリ部門)、アンソニー賞最優秀新人賞、アマゾン・パブリッシング・リ…

“奇想の絵師”描いた「絵ことば又兵衛」

谷津矢車「絵ことば又兵衛」(文藝春秋)を読む。 「浮世絵の祖」とか「奇想の絵師」とも呼ばれる江戸時代初期の絵師、岩佐又兵衛の幼少期から成熟期に至る姿を描いた長編小説。 岩佐又兵衛は実在の人物で、1578年(天正6年)の生まれ、1650年(慶安3年)没…

柳美里「JR上野駅公園口」意外なテーマ

柳美里「JR上野駅公園口」(河出書房新社)。 2014年に出版された小説だが、今年11月、米国で最も権威のある文学賞の1つとされる全米図書賞の翻訳文学部門に選ばれたというので読む。 読んでみたらこの本は意外なことに、天皇制と私たちについて考える本で…

圧倒的な自然と命の描写 ザリガニが鳴くところ

ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」(訳・友廣純、早川書房)を読む。 作者はジョージア州出身の動物学者、小説家。ジョージア大学で動物学の学士号を、カリフォルニア大学ディヴィス校で動物行動学の博士号を取得し、動物にまつわるノンフィク…

ノルウェーのミステリー カタリーナ・コード

ヨルン・リーエル・ホルスト「警部ヴィスティング カタリーナ・コード」(中谷友紀子訳、小学館文庫)を読む。 ノルウェーのミステリー。著者自身が警察官出身で、シリーズものの一冊らしい。 ノルウェー南部の小都市、ラルヴィク警察犯罪捜査部の警部ヴィリ…

愛=御大切=人はみな平等 中村文則「逃亡者」

第2次世界大戦時に日本軍を鼓舞したという「ファナティシズム(熱狂)」と呼ばれる伝説のトランペットを偶然、手に入れたジャーナリストの山峰は、謎の組織から追われることになる。 話はドイツや日本を舞台にしたサスペンスタッチの逃亡劇に始まり、潜伏キリ…

特捜部Q アサドの祈り

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q アサドの祈り」(吉田奈保子訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリー)を読む。 デンマークの警察を舞台にした特捜部Qシリーズ第8弾。 フィクションの世界を描いているが、そのときどきの社会問題に光をあてるジャーナリ…

ダン・フェスパーマン 隠れ家の女

ダン・フェスパーマン「隠れ家の女 」(訳・東野さやか、集英社文庫) 原題の「SAFE HOUSES」とは、直訳すれば「安全な家」だが、スパイなどが使う「隠れ家」を意味するんだとか。 まさしくスパイ小説とナゾ解きミステリを掛け合わせたような小説。文庫本660…

カナダ人は田舎者? 「ネプチューンの影」

フレッド・ヴァルガス「ネプチューンの影」(田中千春訳、東京創元社) フレッド・ヴァルガスは1957年パリ生まれ。シュールレアリスムの研究者を父に持つ二卵性双生児の姉妹の妹だという。パリ十三区警察署長アダムスベルグ・シリーズの1冊で、CWA賞受賞作と…

マイクル・コナリー レイトショー

マイクル・コナリー「レイトショー」(吉沢嘉通訳、講談社文庫)を読む。 マイクル・コナリーの30冊目の長編小説。 これまでリンカーン弁護士のミッキー・ハラーや、ロス市警の刑事ハリー・ボッシュ(たしか60代後半で引退年齢のはずだが)のシリーズを続け…

スウェーデンの歴史ミステリー「1793」

ニクラス・ナット・オ・ダーグ「1793」(ヘレンハルメ美穂訳、小学館)を読む。 スウェーデンを舞台にした歴史ミステリー。 おぞましい箇所が次々と出てくるのだが、文章は流麗で(訳者のヘレンハルメ美穂さんの功績大だと思うが)、史実もよく調べられてい…

昔の記憶蘇った「夢見る帝国図書館」

遅ればせながら中島京子「夢見る帝国図書館」(文藝春秋)を読む。 上野にある国立国会図書館支部の「上野図書館」を主人公にした小説。上野図書館といっても2000年からは国際子ども図書館となっているが、戦前までは帝国図書館であり、戦後の1949年に永田町…

ジェイムズ・A・マクラフリン 熊の皮

ジェイムズ・A・マクラフリン著「熊の皮」(ハヤカワ・オステリ、青木千鶴訳)を読む。 2019年のアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀新人賞に輝いた作品。 ミステリーというより自然と融合したような冒険ノワール。 主人公はアパラチア山脈の一角に…

マイクル・コナリー 訣別

マイクル・コナリー「訣別」(上・下、古沢嘉通訳、講談社文庫) 原題は「The Wrong Side of Goodbye」 ロサンゼルス市警の刑事で一匹オオカミのハリー・ボッシュを主人公としたシリーズの19作目。ちなみにボッシュの本名はヒエロニムス・ボッシュ(Hieronymus…

