イタリアの赤ワイン「プリミティーヴォ・ディ・マンドゥリア(PRIMITIVO DI MANDURIA)2021」
1821年の創業でイタリア最大規模のワイナリー、ゾーニンの赤ワイン。
ゾーニンはもともとヴェネツィアとヴェローナの間にあるヴェネト州ガンベッラーでワインづくりを始めた小規模な農家だったが、今では北はピエモンテ州から南はシチリア州までの7州10カ所、さらにはアメリカやチリでもブドウ畑とワイナリーを所有してワインづくりを行っているのだとか。
ほどよい果実味とタンニンとでバランスのとれた味わい。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していた日本映画「雲の上団五郎一座」。
1962年の作品。
監督・青柳信雄、出演・フランキー堺、三木のり平、八波むと志、水谷良重、榎本健一、花菱アチャコ、森川信、由利徹、佐山俊二、南利明、藤田まこと、茶川一郎、藤木悠、高島忠夫、清川虹子、北川町子、筑波久子ほか。
爆笑喜劇の金字塔として名高い1960年12月に上演された東宝宝塚劇場の年末公演「雲の上団五郎一座」を映画化。
町から村へとドサ回りを続ける雲の上団五郎一座。座長(榎本健一)をはじめ、団員は女形で活躍するのり蔵(三木のり平)、太蔵(八波むと志)ら小所帯のため1人で何役もこなさなければならず、いつもてんやわんや。
大劇場での公演を夢見る一座は、芋ばかりかじりながらも各地をめぐり、まわりまわって四国にたどり着く。途中、一同は怪しげな演劇論をとうとうとぶつ酒井英吉(フランキー堺)という若い演出家と知り合うが、酒井は四国の興行主の娘、はるみ(水谷良重)とは旧知の仲で、そのツテで興行主の万(よろず)善五郎(花菱アチャコ)に一座を売り込むと・・・。
旅先でのヤクザとのトラブルが原因で、のり蔵、太蔵の2人が行方不明となっていて、代役となったフランキー堺が「勧進帳」の弁慶を演じるが、フランキー堺ふうにアレンジした歌舞伎の演技が圧巻。
そしてもうひとつ期待したのが、劇中劇の「玄治店(げんやだな)」。
60年12月の舞台劇「雲の上の団五郎一座」で伝説となったのが、この「玄治店」だった。
「ご新造さんへ、おかみさんへ、お富さんへ、いやさお富久しぶりだなあ」の名ゼリフで知られる歌舞伎の「与話情浮名横櫛」の名場面を、切られ与三の三木のり平と蝙蝠安の八波むと志のコンビで演じたのだが、大爆笑の渦となって、この芝居はテレビでも中継されたので全国的にも話題を呼んだ。
たった2人だけの演技で、お客はひっくり返って笑い、笑いすぎておなかが痛いと苦しむほどになるなんて、のちのコント55号も、あの2人にはかなわない。のちのちのテレビや映画、芝居で活躍する喜劇役者たちが手本とするほどになった。
映画でも、当然、このシーンが出てきた。
舞台と同じ、切られ与三の三木のり平と蝙蝠安の八波むと志のコンビでの演技で、大いに期待してこの場面を見たのだが、残念ながら腹を抱えて笑うほどではなかった。
なぜだろう?とも思ったが、やはり舞台と映画とはまったく別物なのかもしれない。
お客を笑わせる喜劇、特にのり平と八波むと志のあうんの呼吸による絶妙の間合いの演技は、ナマで見ないと面白さは伝わってこないのだろうし、役者の方も、お客のまなざしと息づかいを肌で感じながらの真剣勝負じゃないと伝えきれない何かがあるのだろう。
1960年の公演のとき、八波むと志は34歳。南利明、由利徹と脱線トリオを結成してテレビ・ラジオで人気だったが、三木のり平に認められて伝説の「玄治店」を2人で演じる。ところが本作から2年後の1964年の正月、絶頂期のときに、自動車運転中に事故を起こして若くして亡くなってしまった。
ついでにその前に観た映画。
民放のCSで放送していた西ドイツ・フランス合作の映画「ノスフェラトゥ」。
1978年の作品。原題「NOSFERATU: PHANTOM DER NACHT」
