フランス・ボルドーの赤ワイン「シャトー・ジレ・ルージュ(CH.GILLET ROUGE)2020」
(写真はこのあとメインの肉料理)
5世代に渡ってボルドーの地でワインをつくり続ける老舗シャトーのシャトー・ジレ。
メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランをブレンド。
ふくよかな果実味と滑らかな舌触りの親しみやすい仕上がりの赤ワイン。
ワインの友で観たのは、民放の地上波で放送していた映画「トリスタンとイゾルデ」。
2005年の作品。
原題「TRISTAN & ISOLDE」
監督ケビン・レイノルズ、出演ジェームズ・フランコ、ソフィア・マイルズ、ルーファス・シーウェル、ヘンリー・カビルほか。
中世に宮廷詩人たちが語り伝えたという騎士トリスタンと主君マーク王の妃となったイゾルデの悲恋の物語。
幼いころアイルランド軍に両親を殺されたトリスタン(ジェームズ・フランコ)は、ブリテン島にあるコーンウォールの領主マーク(ルーファス・シーウェル)に引き取られ勇敢な騎士として育つ。
再び領地に攻め込むアイルランド軍に対し、若きリーダーとなったトリスタンは奇襲作戦で対抗し勝利するが、毒の剣で刺され死んだと思われ小舟で流される。舟はアイルランド領へ。それをアイルランド王の娘イゾルデ(ソフィア・マイルズ)が見つけ、彼女の献身的介護でトリスタンは元気を取り戻す。2人は愛し合い、結ばれる。
彼女の手引きで自国へ戻ったトリスタンは、アイルランド王が娘を優勝賞品に武芸大会を開催するというので、勇んで出場し、優勝するが、イゾルデが王の娘と知らない彼は、優勝賞品をマーク王に進呈すると宣言。イゾルデはマーク王と結婚することになる。
いったんは彼女を諦めるトリスタンだったが、互いを忘れられない2人は・・・。
早い話が、王さまの妃と不義密通したトリスタンと、イゾルデ、王をめぐる三角関係の物語。
日本でも不義密通や三角関係を描いた文学作品は数多いが、そこに人間の心理が如実に現れるからだろう。
さかのぼれば、江戸時代には文楽や歌舞伎で格好の題材となり人気演目となったし、もっとさかのぼれば、紫式部の「源氏物語」だって不義密通の物語だ。
主人公の光源氏は、幼くして母をなくし、母の面影を求めてさまざまな女性と関係を持ち、主君の后(きさき)と不義密通する。
何となくトリスタンの人生に似ているが、「源氏物語」を研究した本居宣長は、儒教的な「勧善懲悪」とは異なる「もののあはれ」の概念こそが日本ならではの情緒であり、これこそが王朝文学の本質であるとして、その頂点に光源氏の不義密通を描いた「源氏物語」を位置づけた。
「トリスタンとイゾルデ」におけるトリスタンとイゾルデ、マーク王の苦悩は、「もののあはれ」という観点でみると、何となくわかる気がする。
ついでにその前に観た映画。
民放のCSで放送していたアメリカ映画「PIG/ピッグ」。
2021年の作品。
原題「PIG」
監督・脚本マイケル・サルノスキ、出演ニコラス・ケイジ、アレックス・ウルフ、アダム・アーキンほか。
ニコラス・ケイジが主演を務め、連れ去られたブタを奪還するべく戦う男を描いた作品。
オレゴンの森の奥深くでひとり孤独に暮らす男ロブ(ニコラス・ケイジ)。彼にとって唯一の友だちは忠実なトリュフ・ハンターのブタで、収穫した貴重なオレゴン産のトリュフを取引相手の青年アミール(アレックス・ウルフ)に売った金で生計を立てていた。
そんなある日、ロブはライバルのハンターから襲撃を受けて負傷し、ブタを連れ去られてしまう。愛するブタを奪い返すため犯人の行方を追うロブ。やがて、犯人とおぼしきヤク中集団の情報を得ることができたが、彼らのもとにたどりついたときには、ブタはすでにポートランドへと運び去られていた。
何としてでも愛豚を取り戻したいロブは、アミールととともにポートランドに向かう・・・。
ニコラス・ケイジの演技が評価された本作だが、観ていて興味を抱いたのが「オレゴン産のトリュフ」だった。
