善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

R・D・ウィングフィールド 冬のフロスト

待望久しかったフロスト警部の第5弾がようやく出た。
R・D・ウィングフィールド『冬のフロスト』(上・下、創元推理文庫)。前作の『フロスト気質』から実に5年ぶり。

今回はどんな話かというと、出版社サイトによれば──。

寒風が肌を刺す1月、デントン署管内はさながら犯罪見本市と化していた。
幼い少女が行方不明になり、売春婦が次々に殺され、ショットガン強盗に酔っ払ったフーリガンの一団、“怪盗枕カヴァー”といった傍迷惑な輩が好き勝手に暴れる始末。
われらが名物親爺フロスト警部は、とことん無能で好色な部下に手を焼きつつ、マレット署長の点数稼ぎが招いた人手不足の影響で、またも休みなしの活動を強いられるが、事件の数々は、警部お得意の勘頼み捜査が的中したものを除き、大半が未解決のまま。
少女誘拐の容疑者は不在となり、売春婦を狙う連続殺人犯はいまだ野放し。
マレット署長の小言には無視を決め込み、モーガン刑事の相次ぐ失態はごまかしてきたが、それも限界だ。
どでかい失策に州警察本部の調査が入るわ、“超能力者”が押しかけるわでデントン署は機能不全の瀬戸際、フロスト警部もついに降参か・・・!?

今どきちっちゃい文字に上下合わせて1000ページ近くの大作。それでいて中身は、下品なジョークの連発に、女性蔑視の発言と行動の数々。それでも面白くて読み進んでいく。
事件解決の本筋より、フロストのハチャメチャぶりが読んでて快感。

それにしても、あれだけダサくて下品なフロスト警部のどこが魅力なのか? 
何よりフロストの正義感だろう。それが出世主義で予算のことしかいわない署長のマレットとの対比で鮮明に浮かび上がり、遠山の金さんか鬼の平蔵みたいに見えてきて、応援したくなる。

くたびれたオヤジがヒーローなんて、なんてステキ。だからフロスト警部は面白い。

といったって、作者のR・D・ウィングフィールドはもう亡くなっていて、日本で未訳のフロストものはあと1作のみ。
今から翻訳を待ち焦がれている。やっぱり4、5年後かな~。