監督・脚本・製作ヴェルナー・ヘルツォーク、出演クラウス・キンスキー、イザベル・アジャーニ、ブルーノ・ガンツ、ローラン・トポール、ヴァルター・ラーデンガストほか。
ブラム・ストーカーの怪奇小説「吸血鬼ドライュラ」を映画化したF・W・ムルナウ監督のサイレント映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922年)のリメイク。「ノスフェラトゥ」とは語源不詳だが「疫病や禍をもたらす吸血鬼」の意味だとか。
19世紀、北ドイツのバルト海に面した小都市ヴィスマール。ドラキュラ伯爵(クラウス・キンスキー)から住居購入の依頼を受けた不動産業者ジョナサン(ブルーノ・ガンツ)は、心配する妻ルーシー(イザベル・アジャーニ)を残し、ドラキュラが住むペンシルバニアへと向かう。
古城に到着して無事に契約を交わすが、ドラキュラに噛まれ血を吸われてしまう。ジョナサンのペンダントの中にあるルーシーの写真に心惹かれたドラキュラは、棺に入って帆船に積み込ませ、彼女に会うため海を渡ってヴィスマールへ向かう・・・。
「アギーレ/神の怒り」に続くヘルツォークとキンスキーがコンビを組んだ5作品のうちの2作目。
禿げ頭で白塗りのドラキュラ伯爵が何とも不気味で妖しげ。
特殊メイクを担当したのは長崎県出身の日本人女性で、フランス人と結婚してパリに移住し特殊メイクの分野を開拓したレイコ・クルク。日本の歌舞伎や能の影響もあるかもしれないとも思ったが、1922年版の「吸血鬼ノスフェラトゥ」に登場するドラキュラのメイクにそっくりだから、ムルナウ作品へのオマージュでもあるようだ。
ドラキュラは十字架を恐れ、朝日を浴びると死ぬと知って、ドラキュラに愛撫されながら朝を待つ、ルーシーとドラキュラとの恐ろしげで官能的シーン。
映画が始まるとおびただしい数のミイラが延々と映し出されるが、作り物かと思ったら、メキシコのグナファトにあるミイラ博物館に保管されてある本物のミイラを撮影したものだとか。
舞台となったヴィスマールでの撮影ができなかったので、ロケ地に選ばれたのがオランダ。なるほど海に近いが、街並みとか、風車がまわっていたのはいかにもオランダっぽい。
ドラキュラが連れていったネズミのためペストが街中に蔓延し、亡くなった人々を運ぶためのおびただしい数の棺桶の葬列は、オランダの有名な観光地、デルフトのマルクト広場で撮影されたという。
ポポル・ヴーというドイツの音楽グループによる音楽も不気味で怪奇っぽいサウンドだった。
民放のCSで放送していたアメリカ映画「ニューヨーク、アイラブユー」。
2009年の作品。
原題「NEW YORK,I LOVE YOU」
世界各国の11人の監督がそれぞれにつくった短いラブストーリーをつなぎ合わせたアンサンブル・ムービーなので、監督はチアン・ウェン、ミーラー・ナーイル、岩井俊二、イヴァン・アタル、ブレット・ラトナー、アレン・ヒューズ、シェカール・カプール、ナタリー・ポートマン、ファティ・アキン、ジョシュア・アーストン、ランディ・バルスマイヤー。
出演もオーランド・ブルーム、ナタリー・ポートマン、クリスティーナ・リッチ、シャイア・ラブーフ、アンディ・ガルシア、イーサン・ホーク、マギー・Qらハリウッドの豪華キャスト。
パリを舞台にした「パリ、ジュテーム」(2006年)に続く第2弾で、ニューヨークを舞台に「愛」をテーマに製作された作品。
10人の監督がそれぞれにつくった10話のラブストーリーだが、1つ1つ独立した作品を集めた単なるオムニバス映画にするのでなく、ランディ・バルスマイヤーが11人目の監督となってつなぎのカットをつくり、それぞれの作品をシンクロさせて群像劇ふうに仕上げていて、過去に例のない新しい手法の作品という。
舞台もニューヨークのソーホーやハーレム、セントラルパーク、グリニッジビレッジ、あるいは走るタクシーの中など、ニューヨークの各名所で撮影が行われた。
大都会ニューヨークで“孤独”に生きる人々。しかし、人は人を求め、愛を求めていているのがわかり、観終わってやさしい気持ちになれる。