イタリア・トスカーナの赤ワイン「アルパ・カベルネ・ソーヴィニヨン(ARPA CABERNET SAUVIGNON)2020」
ワイナリーは、イタリアのファッションブランド「サルヴァトーレ・フェラガモ」がトスカーナ州で手がけるイル・ボッロ。
もとはメディチ家が支配し、その後、旧王族の所有だったイル・ボッロ村をフェラガモ家が丸ごと買い取り、敷地内の家屋を修復し、中世の美しい景観に戻して高級リゾート地に変え、同時にワイナリーを併設。
カベルネ・ソーヴィニヨン100%で飲みやすいワイン。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたテレビドラマ「ながらえば」。
1982年放送のテレビドラマ。
作・山田太一、演出・伊豫田静弘、音楽・湯浅穣二、出演・笠智衆、宇野重吉、長山藍子、中野誠也、佐藤オリエ、堀越節子ほか。
老夫婦の生き方や子どもとの絆を通して、高齢化社会が抱える問題を探る作品。
名古屋に住む元欄間職人の隆吉(笠智衆)は、重い病のため市内の病院に入院中の妻もと(堀越節子)を残して、転勤する長男理一(中野誠也)とその妻(佐藤オリエ)、孫の3人とともに慌ただしく富山へと引っ越す。名古屋には娘の悦子(長山藍子)もいるが、娘は夫とうまくいってない上、住宅が狭くて隆吉の居場所はなく、息子一家と一緒に住むしかなかったのだ。
しかし、引っ越した2日後、もう二度と妻に会えないかもしれないと思った隆吉は、長男夫婦の反対を押し切って、わずかな金を持っただけで家を飛び出す。金が足りずに名古屋行きの電車を途中で降りた隆吉は、所持金もないまま、たまたま入った旅館のあるじ謹造(宇野重吉)と知り合う。謹造はその日、妻に先立たれたばかりだった。謹造の妻の棺の前で、深夜まで酒を酌み交わしながら語り合う二人。隆吉に同情した謹造の助けで、翌朝、隆吉は名古屋へ向かうが、そのころ、妻は生死の境をさまよっていた・・・。
1982年の11月3日文化の日午後8時30分から9時35分までNHK総合で放送され、笠智衆と宇野重吉が共演した唯一のドラマとなった。
脚本家の山田は、松竹で助監督をしていたころから笠智衆を主役にしたドラマをつくりたいと願い続けていたという。しかし、老人が主役のドラマはなかなか実現できないでいた。
そんなとき、東京で大河ドラマなどを手がけていたNHKのディレクター(演出家)伊豫田静弘が名古屋局に異動。伊豫田から山田に「名古屋でやりませんか」と声がかかり実現したという。
名古屋局制作のため舞台は名古屋。山田は、老人夫婦の絆と、家族の絆、その2つを描くためには名古屋から遠いところをもうひとつの舞台にしようと考え、NHKの名古屋局管内で一番遠いところとして選んだのが富山だった。
今は名古屋‐富山間を電車で行くと米原経由で新幹線を利用すれば2時間40分ぐらいで行けるが、当時は一番早い急行に乗っても約5時間ぐらいかかった。
その5時間という時間が、老いた夫と妻を離ればなれにし、また互いの絆を確かめ合うための時間ともなったのだった。
だからドラマは、当時の国鉄の列車で移動する隆吉の姿を描いていて、一種のロードムービーともなっている。
ドラマの中で、隆吉は運賃が不足していて途中でおろされ、「猪谷」という駅で途中下車する。
その駅近くの旅館で、宇野重吉演じる旅館の主人と酒を酌み交わしながら、互いの妻についてしみじみと語り合う。
旅館の主人は、急いで名古屋に行きたい隆吉の事情を知って、旅費を貸してくれた上、今なら夜行列車に間に合うといって送り出そうとする。だが、時刻がすぎているとわかり、翌朝の列車で名古屋に向かうことになるのだが、たしかにその当時、富山0時3分発で猪谷0時44分、名古屋5時14分着の夜行急行「のりくら」12号が走っていた。
