あらすじはというと──。
紀行作家の父から、マルキ・ド・サドをもじって名づけられた鳴木戸定。書籍編集者の定は、身なりに無関心、感情を表さずに人付き合いも機械的にこなす。
「ふくわらい」が唯一の趣味である彼女は、猪木になりきれなかったロートルプロレスラーのエッセイを担当することになってから、人との距離を少しずつ縮めていく。
「作品を書かせたかったら、今すぐ雨を降らせろ!」とダダをこねる作家の無茶な要望に応えて、出版社の屋上で雨乞いの儀式をしたり、街でナンパされた盲目のイタリア人(と日本人のハーフ)とつきあったりする中で、定が見つけたものとは──。
「ふくわらい」が唯一の趣味である彼女は、猪木になりきれなかったロートルプロレスラーのエッセイを担当することになってから、人との距離を少しずつ縮めていく。
「作品を書かせたかったら、今すぐ雨を降らせろ!」とダダをこねる作家の無茶な要望に応えて、出版社の屋上で雨乞いの儀式をしたり、街でナンパされた盲目のイタリア人(と日本人のハーフ)とつきあったりする中で、定が見つけたものとは──。
主人公が人肉を食べる話が出てくる。
それも2回。1回目はジャングルの奥の原住民の葬式で、2回目はやはりジャングルでワニに襲われて亡くなった父親の肉を。
食べた人肉の味まで具体的に書き記している。
作者は実際に食べたわけではないだろうから、ものすごい想像力だ。
それも2回。1回目はジャングルの奥の原住民の葬式で、2回目はやはりジャングルでワニに襲われて亡くなった父親の肉を。
食べた人肉の味まで具体的に書き記している。
作者は実際に食べたわけではないだろうから、ものすごい想像力だ。
想像力というか「妄想力」を相当持っている作家だな、ということは小説全体を読んでいても感じたが、ほっといたらパリで人肉事件を起こした“佐川くん”になりそうな話。
ほかにも目隠ししてセックスしたり、全裸になって新宿の歩行者天国を歩いたり、こう書くとアブナイ小説っぽいが、決してそんなことはない。むろん猟奇的でも、陰惨でもない。
ほかにも目隠ししてセックスしたり、全裸になって新宿の歩行者天国を歩いたり、こう書くとアブナイ小説っぽいが、決してそんなことはない。むろん猟奇的でも、陰惨でもない。
「ブラジャーは何回つけたら洗うか」とか、女の子っぽい会話も出てきたりしてホッとする。
全体としてとても清純で、主人公が人とのつながりによって自分を発見する、前向きな純愛小説といったらよいか。ということは孤独に生きている多くの読者に、「あなたはあなたなんだよ。自分らしく生きていいんだよ」と励ますメッセージも込められている気がして、読後はさわやかだった。