善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

#小説

『東京プリズン』と三島由紀夫、宮崎駿

赤坂真理『東京プリズン』(河出書房新社)を読む。 16歳の少女マリが、留学先のアメリカの高校での「東京裁判」を模したディベートで「天皇の戦争責任」について論ずる、という重いテーマの小説。 幻想的というか、複雑な話の展開で、1980年のマリが2010年…

デイヴィッド・ゴードン ミステリガール

デイヴィッド・ゴードンの『ミステリガール』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)を読む。 『二流小説家』でベストミステリ3冠(「このミステリーがすごい! 1位」「週刊文春ミステリーベスト10 1位」「ミステリが読みたい! 1位」)に輝いたデイヴィッド・ゴ…

R・D・ウィングフィールド 冬のフロスト

待望久しかったフロスト警部の第5弾がようやく出た。 R・D・ウィングフィールド『冬のフロスト』(上・下、創元推理文庫)。前作の『フロスト気質』から実に5年ぶり。 今回はどんな話かというと、出版社サイトによれば──。 寒風が肌を刺す1月、デントン署管…

ジェフリー ・ディーヴァー バーニング・ワイヤー

ジェフリー ・ディーヴァーの『バーニング・ワイヤー』(池田 真紀子訳)をようやく手にする。 地球の日(アースディ)を間近に控えた4月のある日、マンハッタン内の変電所の1つで巨大な“アークフラッシュ”(電気による爆発)が発生し、市バスの乗客を含めた…

平谷美樹 採薬使佐平次

平谷美樹(ひらや・よしき)『採薬使佐平次』(角川書店) 大川で上がった惨殺体が握りしめていたのが見慣れぬガラス棒。実はそれは昇降図という温度計の一部とわかったが、将軍吉宗配下の採薬使、植村佐平次は知り合いの町方同心とともにそのナゾを追う。同…

特捜部Q─カルテ番号64

ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q─カルテ番号64』(吉田薫訳・ハヤカワ・ポケットミステリ) 「特捜部Q」シリーズの4冊目。過去の未解決事件を専門に扱うデンマーク・コペンハーゲン警察の新部署、特捜部Qが今回挑むのは、80年代に起こったナイトクラ…

ヘッセ シッダルタ

ヘルマン・へッセ『シッダルタ』(手塚富雄訳、岩波文庫)を読む。 ヘッセを読むのは大昔の若いころに『車輪の下』を読んで以来。 『シッダルタ』は1919年に第1部が発表され、1922年(作者45歳のとき)に完成、出版された。日本語訳も1953年に角川文庫版で出…

井上ひさし 東慶寺花だより

井上ひさし『東慶寺花だより』(文藝春秋)を読む。 井上ひさしが亡くなったのが2010年4月9日。その年の11月30日発行の小説。最近、文庫にもなった。 『オール讀物』に1998年から10年5月号まで、10年以上にわたり掲載された連作短編集で、15の話がちりばめら…

高野和明 ジェノサイド

土曜日朝の善福寺公園は曇り。 下池に去年見つけたツツジ科のカルミアの花が咲いていた。 去年見たときは「お菓子みたい」と思ったかだ、ツボミはまるでコンペイトウだ。おいしそう。 ようやく手にできた高野和明の『ジェノサイド』(角川書店)を読む。 お…

三浦しをん 舟を編む

遅ればせながら、三浦しをん『舟を編む』を読了。 漫画チックな感じもするが、おかげで読みやすく、おもしろくて一気に読む。 地味なテーマかと思ったら、意外とダイナミック。 辞書とは言葉という大海原を航海するための船、というわけで、『大渡海』という…

佐藤雅美 へこたれない人

佐藤雅美『へこたれない人 物書同心居眠り紋蔵』(講談社) 表題の「へこたれない人」をはじめ8つの短編で構成され、1つ1つ読み切りながら全体として話はつながっていて、最後はストンと胸に落ちる人情話に仕上がっている。さわやかな読後感。読み進める最…

アルネ・ダール 靄(もや)の旋律

アルネ・ダール『靄(もや)の旋律―国家刑事警察特別捜査班』(集英社文庫、訳・ヘレンハルメ美穂) このところなぜか北欧のミステリーをよく読んでいるが、これもスウェーデンの警察小説。 ストックホルム郊外のフディンゲ警察の警部補ポール・イェルムは、…

ヘニング・マンケル ファイアーウォール

ヘニング・マンケル『ファイアーウォール』(創元推理文庫、上・下)読了。 スウェーデンのイースタという町の警察署の刑事クルト・ヴァランダーが主役のシリーズもの。 「ファイアーウォール(防火壁)」とはコンピュータ用語だそうで、外からコンピュータ…

デイヴィッド・ピース 占領都市

デイヴィッド・ピース『占領都市 TOKYO YEAR ZERO2』(酒井武志訳、文芸春秋)を読む。 作者は67年英国生まれ。現在は日本在住の作家。 小説というより長大な叙事詩を読む感じ。 テーマは帝銀事件。 連合軍というより米軍占領下の1948年(昭和23年)1月26日…

西加奈子 ふくわらい

大晦日朝の善福寺公園は曇天。風はあるがそれほど寒くはない。 きょうも下池にカワセミがいるかと思ったが、姿なし。 そう毎日は出会えない。 西加奈子『ふくわらい』(朝日新聞出版)を読む。 不思議な魅力の小説だった。 あらすじはというと──。 紀行作家…