そういえば東京からもその昔、東京発大垣行の夜行列車が走っていたが、20年春の運転を最後に廃止されている。
新宿からは、大糸線の南小谷に翌朝着くアルピニスト向けの夜行列車が走っていて、新宿駅には自由席を求めて並ぶためのアルプス広場というのがあったが、むろん、今はない。
そんな昔の思い出までもがよみがえってくる、しみじみとした余韻の残るドラマ「ながらえば」だった。
続いてみたのが民放のCSで放送していたテレビドラマ「冬構え」。
1985年放送。
作・山田太一、演出・深町幸男、音楽・毛利蔵人、出演・笠智衆、岸本加世子、金田賢一、沢村貞子、小沢栄太郎、藤原釜足、せんだみつお、谷村昌彦ほか。
妻に先立たれた老人が死に場所を求めての旅の途中、出会った人々との心の交流を描く。
6年前に妻に先立たれた圭作(笠智衆)は、80歳も間近となって心身の衰えを痛感するようになり、生き方同様に死に方も自分で選びたいと全財産と遺書を携えて晩秋の東北への旅に出る。
途中、がんで入院中の昔の同僚(小沢栄太郎)と20数年ぶりに再会したり、同じ一人旅で東京から来たという老女(沢村貞子)と知り合い、同じ宿に泊まったりしながら、死に場所を求めて旅を続ける。
一度だけ贅沢をしようと泊まった鳴子温泉の旅館では、部屋係の麻美(岸本加世子)にチップを渡すが、あとで袋を開けた彼女は2万円が入っていたのでびっくり。ほかにもちょっとしたことでも1万円、2万円とチップを渡し、「金はいくらでもあるので、少しぐらい散財してもどうということはないんだよ」みたいなことをいってけむに巻く(このあたり落語の「宿屋の富」にちょっと似てる)。
その話を真に受けた麻美。実は彼女には恋人の昭二(金田賢一)がいて、彼は旅館の板前をしているが、2人で小さな店を持とうと開業資金を稼ぐために働いているのだった。
「お金持ちのおじいちゃんなんだから、きっと貸してくれる」と、思い切って麻美が圭作に事情を話すと、彼はポンと150万円を投げて寄こし、タクシーに乗って去っていく。
大喜びする麻美だが、さすがに昭二は不審に感じて「あのおじいちゃんには何かある」とあとを追う・・・。
1985年の3月30日、夜9時からのNHKドラマスペシャルで放送された。
1982年に放送した同じ山田太一作、笠智衆主演で老人の孤独をテーマにした「ながらえば」が評判となり、それで2作目としてつくられたのが「冬構え」だったのだろう。「ながらえば」は65分だったが、本作は1時間40分。演出は和田勉と並んでNHKを代表する演出家の一人、深町幸男。その後、3作目として山田太一作、深町幸男演出で「今朝の秋」(1987年)がつくられている。
前途ある若いカップル、岸本加世子、金田賢一と笠智衆との対比が鮮やか。
若い二人は、将来、彼の故郷である八戸で小料理屋を開こうと懸命に働いている。一方の笠智衆は、もはや将来への希望などなく死に場所を探しての旅。
ドラマの後半、恐山をさまよう主人公が読む遺書が心に響く。
「今までの人生を自分で選んで生きてきた。それだったら、生き方同様、死に方を自分で選んでもいいだろう。もとよりそんな考えは若いころなら傲慢とか命の尊さを知らないと一蹴されるだろうが、齢(よわい)80にならんとする今なら許されるのではないか。
死ぬまでの何年かを病院で、あるいは子どもの家で、まるで廃人のように生きるなんてとてもごめんだ。贅沢かもしれないが、よいじいさんのままでこの世を去りたい・・・」
圭作が自殺を考えていると知った若い板前は、圭作を自分の故郷に連れていき、祖父(藤原釜足)に会わせる。
祖父はいう。
「孫は、人間、生きてるうちが一番だとあんたにいえというんだが、ワシにはそんなこといえねえ」
