オーストラリアの赤ワイン「ストーンホース・カベルネ・ソーヴィニヨン(STONEHORSE CABERNET SAUVIGNON)2021」

生産者は南オーストラリア、バロッサ・ヴァレーの老舗ワイナリー、ケーズラー。
「ストーンホース」という名前は、トラクターがない時代に重い泥土壌で働いた農耕馬に敬意を表してつけられたという。
バランスがとれてエレガントな味わい。
ワインの友で観たのは、民放のCSチャンネルで放送していたアメリカ映画「ジョンQ‐最後の決断‐」。
2002年の作品。
原題「JOHN Q」
監督ニック・カサヴェテス、脚本ジェームズ・カーンズ、音楽アーロン・ジグマン、撮影ロジェ・ストファーズ、出演デンゼル・ワシントン、キンバリー・エリス、ダニエル・E・スミス、ロバート・デュヴァル、ジェームズ・ウッズ、アン・ヘッシュ、レイ・リオッタほか。

息子の心臓移植手術を実現させるため人質篭城事件を起こした父親を描く社会派サスペンス。
シカゴで鉄鋼労働者として働くジョン・クインシー・アーチボルド(愛称ジョンQ、デンゼル・ワシントン)の9歳になる息子マイケル(ダニエル・E・スミス)が突然倒れ、病院に運ばれて心臓病と判明。
ジョンは心臓移植手術を希望するが、知らない間に会社の保険契約が書き換えられており、不況から半日勤務となっていた彼には保険が適用されないことが分かる。
入院費用を工面しようと妻のデニーズ(キンバリー・エリス)とともに家財道具を手放したりするがまるで足りず、病院からは転院を求められる。
息子の容体への焦りと度重なる不当な仕打ちから、ついにジョンは拳銃を手に人質をとって病院を占拠し、息子の心臓移植を実現させようとするが・・・。
不十分な保険制度や、利益優先の医療の実態など、貧乏人を切り捨てようとする歪んだ構造を鋭く告発する力作で、サスペンス&ヒューマンドラマ。
アメリカには、日本のような全国民を対象とした公的医療保険制度(国民皆保険)はない。
アメリカの公的医療保険制度がカバーしているのは、65歳以上の高齢者や特定の障害を持つ人を対象としたメディケアと、一定の基準(所得や資産など)を下回る低所得者や妊婦、障害者などが対象のメディケイドだけ。それ以外の人たちは勤めている企業を通じて民間保険に加入するが、企業負担が大きいため、経営難の企業はサービスの種類が少なく、保険料が安い保険プランを選択する傾向があるといわれる。
どの保険にも加入していない無保険者も約4000万人いるという。
それではあまりにひどい、というので、2010年に民主党オバマ政権が行った医療保険制度改革により制度化されたのがオバマケア。所得が低い人でも保険に加入できるよう、政府が保険料を補助する制度だが、オバマケアは今も存続しているものの、補助金の期限切れや政治的な対立により保険料の高騰が大きな問題となっていて、トランプ大統領は撤廃を公約に掲げている。
映画でも、労働者が置かれた劣悪な現状が浮き彫りになっている。
息子の命を救う心臓移植には約25万ドルの手術費用が必要といわれる。
しかし、ジョン夫妻は家や車の支払いが遅れており貯金がわずか1000ドルしかないのに、病院はマイケルを臓器移植リストに載せるだけでも7万5000ドルの頭金が必要といってくる。
ジョンは「会社に勤めていて保険に入っているので、それでカバーできる」というが、病院長のレベッカは「あなたが入っている保険は移植手術には適用されない」と告げる。
愕然としてジョンが働いている会社に問い合わせると、彼は会社のリストラにあってフルタイムからパートタイムに格下げされていて、その際に本人には無断で保険のランクも下げられたため、高額な移植手術には適用されなくなっていることを知る。
国からの補助は?というと、両親ともに健在で職があるという理由で、国からの補助も受けられない。
ジョンに支払い能力が乏しいとわかるや、病院は息子をほかの病院に移すようにいってくる。資金や十分な保険がない患者にはいてほしくないというわけで、命よりも支払い能力が優先される医療の現実が描かれる。
やけっぱちになったジョンは、何とか息子の命を救おうと、心臓移植ができる外科医や看護師、居合わせた患者らに拳銃を突きつけて人質にし、病院に立て籠もる。
立て籠もってる間、人質の多くはジョンの苦境に同情するようになり、アメリカの医療制度の欠陥について考え始める。
看護師の一人が、息子のマイクが重い心臓病であることは、定期検診でもっと早く発見できたはずだという。それなのに医者は保険会社からボーナスを得るため、わざと黙っていたことを明らかにするシーンもある。
何て貧しいアメリカの医療保険制度なのか、それにくらべて日本は国民皆保険でよかった、と思ったら、最近は日本でも、高額療養費制度の自己負担限度額の引き上げが行われているし、高齢者の窓口負担の増額の動きなんかもあるので、安心はできない。
アメリカも日本も同じで、一般国民から少しでもカネを搾り取ろうというのが国のやり方なのだろうか?
映画を観ていて、「おや?」と思う場面があった。
病院の利益を優先する病院長を演じていたアン・ヘッシュが、映画の最後のほうで涙を流すシーンだ。
患者の命より病院経営のことしか考えない冷酷な人物として描かれていたのに、どうしたわけか?というと、ジョンによる籠城事件がテレビで生中継され、彼の家族愛や息子の命を救おうとする姿がテレビ画面に映される。父親の純粋な愛を見て心を動かされた彼女は、そこでようやく人間的な気持ちを取り戻し、自分の誤りに気づいてマイケルを臓器移植リストに載せ、心臓移植への道を開く。
彼女が涙を流すシーンは、女優としての彼女も強く望んだのではないだろうか?
実はアン・ヘッシュは、本作から20年後の2022年8月、53歳のときにロサンゼルスで乗用車を運転中に住宅に突っ込む事故を起こし、病院に搬送されたものの6日後に脳死と判定された。彼女は生前から臓器提供を強く希望しており、実際に臓器提供が行われた。
もしかしたら彼女は、本作に出演して涙を流す役を演じたことで、臓器提供を希望するようになったのかもしれない。
映画の中だけでなく、現実でも彼女は、自らの臓器を提供して他人の命を救ったのだった。