善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ヨルン・リーエル・ホルスト 猟犬

ヨルン・リーエル・ホルスト『猟犬』(訳・猪俣和夫 ハヤカワ・ポケット・ミステリー)を読む。
ノルウェー発のミステリー。

舞台はオスロの南西100キロ余りに位置するラルヴィクという人口2万3千人ほどの町。そこの警察署に勤務するベテラン刑事ヴィリアム・ヴィスティングが主人公。

17年前の誘拐殺人事件で容疑者有罪の決め手となった証拠が偽造されていたことが判明。捜査を指揮した警部のヴィスティングは責任を問われて停職処分を受け、法を犯したとして告発まで受ける。
自分の知らないところで何が行なわれたのか? そして、真犯人は誰なのか? 
世間から白眼視されるなか、新聞記者である娘リーネに助けられながら、ヴィスティングはひとり真相を追う。しかしそのときすでに、新たな事件が起きていた……。

わずか4日の出来事を実にドラマチックに描いている。なかなか読みごたのある展開。
訳者もあとがきで書いているが、殺人事件を追う娘リーネの「動」と、捜査資料を丹念に読み込み沈思黙考する父ヴィスティングの「静」とが絶妙に絡み合って物語を面白くさせている。

題名にある『猟犬』とは、犯人を指すとともに、犯人を追う警察をも指していってるのだろう。

それにしても、スティーグ・ラーソンの『ミネリアム』シリーズに出てくるリスベットといい、今回のリーネといい、北欧の小説に出てくる女性は賢くて勇敢だ。
男と女は対等というまっとうな考え方がしっかりと根付いているからだろう。「女性活用」などと上から目線、男目線のアヤシゲな言葉でお茶を濁そうとする日本とはかなり違う感じ。

ただ、最後のところで警察官をやけに持ち上げてるのはどうかなとも思ったが、著者が警察官出身と聞いて、ま、しょうがないか、とも思った。

著者のヨルン・リーエル・ホルストは1970年ノルウェー生まれ。警察官として勤務しながら2004年に作家デビュー。本書で「ガラスの鍵」賞という北欧の最も優れたミステリーに送られる賞を受賞した。