善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ジェフリー ・ディーヴァー バーニング・ワイヤー

ジェフリー ・ディーヴァーの『バーニング・ワイヤー』(池田 真紀子訳)をようやく手にする。

地球の日(アースディ)を間近に控えた4月のある日、マンハッタン内の変電所の1つで巨大な“アークフラッシュ”(電気による爆発)が発生し、市バスの乗客を含めた複数の死傷者が出た。
それは偶然の事故ではなかった。何者かが変電所に忍び込んで細工し、電力会社のシステムに進入して、故意にアークフラッシュを起こしたのだ。
犯人の目的は果たして何か? 市バスか、乗客の誰かか、それとも電力会社に損害を与えることか、あるいは、テロか?
やがて犯人から脅迫状が届き、ニューヨーク市への送電を予告なしに50%削減することを要求する。だがそれはNYに大停電を引き起こし、損害は膨大なものとなると予想された。
FBI国土安全保障省の要請を受け、科学捜査の天才リンカーン・ライムと仲間たちが捜査に乗り出した。

しかし敵は電気を駆使して罠をしかけ、容易に尻尾をつかませず、第二の殺戮の時刻が容赦なく迫る。
一方でライムはもう一つの大事件を抱えていた。宿敵である天才犯罪者ウォッチメイカーがメキシコで目撃された。メキシコ捜査当局をサポートし、ウォッチメイカー逮捕作戦を進めながら、ニューヨークを人質にとる犯人を頭脳を駆使して追うリンカーン・ライム。
だが彼は絶体絶命の危機が迫っていることを知らない。
そして今回も衝撃的なドンデン返しが待ち受けている──。

今回のテーマは「電気」。
エジソンの時代から、いやもちろん実際には太古の昔からあるエネルギー、電気。それはまた、いつでも恐ろしい凶器に変身するものでもあるのだ。

それと、科学捜査とコンピュータ・ネットワークを駆使した犯人追跡(たとえばSIGINTシステムというのが出てくるが、このSIGINTとは電子信号の傍受による情報収集の傍受のことで、これを駆使して諜報活動を行っているのが世界最大のSIGINT機関、NSA(米国家安全保障局)といわれ、NSAなどの極秘の情報収集活動を内部告発したのがCIA(中央情報局)の元技術支援職員エドワード・スノーデン氏だった)なんかがたっぷりと描かれている一方で、やっぱり犯人逮捕の決め手となるのはライムの一瞬のひらめきであったり、FBIの潜入捜査官フレッド・デルレイのストリート活動(変装したりして行う街の中での情報収集)だったりすると、読んでいてナゼだかホッとする。

登場人物の1人の言葉。
「電気は愚かでもあり、素晴らしく賢くもあります。愚かだという理由は、一つの欲求しか知らないからです。生まれた瞬間、まっすぐ地面に還りたがるんですよ。賢いという理由は、地面に還る最良のルートを直感的に探し出すからです。もっとも抵抗の少ない通り道をちゃんと選択するんですよ」

最後の文章が美しい。