コロナ禍で外出自粛が続いていたが、緊急事態宣言の解除で臨時休館していた美術館などもようやく再開。まずはそれほど混んでないところへと出かけて行ったのが、東京・江東区にある東京都現代美術館。
入館時には体温チェックがあり、手指を消毒して館内に入ると、若い人や親子連れもけっこう来ていた。
開催中の展覧会のうち、「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」と「ドローイングの可能性、「MOTコレクション いま-かつて 複数のパースペクティブ」を観る。
午前10時半ごろ入館して、昼食を挟んで美術館を出たのは午後2時半すぎ。たっぷり美術展を楽しんだ。
オラファー・エリアソンは1967年生まれのアイスランド系デンマーク人アーティスト。
1995年、ベルリンでスタジオ・オラファー・エリアソンを設立。同スタジオは現在、技術者、建築家、研究者、美術史家、料理人等、100名を超えるメンバーで構成されているが、アートを介したサステナブルな世界の実現に向けた試みを行っていて、光や水、霧などの自然現象を新しい知覚体験として屋内外に再現する作品を数多く手がけ、世界的に高く評価されているという。
本展はもともと3月14日から開催のはずだったが、新型コロナの影響で6月9日からに延期された。
「太陽の中心への探査」
ガラスでできた多面体のオブジェが吊るされていて、少しずつ動きながらさまざまな色の光を全方向に放っている。この光の動きは美術館の中庭に置かれたソーラーパネルからの電力によって生み出されているという。
「あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること」
部屋の端っこに7つの光を放つ床ライトが置いてあり、このライトの前に立つと自分の姿が複数の光の影になって壁に映し出される。観客自身がアート作品になっている。
「サンライト・グラフィティ」
電力にアクセスできない地域の人々のためにつくったという携帯用のソーラーライト「リトルサン」に蓄えられた太陽の光で、自由にドローイングを描く。
「ときに川は橋となる」
床に置かれた小さなプールに反射した光が壁に投影される。水のゆらぎに合わせて光も揺れ動く。
「ビューティー」
霧状の水(ミスト)に投影した光が虹のように見える。中を通り抜けることもできる。
昼食は館内のカフェ&ラウンジ「二階のサンドイッチ」でサンドイッチをつまむ。
続いてみたのは同館所蔵作品を紹介する「MOTコレクション いま-かつて 複数のパースペクティブ」。
何人かのアーティストの作品が展示されていて、それぞれにおもしろかったが、そのうちの1つ、岡本信治郎の「銀ヤンマ(東京全図考)」。
岡本信治郎は東京の下町育ちで、下町での少年期の記憶から神話や宗教、戦争まで幅広い主題を描いていて、この作品は巨大ヤンマとB29による東京大空襲の記憶を結びつけたもの。
近づいてよく見ると、銀ヤンマ(それはおそらく下町に焼夷弾を投下するB29)の下には昔の東京の地図が描かれている。
「積み木倒し ニュー・ゲルニカ」より
「ころがるさくら・東京大空襲」より
岡本信治郎は凸版印刷のアートディレクターとして勤務しながら創作に取り組み、50年代半ばからアンデパンダン展などに出品。鮮やかな色彩とユーモラスな形態に社会的な視点も込め、日本のポップアートの先駆的作家として知られているという。
つい先日の4月8日、86歳で死去。
宮島達男の「それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く」
赤色のデジタル・カウンターを用いた作品。
1728個のLEDはそれぞれ異なるスピードで1から9まで表示し続ける。
ただそれだけの作品なんだが、見ていて飽きない。
ずーっと見つめ続けていたい気になるのはなぜだろう?
さらに続いて「ドローイングの可能性」。
こちらは撮影禁止なので写真はなし。
草間彌生の初期の作品もあった。
印象に残ったのが山部泰司の風景画。
風景画といっても西洋的な風景画とはどこか違う。単色のアクリル絵の具を使い、何本ものドローイングの線で風景を描いていて、むしろ山水画っぽい。
どの作品もかなりの大作で、「横断流水図」は幅4m近くあるという。赤っぽい色のアクリルの線が、水の流れや木々のざわめきを表現している。写実というより想像世界の風景画のようだった。