善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

水底の棘 法医昆虫学捜査官

川瀬七緒『水底の棘 法医昆虫学捜査官』(講談社)を読む。
法医昆虫学捜査官シリーズの3作目。最初の『147ヘルツの警鐘』がおもしろかったのでこの本も手にとる。
最初の作品はたしかハチが出てきて、今回は水底に棲む生物。どんな物語か、出版社の口上によると──。

第一発見者は、法医昆虫学者の赤堀涼子本人。東京湾・荒川河口の中州で彼女が見つけた遺体は、虫や動物による損傷が激しく、身元特定は困難を極めた。絞殺後に川に捨てられたものと、解剖医と鑑識は推定。が、赤堀はまったく別の見解を打ち出した。捜査本部の岩楯警部補と鰐川は、被害者の所持品の割柄ドライバーや上腕に彫られた変った刺青から、捜査を開始。まず江戸川区の整備工場を徹底して当たることになる。他方赤堀は自分の見解を裏付けるべく、ウジの成長から解析を始め、また科研から手に入れた微物「虫の前脚や棘」によって推理を重ねていった。岩楯たちの捜査と赤堀の推理、二つの交わるところに被害者の残像が見え隠れする!

人物描写がいささか雑というか類型的だが、被害者の身元を割り出す昆虫学者のナゾ解きがおもしろい。
ほとんど物語は犯人探しというより被害者がどんな殺され方をしたか、そもそも被害者はだれなのかを割り出す作業で明け暮れて、そこがまた興味をそそる。
読んでいくと、ホオグロオビキンバエとか、コケシガムシ、イソテングダニ、ウミケムシなどなどの気持ち悪そうな生きものか次々と登場してきて、意外な発見がある。

本書では東京湾のシャコが出でくるが、昔はシャコといえばアナゴなどと並んで江戸前の1つだったが、今はとんと見かけない。
昔食べたシャコのプリプリの味が忘れられないが、あれは生だったか、茹でたやつだったか。その記憶すらも薄れてしまった。
数年前「江戸前のシャコ漁が復活」という新聞記事があったから、多少は増えているのだろうか?

なぜかシャコが食べたくなった本書であった。