原題は「The Wrong Side of Goodbye」
ロサンゼルス市警の刑事で一匹オオカミのハリー・ボッシュを主人公としたシリーズの19作目。ちなみにボッシュの本名はヒエロニムス・ボッシュ(Hieronymus Bosch)。つまりルネッサンス期のネーデルランドの画家、ヒエロニムス・ボスと同姓同名。
今年読んだミステリーで一番おもしろかった。
19作の間にボッシュにはいろんなことがあり、今はロス市警を退職して年齢も66歳。しかし“刑事魂”は衰えていなくて、ロス市警時代の旧知の知人が本部長を務めるロス北郊の小さな自治体サンフェルナンド市(人口2万人強)の市警察に誘われ、無給の嘱託刑事として勤務するようになっていた。
同僚の女性刑事と連続婦女暴行事件の捜査を進めていたが、一方でボッシュは私立探偵の免許も持っていて個人的な仕事を受けていた。そのツテを頼って大企業のオーナーである85歳の大富豪から人探しを頼まれる。学生のころ知り合い妊娠させながらも、親に仲を引き裂かれたメキシコ人の恋人がいて、その子どもが生きていれば探してほしい、自分が亡くなれば莫大な財産をその子どもに譲りたいらしいのだが・・・。
連続婦女暴行事件と大富豪から頼まれた人探しが交差しながら話が進んでいく。
たとえば、人探しをする中でボッシュは屋根裏に50年近く放置されていたネガフィルムを見つける。傷んだネガからなんとか写真をプリントできないかと知り合いの専門家に相談するが、そのネガは富士フィルム製で、FUJIのフィルムには製造年と3カ月ごとの製造期間が記されていることがわかる。ここから、撮影されたのはだいたいいつごろかというのがわかり、調査にはずみがつく。
ひとつの手がかりから次の手がかりへと、細い糸がつながって次第に真相へと迫っていく。
最後はコナリーお得意の意外などんでん返し。
そして、読後の爽快な余韻。