2冊続けて海外ミステリーを読む。
1冊目はジェフリー・ディヴァー「ネヴァー・ゲーム」(訳・池田真紀子、文藝春秋)。
リンカーン・ライム、キャサリン・ダンスのシリーズに続く新シリーズの第1作。主人公は姿を消した人間を追跡する名人、コルター・ショウ。
キャンピングカーで移動しながら、失踪人や逃亡犯に懸賞金がかけられると現地へ赴いて調査に着手する、いわば“流浪の探偵”。常に確率にもとづいて冷静に状況を分析する明晰な頭脳と、父に叩きこまれたサバイバル術で多くの事件を解決してきたショウは、シリコンバレーに住む男の依頼で何者かに誘拐された娘を探すことになる。そして、事件の背後にはビデオゲームが絡んでいることを知るが・・・。
やがて次々と誘拐事件が発生するのだが、物語の後半の方で政治絡みの事件に発展していく。
アメリカではネット上でのフェイクニュースが横行しているらしい。ネットで流れる無料のニュースには広告が入っていて、多くの人がアクセスして広告をクリックすると発信者に収入が入る仕組みになっている。そこで、広告収入を増やすため何とかクリックの回数を増やそうと、みんなが注目してアクセス数が増えそうなウソのニュースが仕組まれるわけだ。
本書に登場するのは、ネット配信により無料でオンラインゲームを楽しむことができるものの、ゲームが始まる前にニュース番組が数分間流れ、それを見終わらないとゲームが始まらない仕組みになっていて、その中でフェイクニュースを流し、そこから金銭的な利益を得ている、という話で、敵対候補を陥れようとする政治家がこれを利用しているのだという。
何だか現実のアメリカの選挙みたいな話だが、日本でだってネット上には、真実かどうか分からない情報が次々と現れ、拡散され続けている現実があり、対岸の火事ですますわけにはいかない。
つづいてはマイクル・コナリー「素晴らしき世界」(訳・古沢嘉通、講談社文庫 上・下)。
ロス市警の元刑事ハリー・ボッシュシリーズに、同市警ハリウッド署深夜勤務担当女性刑事レネイ・バラードが加わる新シリーズ。
深夜勤務からハリウッド署に戻ってきたバラードは、古い事件ファイルを見ず知らずの男が漁っていたのに気づく。男はロス市警を引退したハリー・ボッシュで、ハリウッド分署管内で発生した古い未解決事件のファイルを調べていたのだった。
15歳の家出少女がハリウッドの路地で殺害された事件。バラードはボッシュと協力して殺人事件の真相解明に向かう・・・。
ボッシュはとっくの昔にロス市警を定年で辞め、その後、ロス市に囲まれた小さな自治体サンフェルナンド市警察のパートタイム刑事となるが、今回は予備警察官というさらに不安定に地位になっちゃってるようだ。
前作のパートタイム刑事のときにすでに65歳だったから、本作ではさらに70に近い年齢になっているはずだ。
いつもこのシリーズを読みながら、「ボッシュはどんな風貌だろう」と想像を巡らしているが、本書によれば白髪頭で口ひげを生やしているという。
何となく目に浮かぶ感じがするが、長年このシリーズを愛読していると、ボッシュとともに読んでるわれわれも年を取っていく。そこのところがこのシリーズの魅力でもある。
本作の最後の方で、どうやらボッシュはとうとう刑事を辞めてしまうようだ。そのかわりレネイ・バラードという現役警察官の新しい“相棒”を見つけたから、次作からはまた新しいボッシュシリーズを楽しめそうだ。