圭作が「死ぬのもなかなか容易じゃなくて・・・」というと、「んだ、容易じゃねえ」。
そして翌朝、ニコッと笑って祖父はいう。
「どんだ?少しここさ居てみねえか?こう見えても気心知れてくりゃ、結構しゃべるだ」
そうなのだ、人間、死のうと思って死ねるものではないのだ。それに、一人で悩んでいていいことはないのだ。それよりも、誰かと少しでも一緒にいて、気心知るようになれば、また違った生き方が見えてくるのかもしれない。
ついでにその前に観た映画。
民放のCSで放送していたアメリカ映画「永遠(とわ)に美しく」。
1992年の作品。
原題「DEACH BECOMES HER」
監督ロバート・ゼメキス、出演メリル・ストリープ、ゴールディ・ホーン、ブルース・ウィリス、イザベラ・ロッセリーニほか。
落ち目の人気女優・マデリーン(メリル・ストリープ)のもとに、旧友であるヘレン(ゴールディ・ホーン)が訪れ、有名な美容外科医アーネスト(ブルース・ウィリス)と婚約したと自慢してくる。ところがアーネストはマデリーンを一目見たときから魅了されて、ヘレンを捨ててマデリーンと結婚。失意のヘレンは激太りし、7年後には病院送りになる。
さらに7年後、50代となり容姿の衰えに悩むマデリーンはヘレンと再会するが、彼女はまるで若返ったかのように美しくなっていた。対抗心を燃やしたマデリーンは謎の美女リスル(イザベラ・ロッセリーニ)に出会い、「永遠に美しくなれる」という秘薬を手に入れる。
一方、マデリーンとの結婚生活がうまくいかず、遺体の修復師に落ちぶれたアーネストは密かにヘレンと会ってマデリーンの殺害を計画していて、自宅で彼女といい争っていたとき、衝動的に階段から突き落としてしまう。彼女は全身が骨折し、首が180度回転して死んだと思われたが、それでも彼女は生きていた。
生きているとしらないヘレンがアーネストのもとへ駆けつけると、マデリーンはショットガンでヘレンを撃ち殺す。ところが、ヘレンは体に風穴を開けられたのに平然としている。実はヘレンもリスルの秘薬を飲んでいて、2人が飲んだその薬は「いつまでも年を取らない永遠の美」を与えると同時に、「一度でも死ぬような致命傷を負えば、体自体は死んだ状態となり傷も治らないまま永遠に生き続ける」という恐ろしい効果を持っていた・・・。
若返りに異常な執念を燃やす2人の女性を描くブラック・コメディ。
原題の「DEACH BECOMES HER」は「彼女には“死”がお似合い」といった意味だろうが、不老不死の薬は夢のような薬かと思ったら、とんでもないシロモノだった、というわけなのだろう。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「フォレスト・ガンプ一期一会」のロバート・ゼメキス監督だけに当時の最新SFXや特殊メイクを駆使。ショットガンで撃たれて胴体に大きな丸い穴があいたシーンなどはホントに穴の後ろの景色が見えて実にリアルだった。
その特殊効果技術が評価されて1993年のアカデミー賞で視覚効果賞を受賞。
謎の美女リスル役のイザベラ・ロッセリーニは、映画監督のロベルト・ロッセリーニ、女優イングリッド・バーグマンの娘。
バーグマンはスウェーデン出身の女優で、「カサブランカ」(1942年)「誰が為に鐘は鳴る」(1943年)「ガス燈」(1844年)やヒッチコックの映画などに出演。彼女がハリウッドにいたとき、イタリアのネオレアリズモ運動の先駆者であり「無防備都市」(1945年)などで知られるロベルト・ロッセリーニの映画を見て傾倒。ついには不倫関係となり、夫と離婚して1950年にロッセリーニと結婚。2年後に生まれたのがイザベラだった。