善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

#歴史

法隆寺-祈りとかたち

いつも展覧会に行くときに一瞬迷うのは、「見てから食べるか、食べてから見るか」。 つまり、午前中のすいているうちに見て、それからゆっくり昼メシにするか、逆に、さっさとお昼をすましてから午後にゆっくりと鑑賞するのがいいか。 ところが、展覧会は午…

ケルトを巡る旅

河合隼雄『ケルトを巡る旅-神話と伝説の地』(講談社プラスアルファ文庫) を読む。 キリスト教以前のヨーロッパに現存した民族がケルト人で、宗教、文学、美術など多岐にわたる文化を持っていた。キリスト教は一神教であるがゆえに排他的な側面を持ってい…

『枕草子』の歴史学

五味文彦『「枕草子」の歴史学 春は曙の謎を解く』(朝日新聞出版)を読む。 題名にひかれて手にとったが、「春は曙・・・」の書き出しとか、清少納言という女性の存在ぐらいは知っていても、『枕草子』なんか読んだことがなかった当方にとって、「へー」と…

キトラ古墳壁画

きのう、18日まで東京国立博物館で開催中の「特別展 キトラ古墳壁画」を観てきた。 中に入ると、ゆるキャラのトーハクくんとユリノキちゃんがお出迎え。 共催している朝日新聞がデジタル読者を対象に内覧会の参加者を募っていて、応募したら運よく当選した。…

日本国憲法の世界史的意義─「比較のなかの改憲論」を読む

辻村みよ子『比較のなかの改憲論──日本国憲法の位置』(岩波新書)を読む。 筆者は明治大学教授で憲法学者。 「96条先行改正論」が強まった2013年3月末以来、筆者は「比較憲法」の専門家ということで多くの取材依頼を受けたという。質問のほとんどは「外国の…

ミツバチの糞と特定秘密法

先日読んだトーマス・シーリー著の『ミツバチの会議』に興味深い記述があった。 カンボジア、ラオスで戦火が続いていた1981年、レーガン政権のヘイグ国務長官は同地域に“黄色い雨”が降り注ぎ、それは当時のソ連とその同盟軍による化学兵器の使用によるものだ…

シルクロードの古代都市

加藤九祚『シルクロードの古代都市──アムダリヤ遺跡の旅』(岩波新書) 中央アジア最大の川がアムダリヤ川。アフガニスタン領ヒンドゥクシュ山脈に源を発し、西の方に大きく蛇行しながら流れていって、元々はアラル海に注いでいたが、今は途中までで干上がっ…

犬の伊勢参り──人と犬の不思議な関係

仁科邦男『犬の伊勢参り』(平凡社新書) 人と犬の不思議な関係を説き明かす本。 「明和8年(1771)4月、犬が突如、単独で伊勢参りを始めた。以来、約100年にわたって伊勢参りする犬の目撃談が数多く残されている」 と本書の宣伝文句にある。えー?そんなこ…

タワーの文化史

河村英和『タワーの文化史』(丸善出版)を読む。 古来、人類は、より天高く人工物を築き上げることを夢みて試行錯誤を繰り返してきたという。その結果、古代のピラミッドから中世のゴシック聖堂の尖塔、近代のエッフェル塔、そして現代の東京スカイツリーや…

仏像の歩み 大黒さまは実は・・・

畠中光享『仏像の歩み』(春秋社)を読む。 筆者は日本画家でインド美術の研究者。 「インドをはじめネパール、チベット、中央アジア、スリランカ、東南アジア各地の仏像と仏教遺跡を40年にわたって現地調査し、その成果を120点におよぶ写真とともに、仏像の…

宮田昇 図書館に通う 米USISと図書館、そして原発

宮田昇『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』(みすず書房)を読む。 著者は編集者、翻訳権エージェントとして、出版界で60余年を生きてきたという大ベテラン。リタイア後、近所の公共図書館を利用するようになり、利用者の一人として図書館の役割、…

なぜ日銀本店は橋のたもとにあるのか?

