2日は毎年恒例の東京都写真美術館へ。正月2日、3日は同館は入場無料。3つの写真展をハシゴする。
まずは、「記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol. 18」
東京都写真美術館では、将来性のある作家を発掘するための新進作家展を開催していて、 18回目となる本展では「記憶は地に沁み、風を越え」をテーマに、吉田志穂、潘逸舟、小森はるか+瀬尾夏美、池田宏、山元彩香の5組6名の写真・映像表現を紹介している。
どの作品もおもしろかったが、釘付けになったのが山元彩香(1983年生まれ)の作品。
女性たちを撮ったポートレートなのだが、どれも静謐で、清らかで、見る者に何かを語りかけてくる。一瞬、土門拳の「古寺巡礼」を思い出した。そうだ、ここに写っているのは普通の少女のポートレートではない。まるで聖母マリアの肖像のようだ。
美術館HPのインタビューで山元は、「2009年からの13年間、さまざまな土地で撮影したポートレートの写真と映像を展示しているが、根底にあるのは人間とは何か、映像表現の中にある生の中の死、死の中の生だとか、空の器としての身体に何が宿っているか、ということを自分に問い続けて撮影を続けてきた」というようなことを述べている。
そこに写っているのはたしかに少女たちの姿なのだが、その姿の向こうに、いや、彼女たち自身の中から、何か深遠なもの、祈りのようなものが浮かび上がってくる、そんな気がしてきた。
「松江泰治 マキエタCC」
松江泰治(1963年生まれ)は世界各地の地表を独自の視点で写してきたという。
タイトルにある「CC」とは都市の略記号である「City Code」からとられたもの。また、「(マキエタ(makieta))とはポーランド語で模型のことだという。
実際の都市を撮った写真と、世界各地で撮った模型の写真が渾然一体となった展示構成となっているのが本展。
実際の都市を写した作品は、画面に地平線や空を含めない、被写体に影が生じない順光で撮影するといったルールで撮られているそうで、どこか「作り物」のようにも見える。
一方の都市の模型も同じルールで撮られていて、これはハナから「作り物」なのだが、実際の都市の写真と並んで展示されていると、どっちがホンモノでどっちがニセモノ(模型)なのか、まるでわからなくなる。
作者はそうやって鑑賞者が困り果てる姿を期待しているのか。
「プリピクテ 東京展「FIRE / 火」」
スイス・ジュネーブに本社を置く「ピクテ」という企業グループが始めた「国際写真賞プリピクテ」で選ばれた13人の作家の作品を展示。
同賞は、地球環境と社会問題について重要なメッセージを発信している写真を発掘し、それらの写真を通じて議論や対話を引き起こすことを目的とした国際写真賞だそうだ。
「火」をテーマにした今回の作品のいくつか。
ジョアナ・ハッジトマス&ハリール・ジョレイジュ(レバノン)の“戦争の絵はがき”。
内線と戦争によって今では全く残っていない、かつての理想的なレバノンの風景ポストカードに火をつけた一連の作品シリーズ。架空の写真家・アブダラ・ファラーが、自身が撮った風景写真のポストカードに自ら火をつけるという設定となっている。
クリスチャン・マークレー(アメリカ/スイス)のコラージュ作品。
コミックブックや映画のスチール写真、インターネット上の画像など小さな断片がコラージュされ、叫ぶ人の顔を形づくっている。
ファブリス・モンテイロ(ベルギー/ペナン)の作品。
ゴミや自然素材で作られた衣装を身に纏った人物を撮影し、世界規模で起こる環境破壊の実態を描いている。
マク・レミッサ (カンボジア)の作品。
1975年4月17日、クメール・ルージュの兵士たちがプノンペンを制圧。1970年生まれの作家が幼少期の過酷な記憶を今に蘇らせた作品。
昼は、恵比寿駅前の小籠包レストラン「京鼎樓(ジンディンロウ)」でランチセット。
美術館内を歩きに歩いたので、ごほうびにビールと紹興酒。