キノコの一種で、世界三大珍味のひとつとして名高いトリュフ。
土中で成長するので人間が地上から見つけるのは極めて困難なため、鼻の利くブタやイヌがトリュフ・ハンターとして活躍している。
それにしても、トリュフといえばフランスやイタリアなどの特産品で、アメリカあたりでもとれるのだろうか?と思ったら、実はトリュフは世界中に分布していて、日本にも存在しているのだそうだ。
それでも食用として価値が高いのはヨーロッパ産のトリュフ。このうち黒トリュフはほぼヨーロッパのみで生産され、フランス45%、スペイン35%、イタリア20%の順。白トリュフとなると人工栽培が難しいためより貴重度は増していて、主な産地はイタリアで、ピエモンテ州あたりでとれるのが最高級品。2022年のイタリア白トリュフのオークションでは1グラムあたりで4万円あまりの値がついたとのニュースがあった。
そんな中で、近年、存在感を増しているのが北米原産の「オレゴントリュフ」だという。
オレゴン州を中心に北はカナダ、南はカリフォルニアまで、カスケード山脈の西側あたりで収穫され、白トリュフもあれば黒トリュフもある。価格も、フランス産を上回る値のついたものもあるというから、ビジネスとしても十分成功できる。
ヨーロッパ産のトリュフに負けないオレゴン産トリュフの人気上昇を背景に、本作がつくられたのだろうか。
民放のBSで放送していたドイツ映画「アギーレ 神の怒り」。
1972年の作品。
原題「AGUIRRE, DER ZORN GOTTES」
監督・脚本ヴェルナー・ヘルツォーク、出演クラウス・キンスキー、ヘレナ・ロホ、セシリア・リベーラ、デル・ネグロ、ルイ・グエッラほか。
アマゾン奥地にあるという伝説の黄金郷エルドラドを目指したバスク系スペイン人の探検家というか略奪者、ロペ・デ・アギーレにまつわる実話をもとに、黄金に目が眩んだ男たちが狂気に走っていく姿を描いた作品。
1560年。インカ帝国を支配したスペインは、アマゾンの奥地に黄金郷が存在するという伝説を信じ、探検隊を送り込む。しかし、ジャングルの中を進む道のりは劣悪で、まずは先の道のりを調査しようと分遣隊を送る。隊長はウルスア(ルイ・グエッラ)、副長はアギーレ(クラウス・キンスキー)で、兵士や神父、スペインからきた貴族とともに先住民の奴隷40人、それにウルスアの愛人(ヘレナ・ロホ)、アギーレの娘(セリシア・リベーラ)も同行した。
激流の川を筏で進む彼らだったが、途中、先住民の攻撃に遭い、隊長のウルスアはこれ以上進むのをやめて戻ろうとする。ところが、アギーレは反対し、ウルスアを撃つ。分遣隊のリーダーとなったアギーレは一緒にきた貴族を王に祭り上げて謀反を行うと宣言。アギーレに支配された分遣隊はあくまでエルドラドを目指して進んでいく。
飢え、病い、そして人食い人種たちの脅威にさらされながら次々と倒れていく中で、ただ一人、狂気の赴くまま目をギラつかせるのはアギーレだった・・・。
南米を舞台にしたスペイン人の“狂気の物語”なのに製作したのはドイツで、監督はドイツ人だし、セリフもすべてドイツ語。
監督のヴェルナー・ヘルツォークは、同じドイツ人であるクラウス・キンスキーを主役にした映画をつくりたかったのではないか。“狂気”を演じるのは彼こそふさわしいと、選んだ題材がエルドラドをめざしたアギーレの物語だったのではないか。
ヘルツォークはキンスキーを子どものころから知っていて、1955年の3カ月間、13歳のヘルツォークが家族とともに住んでいたアパートには当時29歳だったキンスキーが住んでいて、いかに個性的な人間であるかを知っていたようだ。
後年、映画監督になったヘルツォークはその当時のことを覚えしていて、アギーレ役にキンスキーを指名したのだろう。
この映画で互いに気が合ったのか、こののちもヘルツォークとキンスキーは何本か映画を撮っていて、キンスキーの死後、ヘルツォーク監督はキンスキーとの愛憎入り交じった関係を描いたドキュメンターまでつくっている。