善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「フリーダム・ライターズ」ほか

チリの赤ワイン「マプ・レゼルヴァ・メルロ(MAPU RESERVA MERLOT)2021」

ボルドーワインの最高峰、メドック格付け第一級シャトー・ムートン・ロスチャイルドがチリで手がけるワイン。

スパイシーかつまろやかな味わいのメルロ100%。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「フリーダム・ライターズ」。

2007年の作品。

原題も「FREEDOM WRITERS」

監督・脚本リチャード・ラグラベネーズ、出演ヒラリー・スワンクパトリック・デンプシー、スコット・グレン、イメルダ・スタウントン、エイプリル・リー・ヘルナンデス、マリオほか。

 

オスカー女優のヒラリー・スワンクは、脚本を読んだ途端にこの役に惚れ込み、主役を演じるとともに製作総指揮を買って出たという。

実在する英語教師エリン・グルーウェルとその生徒たちによる同名ベストセラーをもとに、ロス暴動(1992年4~5月にかけてロサンゼルスで起こった黒人やヒスパニック系住民による暴動・略奪事件)直後の荒廃した高校に通う若者たちと、“書くこと”を通して彼らに希望を抱かせようとする教師の姿を描く学園ドラマ。

 

ロス暴動後の1994年、ロサンゼルス郊外にあるウィルソン公立高校。低所得者層の多いこの地域では、貧困による憎悪と犯罪の中、15歳にして出口のない日々を送る子どもたちは、卒業まで"生きて"いられればそれで十分と思っていた。荒れ果てた教室では授業もままならず、ほとんどの教師たちは彼らを見捨てていた。

荒れ放題のクラスを受け持つことになった新人英語教師・エリン・グルーウェルエリン(ヒラリー・スワンク)は、人種ごとにいがみ合い、授業を受ける気などさらさらない生徒たちを相手に、授業の進め方に苦心する。

ある日の授業中、ラテンアメリカ系の生徒が黒人の生徒をバカにした絵を描いてみんなに回す。エリンはその絵を見て、第2次世界大戦のホロコーストがこうした差別から生まれたことを説明するが、生徒たちは理解ができない。

エリンは「アンネの日記」を教材にしようとするが、予算の無駄と拒否されてしまう。そこで彼女は、毎日何でもいいから日記を書くようにと自費で買ったノートを1冊ずつ配る。点数はつけず、読んでほしい場合は特別な戸棚に入れるように指示すると、たくさんのノートが戸棚に入っていた。エリンは日記を通して生徒たちと心を通わせ、生徒たちも悲観的だった将来を見直していく。

やがて、生徒たちが書いた日記は1冊の本として出版され、ベストセラーとなる・・・。

 

製作にあたったスタッフがいいコメントを残している。

監督のリチャード・ラグラヴェネーズは次のように述べる。

「子どもたちは銃の替わりにペンを持つことを覚えた。書くことで彼らは救われた」

プロデューサーの1人、ステイシー・シェアはこう語っている。

「この話を映画化したいと思ったのは、たった1人の人間でも大きな変化を起こせるということを伝えたかったから。エリン・グルーウェルも最初はほかの誰とも変わらない普通の新米教師だった。でも、やむにやまれぬ情熱で前進し、子どもたちと対峙することで、素晴らしい成果をあげることができた」

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していた日本映画「他人の顔」。

1966年の作品。

監督・勅使河原宏、原作/脚色・安部公房、音楽・武満徹、美術・磯崎新山崎正夫、出演・仲代達矢京マチ子平幹二朗岸田今日子岡田英次市原悦子、入江美樹ほか。

 

1964年の「砂の女」に続き安部公房が原作・脚色し、勅使河原宏が監督。

 

新設工場を点検中、手違いから顔に大火傷を負い、頭と顔を包帯ですっかり覆われた会社重役の男(仲代達矢)。彼は顔を失うと同時に妻(京マチ子)や共同経営者の専務や秘書らの対人関係をも失ったと考えた。彼は妻にまで拒絶され、人間関係に失望し異常なほど疑い深くなった。そこで彼は顔を全く変え他人の顔になって自分の妻を誘惑しようと考えた。病院を尋ねると精神科医平幹二朗)は仮面に実験的興味を感じ、彼に以後の全行動の報告を誓わせて仮面作成を引受ける・・・。

 

安部公房の小説「他人の顔」(1964年)は、「顔」によって「私」が誰かを示し続けることを要求される現代社会において、顔の喪失は何をもたらすのかを問う作品だった。

「ぼく」という名前で登場する主人公は、人間がいかに顔に囚われているかを明らかにする。そして、仮面を身につけ街に出た「ぼく」は、世界全体が「監獄」であり、人々はみな、その囚人なのだと考えるようになる。

自分と同じように「顔」のために疎外されている朝鮮人や黒人、ヒロシマ被爆した少女に共感を寄せる一方で、違う自分も感じる。「顔」というものに関わって生きている人間という存在の不安定さ、あいまいさ・・・。

 

原作同様、映画も一筋縄ではいかない内容で、考えさせられた。

題字は宏の父親の勅使河原蒼風。親心で引き受けたのか。

当時35歳、丹下健三から独立して自分のアトリエを持ったばかりの建築家、磯崎新によると思われる病院内のデザインがなかなか斬新。

ケロイドの少女を演じた入江美樹は本作の2年後に指揮者の小沢征爾と結婚する。

前田美波里が酒場の歌手で出てくるが、このときまだ18歳(映画と同じ年の夏、資生堂の化粧品の宣伝ポスターに起用されるが、新しい時代を予感させるポスターだった)。

京マチ子のベッドシーンが強烈!などなど、いろいろ語りぐさになる映画だった。