善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「七人の刑事 終着駅の女」

チリの赤ワイン「サンタ・ディグナ・メルロ・グラン・レゼルヴァ(SANTA DIGNA MERLOT GRAN RESERVA)2021」

(写真手前右は初メニューの「バターナッツカボチャソースとホタテのバターソテーのせイカスミスパゲッティ」。ワインにぴったりでおいしかった)

スペインワインを牽引するトーレスが欧州の伝統と技術を用いてチリで手がけるワイン。

チリのブドウ栽培発祥の地でもあるセントラル・ヴァレーの温暖な沿岸部から冷涼なアンデス山脈近くまでの、いくつかの異なる気候の畑で造られるメルロをブレンド

メルロらしいやわらかい口当たりで飲みやすいワイン。

 

ついでにその前に飲んだワイン。

同じくチリの赤ワイン「エミスフェリオ・カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルヴァ(HEMISFERIO CABERNET SAUVIGNON RESERVA)2019」

メインの料理は牛ステーキ。

やはりスペインのトーレスがチリで手がけるワインで、カベルネ・ソーヴィニヨン100%。

「エミスフェリオ」とは「半球」を意味し、南半球に位置するチリのワインであることを表しているのだとか。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していた日本映画「七人の刑事 終着駅の女」。

1965年の作品。

監督・若杉光夫、出演・堀雄二、芦田伸介菅原謙二佐藤英夫城所英夫美川陽一郎天田俊明、笹森礼子北林谷栄梅野泰靖、平田大三郎、大滝秀治、草薙幸二郎、大森義夫三崎千恵子稲垣隆史、日色ともえほか。

 

1960年代にヒットしたテレビの連続ドラマ「七人の刑事」の映画版。終着駅・上野駅で起こった殺人事件を捜査する7人の刑事の活躍を通して、被害者の背後に潜む農村の貧困にメスを入れたドキュメンタリータッチの異色作。モノクロ。

 

上野駅の東北方面行きのホームで、30歳前後とみられる女性の刺殺死体が発見された。一見して安物とわかる女性の黒いバッグには、北上行の切符が1枚入っていた。

上野駅構内に捜査本部が設けられ、死体の身元を突き止め、犯人逮捕の捜査が始まる。刑事たちは発見者の証言をもとに女性が持っていたはずの白いカバンの行方を追う。

浮かんできたのは、東北からの出稼ぎ者らを食い物にするヤクザの組織だった・・・。

 

現在の上野駅はただの通過駅にすぎないが、かつての上野駅はまさしく「北への玄関口」であり、終着駅だった。

改札口上の大壁画の下を通ったところにある1階の地平ホームは、欧米のターミナル駅に似た行き止まりのホームとなっていた。東北方面からやってくる「集団就職列車」発着の専用ホームもあって、のぼりを掲げた出迎えの人たちの姿があったという。

石川啄木の歌に「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」というのがあるが、あれはまさしく上野駅の東北方面ホームの情景を歌ったに違いない。

本作は、そんな行き交う人々で混雑する上野駅とその周辺が舞台。映し出されるのはホームだけでなく、構内の売店とか駅とつながる地下道、駅周辺の店などで、しかもその姿を実写でとらえているから、映画の主人公は「終着駅=上野駅」そのものといっていいほど。「昭和」を記録した歴史的資料としても価値ある作品だった。

飲食店内の張り紙が映っていて、たしかラーメンが1杯60円か70円ぐらいだったのにビールは1本150円ぐらいしていて、ビールは高級品だったのか。

 

テレビで流れていたテーマ曲はなく、BGMもなく、効果音は現実の音で、街の雑音や、駅で交わされたであろう暮らしの困難さを語る東北訛りの人々の声のみ。 “音”を担当したのは「マジンガーZ」などアニメ・の特撮作品の音楽で知られ、今年6月に亡くなった作曲家の渡辺宙明氏だが、クレジットは「音楽」ではなく「音響」となっていた。

 

芸映画社製作で配給は日活。それだけに芦田伸介はじめ当時の民芸の役者が多数出演。

森礼子赤木圭一郎などの相手役をつとめた日活のスター女優だったが、本作が公開された年に結婚・引退している。

スター俳優があんな地味な、汚れ役といってもいい役を演じたのは、もう自分は映画界を去るのだから、浮ついた役より、やりたい役を演じたい、と思ったのだろうか。