善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

BOOK

ヨルン・リーエル・ホルスト 猟犬

ヨルン・リーエル・ホルスト『猟犬』(訳・猪俣和夫 ハヤカワ・ポケット・ミステリー)を読む。 ノルウェー発のミステリー。 舞台はオスロの南西100キロ余りに位置するラルヴィクという人口2万3千人ほどの町。そこの警察署に勤務するベテラン刑事ヴィリアム…

仁左衛門恋し

小松成美『仁左衛門恋し』(徳間文庫)を読む。 歌舞伎役者、15代目片岡仁左衛門をアップで撮った表紙の写真がいい。つい見とれてしまう。 撮影は篠山紀信。歌舞伎座六月公演(2014年6月)「お祭り」より。右肩腱(けん)板断裂の手術から7カ月ぶりに復活し…

寄生虫なき病

日曜日(22日)夜はNHKスペシャル「腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー」をみる。 腸内フローラは脳にまで影響しているとか、IgA抗体はアレルゲンを攻撃するためではなく、人間に必要な細菌だけを選んで腸に住み着かせるために働いているとか、目からうろ…

ありふれた祈り

ウィリアム・ケント・クルーガー『ありふれた祈り』(宇佐川晶子訳、ハヤカワポケミス) アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞受賞作(ほかにもいろいろ受賞)で、ハヤカワポケミス刊というから犯人探しのミステリーかと思いきや、優れた青春…

昆虫はすごい

丸山宗利『昆虫はすごい』(光文社新書)を読む。 読後感はただ一言、昆虫はすごい! 筆者は九大総合研究博物館の助教。アリやシロアリと共生する昆虫の多様性解明が専門という。 昆虫の頭のよさを証明するエピソードがてんこ盛り。 たとえば──。 獲物を食べ…

井上ひさし 短編中編小説集成

井上ひさし『短編中編小説集成』(岩波書店)の第1、第2巻を読む。 戯曲から小説、エッセイと多彩な作家活動をしてきた井上ひさしの作品群の中から、短編・中編小説を年代順に収める初の全集。去年の秋から刊行されている。その第1巻と第2巻。 第1巻は「ブン…

「21世紀の資本」を読む

トマ・ピケティ『21世紀の資本』(山形浩生、守岡桜、森本正史訳 みすず書房)を読む。 といっても経済学などまるで門外漢なので意味がわからないところも多く、そのまま読み進んだので果してどこまで理解できたのかの不安はあるが、筆者のいいたいことはだ…

菊之助の礼儀

長谷部浩『菊之助の礼儀』(新潮社)を読む。 筆者は東京芸大教授で演劇評論家。もともと現代演劇を専門に批評してきたが、90年代になって歌舞伎に目を向けるようになって、阪東三津五郎の聞書きなどを出版。十数年前に尾上菊五郎の息子、菊之助と知り合い、…

『かたづの!』が問うもの

中島京子『かたづの!』(集英社)を読む。 直木賞を受賞し、映画にもなった『小さいおうち』の作者の最新作というので手にとる。 新聞の広告によれば、江戸時代に実在した東北・南部藩の女大名の物語というから歴史小説か? それにしても『かたづの!』って…

ゴースト・スナイパー

ジェフリー・ディーヴァー『ゴースト・スナイパー』(池田真紀子訳、文藝春秋)。 捜査中の事故での脊髄損傷による四肢マヒで車椅子生活を送りながら、なおかつ天才科学捜査官(今は立場上は民間人)リンカーン・ライム・シリーズの10作目。 第1作の『ボーン…

マイクル・コナリー 判決破棄

マイクル・コナリー『判決破棄』(上下刊・講談社文庫、古沢嘉道訳)を読む。 原題は『The Reversal』(2010年)。本格的なリーガル・サスペンスを堪能。 その一方で、本書はリンカーン弁護士ミッキー・ハラーシリーズの3冊目だが、前作に続きハリー・ボッシ…

最後の1分

エレナー・アップデール『最後の1分』(東京創元社 杉田七重訳) イギリスの作家の作品。 ここで起こった事件自体は悲劇的で悲惨な出来事であるのに、あえてなのか、軽く描いていてサラッと読める。事実、休日の1日で読み終えた。 この小説のミソは、大惨事…

天人 深代惇郎と新聞の時代

後藤正治『天人 深代惇郎と新聞の時代』(講談社)を読む。 朝日新聞の「天声人語」の執筆者であった希代の名コラムニスト、深代惇郎を描いたノンフィクション。 「天人」とは「天声人語」の略という。なんだかエラそうに聞こえるが、「天声人語」とは「天に…

水底の棘 法医昆虫学捜査官

川瀬七緒『水底の棘 法医昆虫学捜査官』(講談社)を読む。 法医昆虫学捜査官シリーズの3作目。最初の『147ヘルツの警鐘』がおもしろかったのでこの本も手にとる。 最初の作品はたしかハチが出てきて、今回は水底に棲む生物。どんな物語か、出版社の口上によ…

居酒屋の誕生

飯野亮一『居酒屋の誕生 江戸の呑みだおれ文化』(ちくま学芸文庫)を読む。 江戸時代、江戸の町には多数の居酒屋があって、今から200年ほど前の文化8年(1811)に行われた調査によると1808軒の居酒屋(煮売居酒屋)があったという。 当時の江戸の人口は約10…

