善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

推定脅威

末須本有生『推定脅威』(文藝春秋

第21回松本清張賞を受賞した作品。
自衛隊機をめぐる航空ミステリー。それなりにおもしろく読めた。

あらすじは──。
自衛隊戦闘機「TF-1」が、スクランブル飛行中に墜落した。
事故を受けて防衛省は機体を製造する浜松の航空機メーカー、四星工業にその検証を依頼する。
四星工業では入社3年目の技術者、沢本由佳が上司の永田とともに業務にあたっていた。
シュミレーションの結果、事故はパイロットの単純な誤操作によるものだと判断されたが、永田は沢本が言った何気ない一言が気になり、すでに会社を辞めてデザイナーをしている同期の倉崎に話を持ちかける。
スクランブル発進した自衛隊機は、なぜ不可解な事故を起こしたのか?
そして再びスクランブル発進すると──。

筆者は東大工学部航空学科卒業で、大手メーカーで航空機の設計に携わり、その後フリーのデザイナーになった人。
だからなのだろう、メカに詳しく、専門用語がポンポン飛び出すが、それがかえって真に迫っていて物語に引き込まれる。

ただ、話の展開がだんだんあり得ない方向に進んでいってガッカリ。航空機メーカーの入社3年目の新米技術者が、小松基地の団指令(ということは飛行隊の最高司令官)と一緒になってスクランブル(つまりは日本の防空にとっての緊急事態)をめぐる陰謀の解決にあたるなんて、まるで少年マンガ並みのストーリーだが、それなりに読めたのは筆者の航空知識に負うところが大きかっただろう。

読みやすいので一気に読んでしまった。