川瀬七緒 147ヘルツの警鐘

川瀬七緒『147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官』(講談社)。 2011年に『よろずのことに気をつけよ』で江戸川乱歩賞を受賞した人。 どうなんだかなーと思いつつ読み始めたが、なかなかおもしろかった。 冒頭いきなり司法解剖のシーン。これがなかなかリアル。…

「特捜部Q」と「フロスト警部」

デンマークのミステリ作家、ユッシ・エーズラ・オールスンの『特捜部Q』シリーズの第1作と第3作を読んで、第2作を読んでないことに気がつき、あわてて読了。 ちょっと猟奇的で、おぞましい記述に辟易しつつも、読後感は「おもしろかった」 『特捜部Q キジ殺…

特捜部Q Pからのメッセージ

11日の善福寺公園は空気は冷たいがいい天気。 公園を1周していると、上池の浄水場となりの広場に見事な落ち葉の山。これも芸術だ! 下池にまわると、イチョウのキャンバスに樹木のシルエット。 ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q Pからのメッセージ』…

怪物はささやく

イギリス発のベストセラーというので手にとった。 『怪物はささやく』(あすなろ書房) 13歳の少年と怪物の物語。ズバリ、「死といかに向き合うか」がテーマ。死と向き合った少年が、揺れ動く自分自身の「心」と格闘した果てに「真実の愛」とは何かを知る──…

償いの報酬 平成猿蟹合戦図

最近読んだ本から。 ローレンス・ブロック『償いの報酬』(二見文庫) アル中探偵、マット・スカダーシリーズの最新作。といっても今は酒を止めているから元アル中か。 元ニューヨーク市警の警官で、免許証を持たない私立探偵となったスカダーは今年74歳。そ…

アラン・グレン 鷲たちの盟約

アラン・グレン『鷲たちの盟約』(新潮文庫、上・下)を読む。 「もし〇〇だったら?」といういわゆる歴史改変モノ。 大恐慌のころのアメリカ。フランクリン・ルーズヴェルトは危うく暗殺されそうになるが生き延び、大統領に就任。一方、ルーズヴェルトの政…

ジョン・ハート アイアン・ハウス

月曜日朝の善福寺公園は晴れ。朝から暑い。東京の最低気温、午前5時29分に27・9度。 ラジオ体操をしていると、池の真ん中をカワセミが飛んで行った。 池の端の葉っぱの上に、羽化して成虫になったばかりだろう、セミがジッと羽を休めていた。 ジョン・ハート…

ジェフリー・ディーヴァー 追撃の森

金曜日朝の善福寺公園は曇り。きのうとは一転、涼しい。 上池の上空を飛ぶツバメが低く飛んでいる。 「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」ということわざがあるが、きょうは午後から雨の予想。 朝のラジオ体操はきょうから「夏期巡回ラジオ体操」が始まり、石川県…

『死せる獣』と脂肪税

『死せる獣 殺人捜査課シモンスン』(ハヤカワ・ミステリ)を読む。 ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q』シリーズと同じくデンマークの警察小説。作者は大学講師と看護師の50代の兄妹コンビ、ロデ&セーアン・ハマ。 コペンハーゲン警察本部殺人捜査課…

佐藤雅美 夢に見た娑婆

土曜日朝の善福寺公園は晴れ。風が涼しい。 上池をめぐっていると、散歩中?のカメさん。すれ違ったところをパチリ。 いい天気なので日向ぼっこのカメが多い。 佐藤雅美の縮尻鏡三郎シリーズ最新作『夢に見た娑婆』(文藝春秋)を読む。 大番屋元締として市井…

スティーヴ・マルティニ 策謀の法廷

スティーヴ・マルティニ『策謀の法廷』を読む。 作者は『情況証拠』『弁護人』などリーガル・サスペンスもので知られる人。日本では2011年2月に出版された作品。 大手ソフトウェア企業アイソテニックス社の美貌のセレブ経営者、マデリン・チャプマンが自宅で…

井上ひさし 言語小説集

井上ひさしの新刊本『言語小説集』(新潮社) 亡くなってからだいぶたつのに、次々と新刊が出ている。たくさんの小説を書いていたんだね。 今回のは、1992年から95年にかけて「中央公論 文芸特集」(季刊)に随時掲載された7編の短編小説集。 今から20年ほど…

宮城谷昌光 草原の風 下

宮城谷昌光『草原の風』下(中央公論新社)を読む。 後漢王朝を創始した光武帝(こうぶてい)・劉秀の物語。 話のスジとはあまり関係ないが、言葉、とくに漢字の持つ意味の深さを教えてくれた。 たとえば、こんな記述があった。 「拝とは、もともと地の草花…

宮城谷昌光 草原の風 中

宮城谷昌光『草原の風』の中巻(中央公論新社)を読む。 後漢王朝を創始した光武帝(こうぶてい)・劉秀の若き日を描いた小説。 挙兵から昆陽の戦い、当時の皇帝だった王莽の死、一時、北方に追いやられるように転戦し、その後の逃避行の終了ぐらいまで。 10…

夢枕獏 大江戸釣客伝

夢枕獏の『大江戸釣客伝』(上・下、講談社)を読む。 さきごろ吉川英治文学賞を受賞した小説だ。 日本最古の釣り指南書といわれる『何羨録(かせんろく)』を著した旗本・津軽采女(つがるうねめ)の話と、もう1つ、絵師・多賀朝湖(のちの英一蝶)と俳人…