ヘニング・マンケル 北京から来た男

ヘニング・マンケル『北京から来た男』(上下巻、柳沢由実子訳、東京創元社) クルト・ヴァランダー警部シリーズを何冊か呼んで以来ファンになっている作家の作品。 東京創元社のHPからあらすじを抜粋すると──。 凍てつくような寒さの未明、スウェーデンの小…

「寺子屋」に現代人はなぜ泣くか

犬丸治『「菅原伝授手習鑑」精読 歌舞伎と天皇』(岩波現代文庫)を読む。 本書は2012年出版の本だが、近々歌舞伎座で「菅原伝授手習鑑」の「寺子屋」を観るため、事前学習?のため手にとったもの。 「菅原伝授手習鑑」は時代物人形浄瑠璃で全5段。竹田出雲…

逢坂の六人

周防柳『逢坂の六人』(集英社)を読む。 史上初のやまと歌の勅撰集『古今和歌集』成立をめぐる物語。 紀友則、壬生忠岑、凡河内躬恒とともに初の勅撰和歌集の撰者となった紀貫之は、やまと歌の歌集なのだからと、序文を仮名文字で執筆する。 この「仮名序」…

推定脅威

末須本有生『推定脅威』(文藝春秋) 第21回松本清張賞を受賞した作品。 自衛隊機をめぐる航空ミステリー。それなりにおもしろく読めた。 あらすじは──。 自衛隊戦闘機「TF-1」が、スクランブル飛行中に墜落した。 事故を受けて防衛省は機体を製造する浜松の…

声の世界を旅する

増野亜子『声の世界を旅する』(音楽之友社)を読む。 世界各地の人々の暮らしと声との関係、いわば“声の文化”を考察した本。 読んでて特に感銘を受けたのはモンゴルの遊牧民と動物の声について。 『らくだの涙』というドキュメンタリーに出てくるエピソード…

知の巨人 荻生徂徠伝(再掲)

ダブりますけどもう1回。 佐藤雅美『知の巨人 荻生徂徠伝』(角川書店)を読む。 別に荻生徂徠に興味を持ったからではなく、佐藤雅美の時代小説ファンとして手にとったにすぎないが、なかなかおもしろかった。 さすが小説家だけあって読みやすく書いていた。…

知の巨人 荻生徂徠伝

佐藤雅美『知の巨人 荻生徂徠伝』(角川書店)を読む。 別に荻生徂徠に興味を持ったからではなく、佐藤雅美の時代小説ファンとして手にとったにすぎないが、なかなかおもしろかった。 さすが小説家だけあって読みやすく書いていた。ただし、フィクションを加…

特捜部Q 知りすぎたマルコ

ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q 知りすぎたマルコ』 (吉田薫訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ)を読む。 デンマークの作家、オールスンの『特捜部Q』シリーズ第5弾。 第1作から読み続けているが、ますます快調。 社会派ミステリー作家らしく、今回の…

王朝小遊記

諸田玲子『王朝小遊記』(文藝春秋)を読む。 内容は──。 ときは万寿二年(1025年)、平安時代の爛熟期。物売女、没落貴族、主をうしなった女房、貴族の不良少年、太宰府がえりの元勇将は、腐った世をはかなんでいる。ひょんな縁で時の実力者・藤原実資の邸…

最後の紙面

トム・ラックマン『最後の紙面』(日経文芸文庫)。訳は東江一紀。 原題は『The Imperfectionists』。「不完全な人たち」という意味か。本書を読んでみると原題の方がピッタリな気がする。 ローマにある新聞社(といっても架空の)を舞台に、第一線の記者か…

定本 黒部の山賊 アルプスの怪

ワールドカップは1次リーグが終わって一休み。日本は残念な結果だったが、決勝トーナメントは楽しみな対戦が続き、目が離せない。 伊藤正一『定本 黒部の山賊 アルプスの怪』(山と渓谷社)を読む。 『村上海賊の娘』を読んだあとだったからか、『黒部の山賊…

ネルーダ事件

きのうは根岸にあるヤキトリ屋「鳥茂」を久々に訪問。 4人掛けのテーブル2つ、2人用のテーブル1つ、それに12、3人ぐらいは座れそうなカウンターの小さな店だが、きのうは開店時間の6時ジャストに行ったら、先客が2人。おもむろに席に着いたら、直後に次々と…

ケルトを巡る旅

河合隼雄『ケルトを巡る旅-神話と伝説の地』(講談社プラスアルファ文庫) を読む。 キリスト教以前のヨーロッパに現存した民族がケルト人で、宗教、文学、美術など多岐にわたる文化を持っていた。キリスト教は一神教であるがゆえに排他的な側面を持ってい…

『枕草子』の歴史学

五味文彦『「枕草子」の歴史学 春は曙の謎を解く』(朝日新聞出版)を読む。 題名にひかれて手にとったが、「春は曙・・・」の書き出しとか、清少納言という女性の存在ぐらいは知っていても、『枕草子』なんか読んだことがなかった当方にとって、「へー」と…

へるん先生の汽車旅行

芦原伸『へるん先生の汽車旅行』(集英社インターナショナル)を読む。 日本を世界に紹介した作家で日本研究者でもあるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の生涯を、ハーンが鉄道でたどった旅を筆者自身が現在の鉄道でもう一度たどる形で描くノンフィクション…