善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

海を渡ってきた南の民

このところサッカーばかり見ていていささか旧聞に属してしまったが、6月28日付朝日夕刊の「港川人、縄文人と似ず 顔立ち復元、独自の集団か」の記事が興味深かった。

沖縄で見つかった旧石器時代の人骨「港川人(みなとがわじん)」は、日本人のルーツではないかと騒がれたりしたが、港川人の再調査を進めている国立科学博物館(科博)が、顔立ちの復元図を作り直したところ、縄文人の祖先とされてきた従来のイメージとは大きく違っていて、「オーストラリアの先住民」という雰囲気、なんだそうだ。

当初は、顔の彫りが深く、手足が長いといった港川人の特徴が縄文人によく似ていることから「縄文人の祖先は南から渡ってきたのではないか」という説の大きな根拠になってきた。
その縄文人に、大陸から渡ってきた弥生人が融合して、日本人が形成されたと考えられてきた。
ところが、CTなど最新機器で詳しく調べると、横に広い縄文人の顔立ちとは相当に違っていて、現在の人類ならば、オーストラリア先住民やニューギニアの集団に近い、という。

縄文人の遺伝子を分析すると、シベリアなど北回りの集団、朝鮮半島経由の集団など多様なルーツのあることが見えてきているという。

これに加えて新たな復元図から考えると、港川人は本土の縄文人とは異なる集団であり、5万~1万年前の東南アジアやオーストラリアに広く分布していた集団から由来した可能性が高い、という。
しかし、その後、農耕文化を持った連中が東南アジアに広がった結果、港川人のような集団はオーストラリアなどに限定された、と考えられる、というのだが・・・。

ここまで読んできて、昔の記憶があざやかによみがえってきた。10年ほど前、ニュージーランドに旅行する機会があり、現地で聞いた話があった。

ニュージーランドの先住民はマオリ族といって、ラグビーの試合前にニュージーランドの選手(オールブラックス)がやる「ハカ」の踊りもマオリ族の踊り。

そのマオリ族が相手を威嚇するときにやるしぐさに「アカンベ」がある。
日本人にも同じ習慣があって、アカンベとは、赤目が転じてアカンベとなったんだそうだが、さらに舌の赤いところを見せて「オレは怒ってるんだぞ」と強調する。マオリ族のアカンベも全く同じで、ベーッと赤い舌を出して相手を威嚇する。

しかし、その後に聞いた話では、マオリ族の舌を出すしぐさは「あいさつ」のときで、親愛の情をあらわすしぐさという。そうなるとまるで意味は違ってくるが(たしかエリザベス女王が来たときにも舌を出すあいさつをしたとか・・・)
ドミニカ出身の投手ガルベスは投球の際、よく舌を出していたが、あれは威嚇のポーズなのか?

とにかくマオリ族の祖先は日本人と同じモンゴロイドだとの説があり、その昔、マオリ族の祖先が海流に乗って日本に流れ着き、日本人と同化したとの話もあるという。

アカンベは南太平洋伝来ともいえるわけだが、マオリ族のカヌーを使った航海術のうまさは昔から知られていて、伝説によれば、約1000年前、巨大なカヌーに乗って「ハワイキ」と呼ばれる伝説上の島から海を渡ってニュージーランドにやってきたといわれている。

そのマオリ族(あるいはオーストラリア先住民のアボリジニかもしれないが)が島づたいに沖縄にやってきて、はたしてその後、どうなったのか・・・。結局、農耕文化には勝てなかったのだろうか?
でも、せっかく沖縄までやってきたのなら、多少はわれわれの中に混じっているのではないか?