善福寺公園めぐり

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宮城谷昌光 草原の風 中

宮城谷昌光『草原の風』の中巻(中央公論新社)を読む。

後漢王朝を創始した光武帝(こうぶてい)・劉秀の若き日を描いた小説。
挙兵から昆陽の戦い、当時の皇帝だった王莽の死、一時、北方に追いやられるように転戦し、その後の逃避行の終了ぐらいまで。

100万の軍を撃破した昆陽の戦いぶりがスゴイ。
まるで一遍の詩を読むような、流麗な筆致。
昆陽城を包囲した100万の王莽軍に対して、劉秀は夜陰に乗じてわずか13騎で昆陽城を脱出。途中、3千の兵を集め、昆陽包囲軍と対決し、大勝してしまった

作者は小説の中で、昆陽の戦いを次のように評している。

朱祐(しゅゆう・劉秀の側近)のような儒教の信奉者の良いところは、不遇や貧困に強いことである。儒教は、春秋時代に魯という、軍事的に劣り、富力をもたぬ国で生まれたため、強くないこと、豊かでないことをあたりまえのこととし、そういう状況で楽しく暮らす方法を人々にさとしたものである。

しかし劉秀は儒教の信徒でないので、発想が違う。

強くないこと、豊かでないことを、耐えるのではなく、その弱点こそ長所であると考え、それをもって強いもの、豊かでないものをしのぐという発想である。

その一例が、昆陽の戦いであった。

力のなさや貧しさをむしろ武器に変えて、強くて財力に長けたものに打ち勝ってしまおうという発想。
これからの時代に必要なことかもしれない。
ワタシ的には“儒教的生き方”も捨てがたいが。