善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

#ノンフィクション、エッセイ

今だからこそ 香月泰男と立花隆

先日、東京・練馬区立美術館で、抑留体験を描いた「シベリア・シリーズ」で知られる画家・香月泰男(1911~1974年)の大規模回顧展である「香月泰男展」を観て衝撃を受け、香月泰男とはどんな人かますます興味を抱いたところ、昨年4月に亡くなったジャーナリ…

虫たちの日本中世史 『梁塵秘抄』からの風景

植木朝子「虫たちの日本中世史 『梁塵秘抄』からの風景」(ミネルヴァ書房)を読む。 平安時代末期に編まれた歌謡集「梁塵秘抄(りょうじんひしょう)」を手がかりに、中世の人々と虫の関わりを紹介しながら虫の世界からのぞいた中世の風景を描いている。 毎…

江戸時代の旅人はどう歩き、走ったか?

谷釜尋徳「歩く江戸の旅人たち スポーツ史から見た『お伊勢参り』」(晃洋書房)を読む。 江戸時代、庶民が娯楽目的で長距離旅行をすることが流行るようになった。 当時の旅行はほぼすべてが徒歩によるものだ。しかも、好き勝手に旅行することは許されないか…

極夜行 冒険家と犬の関係

角幡唯介「極夜行」(文藝春秋)を読む。 数カ月間を極夜、太陽のない暗闇に閉ざされた極北の地を単独行した探検記。 大学時代からさまざまな未知の空間を追い求めて旅をしてきた著者は、この数年、冬になると北極に出かけていた。そこには、極夜という暗闇…

井上都 ごはんの時間

井上都『ごはんの時間 井上ひさしがいた風景』(新潮社) 亡くなった作家・井上ひさしの長女である著者が父といた日々を振り返りながら綴ったエッセイ集。 2014年4月から16年3月までに2年間、毎日新聞夕刊に毎週掲載したコラムをまとめたものという。 父と母…

シルクロード・路上の900日

大村一朗『シルクロード路上の900日 西安・ローマ1万2000キロを歩く』(めこん)を読む。 図書館の新着図書のコーナーに置いてあったので手にとる。奥付を見たら2004年発行とあり、けっこう古い本だった。 620ページからなる分厚い本だったが、日記風なので…

天人 深代惇郎と新聞の時代

後藤正治『天人 深代惇郎と新聞の時代』(講談社)を読む。 朝日新聞の「天声人語」の執筆者であった希代の名コラムニスト、深代惇郎を描いたノンフィクション。 「天人」とは「天声人語」の略という。なんだかエラそうに聞こえるが、「天声人語」とは「天に…

声の世界を旅する

増野亜子『声の世界を旅する』(音楽之友社)を読む。 世界各地の人々の暮らしと声との関係、いわば“声の文化”を考察した本。 読んでて特に感銘を受けたのはモンゴルの遊牧民と動物の声について。 『らくだの涙』というドキュメンタリーに出てくるエピソード…

知の巨人 荻生徂徠伝(再掲)

ダブりますけどもう1回。 佐藤雅美『知の巨人 荻生徂徠伝』(角川書店)を読む。 別に荻生徂徠に興味を持ったからではなく、佐藤雅美の時代小説ファンとして手にとったにすぎないが、なかなかおもしろかった。 さすが小説家だけあって読みやすく書いていた。…

知の巨人 荻生徂徠伝

佐藤雅美『知の巨人 荻生徂徠伝』(角川書店)を読む。 別に荻生徂徠に興味を持ったからではなく、佐藤雅美の時代小説ファンとして手にとったにすぎないが、なかなかおもしろかった。 さすが小説家だけあって読みやすく書いていた。ただし、フィクションを加…

へるん先生の汽車旅行

芦原伸『へるん先生の汽車旅行』(集英社インターナショナル)を読む。 日本を世界に紹介した作家で日本研究者でもあるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の生涯を、ハーンが鉄道でたどった旅を筆者自身が現在の鉄道でもう一度たどる形で描くノンフィクション…

八代目正蔵戦中日記

『八代目正蔵戦中日記』(青蛙房)を読む。 八代目林家正蔵(晩年に彦六と改名)が1942年12月から45年8月末まで書き綴った日記。 真珠湾攻撃が1941年12月のことだから、その翌年から終戦までの記録。 よくも克明に日記をつけていたと思うが、本になったのは…

マヤコフスキー事件

小笠原豊樹『マヤコフスキー事件』(河出書房新社)を読む。 マヤコフスキーといえば旧ソ連を代表する詩人の一人。20代のころ、マヤコフスキーとかフランスのアラゴンなんかの詩を読んだのを思い出す。 先ごろ第65回読売文学賞(評論・評伝賞)を受賞した本…

剣術修行の旅日記

永井義男『剣術修行の旅日記 佐賀藩・葉隠武士の「諸国廻歴日録」を読む』(朝日新聞出版)を読む。 佐賀藩鍋島家の家臣で二刀流の遣い手が、嘉永6年(1853)9月から安政2年(1855)9月まで、およそ2年間にわたって諸国武者修行をした旅の日記をもとにまとめ…

増補版 誤植読本

『増補版 誤植読本』(高橋輝次編 ちくま文庫)を読む。 元の原稿の文字や記号を間違って印刷してしまうことを誤植という。 昔は活字を1本1本並べて置いて組版というのをつくっていて、これを植字というが、植字の際、活字を間違えて置いてしまうのを誤植…

高橋一清 作家魂に触れた

高橋一清『作家魂に触れた』(青志社) 新聞の書評を読んで手に取った本。 筆者は文芸春秋の「文学界」や「オール読物」などの編集者として著名作家を担当する一方、新人作家の発掘、育成にもかかわり、芥川賞や直木賞の選考に当たる日本文学振興会理事も務…

井上ひさしの読書眼鏡

なぜかこのところ井上ひさしの本を読んでいる。というか死後になって生前書いた本が相次いで出版されているせいもあるが。 『井上ひさしの読書眼鏡』(中央公論新社)を読む。 「読売新聞」の2001年1月28日付から04年4月25日付までの読書欄?に載ったエッセ…

大野更紗 『困っているひと』

大野更紗さんの『困っているひと』を読む。 ミャンマー(ビルマ)の難民問題を研究し、現地にまで出かけていってNGOの活動にのめり込んでいた著者(当時24歳の大学院生)はある日突然、難病に襲われる。あちこちの医療機関を、それこそ難民のごとくまわり…

伊藤礼「まちがいつづき」

伊藤礼氏のエッセイ集『まちがいつづき』(講談社)を読む。伊藤氏は作家・伊藤整氏の次男で、元日本大学芸術学部教授(英文学)。ちなみに同書は1994年発行の古い本。 「ニョーボー」と題するエッセイがおもしろかった。 伊藤氏は教師なので、教室で出席を…