善福寺公園めぐり

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「特捜部Q」と「フロスト警部」

デンマークのミステリ作家、ユッシ・エーズラ・オールスンの『特捜部Q』シリーズの第1作と第3作を読んで、第2作を読んでないことに気がつき、あわてて読了。

ちょっと猟奇的で、おぞましい記述に辟易しつつも、読後感は「おもしろかった」

『特捜部Q キジ殺し』(吉田薫・福原美穂子訳、ハヤカワポケットミステリ、2011年刊)
「特捜部Q」というのは未解決の重大事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署。
見事に初の事件を解決したカール・マーク警部補と助手のシリア人・アサドの珍コンビ。
次に2人が挑むのは、20年前に無残に殺害された10代兄妹の事件。犯人はすでに収監されているが、彼1人の犯行のはずがない。事件の背後には政治経済を牛耳るあるエリートたちの影がちらつく。警察上層部や官僚の圧力にさらされながらも、カールは捜査の手を休めない――。

登場人物の名前がややこしくて最初はなかなか進まないが、巻頭の「主な登場人物」をひっくり返しては読み進む。
何しろデンマーク人の名前ってわかりにくい。
主人公のカール・マークはいいとして、複数いる犯人の名前(今回は作品の冒頭から犯人がわかる展開。おかげでかえって興味津々で読める)が、ディトリウ・プラム、トーステン・フローリン、ウルレク・デュブル・イェンスン、クレスチャン・ヴォルフ、ビャーネ・トゥーヤスン・・・といった具合。
地名もいろいろ出てくるがさっぱりわからない。手元に地図でもあれば、もっとおもしろく読めただろうと思うと少し残念。

それでも、主人公のカール・マークは、カッコイイところは少しもないが、愛すべき警官という感じ。唯一カッコイイのが、腐った権力(自分だって権力の端くれなんだが)におもねないこと。

3作を読んで連想したのが『フロスト警部』だった。
警官小説の傑作といえば『フロスト警部』。下品でジョーク好きで、さえない風貌、行き当たりばったりの行動。ところが常識破りの鋭いカンと、悪を許さない正義感で、難事件を次々解決するのがロンドン郊外の田舎町の警察署に勤務するジャック・フロスト警部

しかし、作者のR・D・ウィングフィードが07年に亡くなってしまい、わずか6作で途切れてしまった(もともと放送作家で、『フロスト警部』第1作は著者56歳のときであり、遅咲きの人だった。亡くなったとき79歳だった)。

それでも日本で翻訳されたのは4作で、未翻訳の作品が2作残っているはずだが、いまだに翻訳されていない。(いったいいつになることやらと待ち焦がれている。ちなみに未翻訳の第5作『Winter Frost』(ウィンター・フロスト)はチョー長い作品らしい。それで翻訳に時間がかかっているのか)

ひょっとして、特捜部Qのカール・マークはフロスト警部に少しでも近づくかもしれない、と期待しているのだが。