善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

正月の東京都写真美術館

3日の善福寺公園は朝のうち曇り。風強く冷たい。

きのう2日は恵比寿にある東京都写真美術館へ。新年2日は入場無料というので、北井一夫「いつか見た風景」、新進作家5人の「この世界とわたしのどこか」の2つの展覧会をハシゴ。
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この日はタダというのでけっこうにぎわっていたが、ひまなオジサン、オバサンが多いかと思ったら若い人(特に女性)が意外と多かった。
お正月らしく「お年玉クイズ」なんかもあって、土方歳三の写真ハガキをゲット。

北井一夫は戦後の日本の風景というか情景を撮り続けた人。失われゆく日本の農村の原風景を捉えた「村へ」のシリーズで第1回木村伊兵衛写真賞を受賞している。
今回の個展でも「村へ」の一連の作品が心に残る。
雪に閉じ込められた家の窓で笑う女の子、何を思うのか、ぐっと歯を食いしばる夜汽車の男の子。
写真は歴史の証言だなとあらためて思う。

5人の新進作家の写真展はどれも女性。
印象に残ったのは大塚千野の作品。昔の家族のアルバムから自分の幼いころの写真を選び、デジタル処理により幼いころの自分の隣に現在の自分の写真を映り込ませている。
まるでタイムマシンに乗って自分の過去に旅しているようで、その発想がおもしろい。

もう1人、菊地智子の作品は北京のゲイを撮ったシリーズ。
しかし、ほかの作品はどうも考えすぎというか、屁理屈をこねる作品に思えた。もっと素直に、自然な気持ちで被写体に向かえばいいのにと思う。

昼は近くのエビスビアステーションで、琥珀ビールとソーセージ。食感がまるでハンペンのような変わったソーセージがあった。
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聞くと「ウールヴルスト」というソーセージだそうで、腸などに詰めたりしないでそのまま加熱して作り上げたのだとか。それで口あたりが柔らかくて、やさしい味わい。
「ウール」とは毛糸のことで、ウールのような柔らかさに由来しているのだろう。

午後は写真美術館にとって返して、午後1時からの映画を観る。
「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」というドキュメンタリー。
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ニューヨークの小さなアパートで暮らす郵便局員のハーブと図書館司書のドロシーのおしどり夫妻は、アート好きが嵩じて現代アート作品の収集をはじめる。
作品を選ぶ基準は2つ。自分たちの給料で買える値段であること、そして1LDKのアパートに収まるサイズであること。

約30年間で2000点以上ものアート作品を収集し、そのコレクションには名だたるアーティストたちの無名時代の作品が多数含まれており、ついにはナショナルギャラリーから寄贈の依頼が舞い込むまでになる。

そんな2人の足跡をたどるドキュメンタリー映画で、監督・プロデューサーは佐々木芽生さんという人。

作品は好評で続編がつくられることになり、「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」と題する続編は3月30日より新宿ピカデリー東京都写真美術館ホールなどで公開されるのだとか。

ちなみにハーブことハーバート・ヴォーゲルさんは昨年7月、90歳で亡くなったそうだ。
残された奥さんのドロシーはきっと寂しい日々を送っていることだろう。