善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

フロスト始末

いつ出版されるかと待ち焦がれていたフロスト警部シリーズの最終作「フロスト始末」(芹澤恵訳・創元推理文庫)を読む。

作者のR・D・ウィングフィールドは1928年ロンドン生まれ。2007年没。翌08年にシリーズ最終作が出版される。それが本書。ようやく今年になって日本で翻訳出版された。

フロスト警部シリーズの第1作「クリスマスのフロスト」がメッチャおもしろくて衝撃的だった。
以来とりこになり、2年ごとぐらいに出版される「フロスト日和」「夜のフロスト」「フロスト気質」「冬のフロスト」と読み継いで、本作に至った。

スケベで下品でだらしないフロスト警部が主人公。
警部といえばエライ人のようだが、元々フロストはしがない部長刑事(いわゆるデカ長)だったが銀行強盗事件で犯人に撃たれて名誉の負傷を負い、おかげでジョージ十字勲章を受勲。にわかに出世して警部に昇進したという経歴の持ち主。
だから心はいつも下っ端のまま。理不尽な署長や警察幹部の横やりには平気で反発し、一方で仲間を思いやる気持ちは強く、だから仲間たちもフロストを「ジャック」とか「親父(おや)っさん」とか気安く呼ぶ。

何より庶民への共感というか寄り添うマナザシがハンパない。
一見するとヘマでドジだが、弱い者いじめの悪事を許さぬ強い正義感が彼のカンをさえわたらせ、事件解決へと導いてくれる。

いろんな事件というかモメゴトが次々と起こって、翻弄されるフロスト警部。よくもまあ、これほどめまぐるしい展開を作者も考えたもんだと感心しながら読むうち、あっという間に上・下900ページを超える本作を読み終えてしまった。
フロスト警部の最後の物語なのだから、ゆっくり・じっくり読もうと思っていたのに。

作者が亡くなってフロスト警部も終わってしまい、あと楽しみにしているのは「特捜部Q」シリーズぐらいになってしまった。