善福寺公園めぐり

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マイクル・コナリー 判決破棄

マイクル・コナリー『判決破棄』(上下刊・講談社文庫、古沢嘉道訳)を読む。
原題は『The Reversal』(2010年)。本格的なリーガル・サスペンスを堪能。
その一方で、本書はリンカーン弁護士ミッキー・ハラーシリーズの3冊目だが、前作に続きハリー・ボッシュ刑事との競演なので、刑事物としても楽しめる。
ハラーはこれまで、“負け犬の代弁者”として刑事裁判の弁護士として活躍してきたが、一転して権力の側に立って検事役をするのが本書。

12歳の少女を誘拐し、殺害した罪で有罪となり、24年近く服役してきた男は、獄中から何度も自らの無罪と再審を要求してきたが、その執念が実ったのか、被害者の着衣に付着していた精液のDNA検査で男にとって有利な証拠が出てきて、判決が破棄され、差し戻されることになった。
そこで検察当局は、外部から招く特別検察官に再審を任せようということになり、ハラーに白羽の矢が立てられ、ボッシュ刑事の応援を得て4半世紀前の殺人事件の真相に迫る。

法廷内の話はハラーが主役のリーガル・サスペンスで、法廷の外ではボッシュが主役の刑事物としてハラハラドキドキさせられる。
途中の伏線にも気を持たせられ、最後は意外な結末が待っている。

それにしてもアメリカの陪審裁判ってメチャ厳しい。
陪審員に選ばれると、先入観を持っちゃいけないというので新聞も読んじゃいけないしテレビのニュースも見ちゃいけない。家族と事件について話をすることも許されない。陪審員に選ばれた1人が電車に乗っていてたまたま本件の事件のニュースの見出しをチラリと見た、というだけで陪審員からはずされるエピソードが描かれていたが、日本の陪審員裁判もそれぐらい厳しいのだろうか?

それに、アメリカの陪審員裁判の評決は全員一致が必要という(州によっても違うかもしれないが、少なくともカリフォルニア州ではそのようだ)。
1人でも「無罪」に投票する人がいれば、圧倒的多数は「有罪」でも「評決不一致」となり、それまでの審理は無効となるという。(このあたりは映画『十二人の怒れる男』でも詳しいが)
たしか日本では多数決で決まると思うが、アメリカにはアメリカの伝統にのっとったやり方があるのだろう。