木内昇 化物蝋燭

木内昇の「化物蝋燭」(朝日新聞出版)を読む。 江戸の市井を舞台にした7つの奇譚集。 読んでいるうちに心が優しくなる怪談話。 背筋が寒くなる話もあった。 何年か前、「光炎の人」を読んで以来ファンになった。 前作の「求道恋々」も痛快でおもしろかった…

A・J・フィン ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ

A・J・フィン「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」( 上・下巻、池田真紀子訳、早川書房) 精神分析医のアナ・フォックスは、夫と娘と離れてニューヨークの高級住宅地の屋敷に10カ月もひとりこもって暮らしていた。広場恐怖症のせいで、そこから一歩たりとも…

アンドレアス・フェーア 弁護士アイゼンベルク

アンドレアス・フェーア「弁護士アイゼンベルク」(酒寄進一訳、創元社文庫)を読む。 ドイツのミステリー。著者のアンドレアス・フェーアはドイツのバイエルン州生まれ。バイエルン州の放送メディアで法律関係の職務に携わりながら、1991年からミステリ・ド…

ブルックリンの少女

ギヨーム・シュッソ「ブルックリンの少女」(吉田恒雄訳、集英社文庫)。 人気小説家のラファエルは、婚約者のアンナと南フランスで休暇を楽しんでいた。なぜか過去をひた隠しにするアンナに彼が詰め寄ると、観念した彼女が差し出したのは衝撃的な光景の写真…

贖罪の街 炎の色

正月に読んでおもしろかった本。 まずはマイクル・コナリーの「贖罪の街」(訳・古沢嘉通、講談社文庫 上・下)。 ロス市警の刑事だったボッシュとリンカーン弁護士ハラーの共演による物語。 もともとマイクル・コナリーはボッシュ・シリーズとリンカーン弁…

監禁面接

ピエール・ルメートル「監禁面接」(橘明美訳・文藝春秋) 最新作とかいってるけど、2011年の「その女アレックス」のヒット以来それまで日本ではあまり知られてなかったルメートルの発掘?出版が続いていて、本書も2010年の作品。 原題は「Cadres coirs」 「…

偽りの銃弾

「偽りの銃弾」(ハーラン・コーベン、訳・田口俊樹、大谷瑠璃子。小学館文庫)を読む。 何者かに夫を射殺された元特殊部隊ヘリパイロットのマヤ。2週間後、自宅に設置した隠しカメラに映っていたのは殺されたはずの夫だった。夫の死の謎を追い、マヤは姉ク…

そしてミランダを殺す

最近読んだミステリーの中でおもしろかったのが「そしてミランダを殺す」(創元推理文庫)。 ピーター・スワンソン作、務台夏子訳。 実業家のテッドは空港のバーで見知らぬ美女リリーに出会う。 彼は酔った勢いで妻ミランダの浮気を知ったことを話し「妻を殺…

池上永一 ヒストリア

池上永一の「ヒストリア」(角川書店)を読む。 沖縄を舞台に描いた「テンペスト」以来のファンだが、今回も主人公は沖縄の女性。 第二次世界大戦の米軍の沖縄上陸作戦で家族すべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉(れん)。一時の成功を収め…

ジュリア・ダール「インヴィジブル・シティ」

「インヴィジブル・シティ」(ジュリア・ダール、訳・真崎義博、ハヤカワ・ミステリ文庫)を読む。 作者のデビュー作で、エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)の最優秀新人賞にノミネートされ、その後、アメリカ私立探偵作家クラブのシェイマス賞や、マカ…

球道恋々

木内昇の「球道恋々」(新潮社)を読む。 おもしろくて一気読み。 最近読んだ本では恩田陸の「蜜蜂と遠雷」もそれなりにおもしろかったが、ピアノという音の世界をよくもあれだけの文学にしたなー、と感嘆はしたものの、物語自体は予想通りの展開で特に読後…

フロスト始末

いつ出版されるかと待ち焦がれていたフロスト警部シリーズの最終作「フロスト始末」(芹澤恵訳・創元推理文庫)を読む。 作者のR・D・ウィングフィールドは1928年ロンドン生まれ。2007年没。翌08年にシリーズ最終作が出版される。それが本書。ようやく今年に…

「陸王」が問う企業とは何か?

遅ればせながら池井戸潤『陸王』(集英社)を読む。 行田市にある足袋づくり100年の歴史を持つ老舗零細メーカー「こはぜ屋」が世界のブランドメーカーに抗してランニングシューズづくりに挑む物語。 「陸王」とはこはぜ屋がつくるシューズの名前。 読み始め…

木内昇「光炎の人」

木内昇「光炎の人」(上下巻、角川書店)を読む。 技術(というより技術者、科学者)がいかに時代の動きと密接に結びついていて、ときとして暴走さえしてしまうことを教えてくれる小説だった。 その意味で、読んでいておもしろかったが、読後感は重い。 時は…