先週の土曜日(1日)に日本橋川での船上コンサート「名橋たちの音を聴く」に参加して、辻康介さんの歌と太田光子さんのリコーダーの響きもすばらしかったけど、都市楽師プロジェクト主宰の鷲野宏さんの「建築解説」がおもしろかった。 昔は、建物の多くが川…

一四一七年、その一冊がすべてを変えた

スティーヴン・グリーンブラッド『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』(柏書房)を読む。 2012年のピューリッツアー賞ノンフィクション部門の受賞作。 原題は「The Swerve-how the world became modern」。 今からおよそ600年前の1417年、ある男が南ド…

千田稔 地名の巨人・吉田東伍

千田稔『地名の巨人 吉田東伍-大日本地名辞書の誕生-』(角川書店)を読む。 著者は歴史地理学の第一人者。平成15年に出版された古い本。 何で今ごろ読む気になったかというと、最近読んだ渡辺保の『明治演劇史』にこの本が紹介されていた。 吉田東伍といえば…

今野真二 百年前の日本語

今野真二『百年前の日本語──書きことばが揺れた時代』(岩波新書) 100年前といえば明治45年(1212)ごろだからちょうど明治から大正に変わるころ。 ということは明治維新からはすでに45年ぐらいたっている。 そのころの書き言葉はどうだったのかを夏目漱石…

現代台湾鬼譚─海を渡った「学校の怪談}

伊藤龍平・謝佳静『現代台湾鬼譚─海を渡った「学校の怪談」』(青弓社)を読む。 日本語の「幽霊」を意味する中国語「鬼」は、現代の台湾でどのように恐怖の対象になっているのか。 海を渡って日本から台湾に広まって台湾流にアレンジされたこっくりさんや「…

経済が政治を変える? 新しい左翼入門

松尾匡『新しい左翼入門 相克の運動史は超えられるのか』(講談社現代新書) 匡は「ただす」と読む。ご両親は飯沢匡のファンだったのかな? 別に左翼でも何でもないが興味本位で手にとった本。 松尾氏はマルクス経済学者で、久留米大学経済学部教授を経て08年…

地図で読む戦争の時代

今尾恵介『地図で読む戦争の時代』(白水社)を読む。副題に「描かれた日本、描かれなかった日本」とある。 白水社ってフランス文学専門かと思っていたら、こういう本も出しているんだね。 筆者は中学時代から地図や時刻表を眺めるのが趣味だったという。長…

高速道路と古代の道の共通点

近江俊秀『道が語る日本古代史』(朝日新聞出版)を読む。 図書館の新刊書コーナーで見つけた本。筆者は文化庁文化財部記念物課文化財調査官。 「記念物課」とは、いかにも文化庁らしい。要するに古墳とかの遺跡や名勝地、動植物などの天然記念物などを扱う…

「アレクサンドロス変相」と錬金術

朝の善福寺公園は曇り、風あり。 弁天島近くのクイの上で、ウが11羽も日向ぼっこしていた。 「アレクサンドロス変相 古代から中世イスラームへ」(山中由里子著、名古屋大学出版会)を読む。 アレクサンドロスといえば、紀元前4世紀の時代、10代のころに家庭…

海を渡ってきた南の民

このところサッカーばかり見ていていささか旧聞に属してしまったが、6月28日付朝日夕刊の「港川人、縄文人と似ず 顔立ち復元、独自の集団か」の記事が興味深かった。 沖縄で見つかった旧石器時代の人骨「港川人(みなとがわじん)」は、日本人のルーツではな…

玄奘三蔵、シルクロードを行く(最終回)

『玄奘三蔵、シルクロードを行く』を読んでの最終回。 本書における玄奘の旅は、ガンダーラの手前で終わっている。 その後、インド各地をまわり、再びシルクロードを経て故国に帰り着いたとき、玄奘46歳。出かけるときは密出国だったが、帰国の際は雲霞のよ…

玄奘三蔵、シルクロードを行く(そのまた続き)

「玄奘三蔵、シルクロードを行く」のそのまた続き。 やがて玄奘はバーミヤンに到着する。そのときの情景を本書はこう綴る。 「草を食(は)みながらゆるやかに動く羊の群れがあちこちに見える。左右の山並がぐっと低くなると眼前が大きくひらける。緑豊かな…

玄奘三蔵、シルクロードを行く(きのうの続き)

前田耕作著『玄奘三蔵、シルクロードを行く』(岩波新書)の続き。 それにしても玄奘はなぜインドに行くのにシルクロードをたどったのだろうか。 インドに行く別のルートとしては、今の青海省からチベットのラサを通り、ヒマラヤ山脈を越えていく道があった…

玄奘三蔵、シルクロードを行く

前田耕作著『玄奘三蔵、シルクロードを行く』(岩波新書)を読んでいる。まだ途中だが、『西遊記』のモデルともなった玄奘三蔵が、真理と学問探求のためシルクロードを通ってインドにわたる旅を、残された資料をもとに再現し、どんな道を通り、どんな人と出…