善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

特捜部Q 知りすぎたマルコ

ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q 知りすぎたマルコ』 (吉田薫訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ)を読む。

デンマークの作家、オールスンの『特捜部Q』シリーズ第5弾。
第1作から読み続けているが、ますます快調。
社会派ミステリー作家らしく、今回のテーマは政府開発援助(ODA)。
ただ今回はいつになくハードボイルド?で、最後の方はアクション満開。おかげでちょっとテーマがぼけてしまった感じもするが。

内容はというと──。
「特捜部Q」は未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の一部署。「Q」が今回挑むのは、外務官僚の失踪事件。真面目で心優しいこの官僚は、出張先のアフリカからなぜか予定を早めて帰国後、ぷっつりと消息を絶った。背後には大掛かりな公金横領が絡むようなのだが・・・。
事件のカギを握るのは、叔父が率いる犯罪組織から逃げ出したばかりの15歳の少年マルコ。この賢い少年と「Q」の責任者カール・マーク警部補がすれ違い続ける間に、組織の残忍な手がマルコに迫る・・・!

主人公のカール・マーク警部補が事件の捜査そっちのけで二股愛に悩むところが、いかにも俗っぽくて人間的で親しみがもてる。
そのおかげで今回はカールの推理はまるでさえず、助手のアサドやローセに助けられること度々。完璧じゃないところがこの本の魅力かもしれない。
そのへんはR・D・ウィングフィールドの『フロスト警部』とも共通する。

読み終わった直後から次の刊行が待ち遠しくなる数少ないシリーズの1つであるのはたしかだ。