善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ヨコハマトリエンナーレ2017

横浜で開催中の「ヨコハマトリエンナーレ2017」がおもしろい。

第6回を数える今回は、「島と星座とガラパゴス」というタイトルでアーティスト38組と1プロジェクトが作品を出展。「接続性」と「孤独」がテーマだという。
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時間の関係で横浜美術館横浜赤レンガ倉庫1号館のみを見て回ったが、印象に残った作品を紹介しよう。

まずはメイン会場である横浜美術館の外壁に張りついている救命ボートと、2本の柱にくくりつけられた救命胴衣。
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2008年北京オリンピックのメイン会場「鳥の巣」をデザインしたアイ・ウェイウェイの作品。中国で生まれ、現在はドイツに在住。
難民問題を扱っていて、救命胴衣は難民たちが実際に使ったものという。ヤマハ製が多い。

中に入るといきなり巨大なオブジェがお出迎え。インドネシアのジョコ・アヴィアントの作品で、日本の「注連縄(しめなわ)」から着想を得てインドネシア産の竹2000本を編み込んで作ったという。題して「善と悪の境界はひどく縮れている」。
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貝殻の島に暮らす?人々。「飼い慣らされた島(日本)-ファンタジーの島」
つくったのはマップオフィスという2人組ユニットで、香港を拠点に活動しているという。
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こちらは「飼い慣らされた島(日本)-時間の島」
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やはりマップオフィスの作品。
「液状の陸 固形の海」
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南シナ海の約160の島が描かれている。インディゴ顔料のブルーが鮮やか。小さな点のような島々はまるで夜空の星のように見える。

「ジルバ タンゴフライ タグブラント」
カールステン・ヘラー、トビアス・レーベルガー、アンリ・サラ&ルクリット・ティラヴァーニャといった複数のアーティストがリレー形式で描いたという。
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前の作家が描いた作品の終りの1㎝ほどの部分のみを手がかりに、一定の制約のもとで描くことにより、偶然が生み出す思いがけないイメージとの出会いの可能性や、共作における創造性のせめぎ合いがもたらす効果を探るのがねらいという。
不思議とひかれる。

タチアナ・トゥルヴェというイタリア生まれ、パリ在住のアーティストの作品。
はじめ段ボールでつくった住まいの形、かと思ったらまるで違っていた。
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ブロンズ、アルミニウム、銅でつくった彫刻作品という。
しかし、そうと知って改めて近づいて見てもやっぱり段ボールにしか見えない。高価で頑強な素材を使ってあえて粗末に見せることによって「住まいとは?」と問いかけているのだろうか。

木版画家、風間サチコの「第一次幻惑大戦」。
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江戸時代の地雷也の物語を現代に捉え直した作品。歴史を再解釈して現代社会の権力構造への風刺を描く、という。
しかし、この人、女性だと思うが実に男っぽい(「男っぽい」という言い方は今では死語かもしれないが)。

ロサンゼルス生まれ、ニューヨーク在住のイアン・チェンの映像作品。今回のヨコトリで一番気になった作品。
「使者は完全なる領域にて分岐する」
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管理され閉じられた世界での意識の芽生えをテーマにしているという。
AI(人工知能)が管理する火山湖を舞台に物語は展開する。人間の死後の状態を分析しようと試みるAIは、21世紀のセレブの遺体を蘇らせ、柴犬の姿をした使者を使って負荷をかけ、ストレスをかかえる人間が最後にはどうなるかを導き出そうとする。
見ていて飽きない。

フィリピンの作家、マーク・フスティニアーニの「トンネル」。
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トンネルはどこまでも続いているようにしか見えない。しかし、実際には奥行きは1、2mぐらいしかない。鏡と光の魔術によってずーっと向こうまでトンネルがつながっているような錯覚を生み出す。

デンマークの作家、オラファー・エリアソンのワークショップ「Green Light」の作品から。
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シンプルな棒とジョイント、緑の電球を使って1つのオリジナルな作品「Green Light」を作り上げていく企画。
どこかで見たなーと思ったら、今年イタリアを旅したときに行った「ヴェネチアビェンナーレ」でも同じワークショップをやっていた。

次は連絡バスに乗って横浜赤レンガ倉庫1号館へ。
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まずは小沢剛の「帰って来た」シリーズ。
彼はこれまで、黄熱病のためガーナで客死した野口英世を描いたり、日本を去ってフランスに帰化した藤田嗣治、1966年のマニラ・ツアーにからむジョン・レノンのエピソードなどで「帰って来た」シリーズを描いてきたが、今回はインド・コルカタを訪れた岡倉天心がテーマ。
映像と8点の絵によるインスタレーションで、そのうちの1つ、大波に翻弄される岡倉天心と六角堂。
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宇治野宗輝による「プライウッド新地」
古い家電製品やエレキギターなどが置いてあって静まり返っているが、突然、明かりがともり、それぞれのオブジェがガタガタと動き出す。オブジェは互いに連携し合っているようで、家電製品による音楽会みたいになっていく。
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小西紀行の油絵作品。
彼は幼少期の自分も含めた家族、あるいは身近な人物の写真を元にした肖像を繰り返し描いていて、その1つ。
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抽象画のようだが具象画にも見える。「家族とは?」と絵が聞いてくる。

アイスランドの作家、ラグナル・キャルタンソンの映像作品。
「ザ・ビジターズ」。
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ヘッドフォンから聞こえる他者の演奏音を頼りに、異なる部屋で1つの曲を奏でようと試みるミュージシャンたちを、9つのスクリーンに投影する。
やがてミージシャンたちは1カ所に集まり、楽しげに歌いながら家を出て、草原の彼方へ消えて行った。