善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「不死身の保安官」「大逆転」他

ふだんは日本酒だが、たまに飲むワイン。

きのう飲んだのはイタリア・プーリアの赤ワイン「ネプリカ・プリミティーヴォ(NEPRICA PRIMITIVO)2021」

(写真はこのあと牛ステーキ)

1385年にトスカーナで創設されたイタリアの老舗ワイナリー・アンティノリが、イタリア南部のアドリア海に面するプーリア州で手がけるワイン。

プーリア州の代表的なブドウ品種プリミティーヴォ100%。

ブルーベリーと木イチゴの香味豊かな口当たりよい上品さが魅力だとかで、ほどよい渋みと酸味によるバランスのとれた飲み心地。

 

ワインの友で観たのは、NHKBSで放送していたイギリス・アメリカ合作の映画「不死身の保安官」。

1958年の作品。

原題「THE SHERIFF OF FRACTURED JAW」

監督ラオール・ウォルシュ、出演ケネス・モア、ジェーン・マンスフィールド、ヘンリー・ハルほか。

19世紀のなかば。イギリスの上流階級で伯父の銃器販売を手伝っているジョナサン(ケネス・モア)は、商売よりも発明が大好きの天然男。今も、馬のない馬車の発明に躍起になっているが、真面目に仕事をしないと勘当といわれて、販路拡大のためアメリカ西部に出かけていく。

途中、インディアン(先住民)の酋長と仲よくなったりして、たどり着いたのは、2つの牧場が対立する無法の町。彼の会社の発明品の秘密兵器(スリーブガンと呼ばれる袖に仕込んだ小型拳銃デリンジャー)で酔っぱらいをやっつけたことから凄腕のガンマンと間違えられ、町長から保安官に任命されてしまう。

さらに、酒場のセクシーな女主人ケイト(ジェーン・マンスフィールド)にも気に入られ・・・。

 

ジェームズ・ギャグニー主演のギャング映画「白熱」やゲーリー・クーパー主演の歴史映画「遠い太鼓」のほか、西部劇やミュージカルなども手がけたラオール・ウォルシュ監督によるコメディ西部劇。彼はいろんなジャンルを手がける“職人監督”といわれ、こんなお気楽映画もつくっていた。

原題の「THE SHERIFF OF FRACTURED JAW」とは、直訳すれば「骨折した顎の保安官」となり、何のこっちゃ?それで邦題も顎の骨が砕けても頑張る保安官というので「不死身の保安官」としたのか?と思ったら、「FRACTURED JAW」とは地名で、「フラクチャード・ジョーという名の町の保安官」というのが題名。

 

ヒロインのジェーン・マンスフィールドはこの映画のとき25歳で、ハリウッドデビューから5作目目の主演作品。マリリン・モンローとともに“セックス・シンボル”といわれた人で、いわゆる「ブロンドの悩殺美女(ちなみにスリーサイズは102・53・89㎝だったとか)」として人気だったが、34歳のときに交通事故で亡くなっている。

映画の中でのマンスフィールドの歌と踊りを見るとそのウェストの細さに目を見張る。しかし、歌ってる声は彼女の声ではなく、実際にはコニー・フランシスが歌っていたのだが、クレジットに彼女の名はなかった。

この映画のときのコニー・フランシスは歌手デビューしたばかりの20歳。まだ下積みの時代で、映画の歌唱シーンでの吹き替えを担当していたようだが、やがてポップスの女王になる。日本でも人気絶大で、「ヴァケイション」とか「可愛いベイビー」など日本語カバーの曲も多い。

本作はロケ地がアメリカの西部ではなく、スペインの荒れ地で撮影された点でも先駆的だった。この映画から刺激を受けたのか、60年代に入ってマカロニウエスタンがスペインで撮影されるようになる。

 

袖(スリーブ)の下に隠したスリーブガンが登場しているのも先駆的といえるかもしれない。マーティン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」(1976年)とかクエンティン・タランティーノ監督の「ジャンゴ 繋がれざる者」なんかでもスリーブガンが登場しているが、ひょっとして本作からヒントを得たのかも?

映画の最後では、ジョナサンとケイトがめでたく結婚し、花嫁の父親代わりとしてインディアンの酋長が結婚式に参列して、人種なんて関係ないよ、と大団円になるところがいい。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「大逆転」。

1983年の作品。

原題「TRADING PLACES」

監督ジョン・ランディス、出演ダン・エイクロイドエディ・マーフィ、ラルフ・ベラミー、ドン・アメチ、ジェイミー・リー・力ーティスほか。

 

大富豪の非人間的ないたずらで天国と地獄を味わった2人の男が、大富豪に復讐するまでを描く痛快コメディ。

商品先物会社を経営する大金持ちの兄ランドルフ(ラルフ・ベラミー)と弟モーティマー(ドン・アメチ)のデューク兄弟は、「黒ん坊は生まれついての犯罪者」、「あんな黒ん坊に会社を任せられない」と発言する人種差別主義者。

その2人が「人間、出世するのは血統か環境か」で意見が別れ、社内で指折りのエリートでハーバード大学出身のウィンソープ(ダン・エイクロイド)と、ホラ吹きの黒人ホームレスのバレンタイン(エディ・マーフィ)の立場をすり替えてどんな結果になるか、1ドルで賭けを始める。

ウィンソープは会社をクビになり、婚約者に見捨てられ、帰る家も失い、娼婦の家に転がり込む。一方、バレンタインは拘置所にいるところをデューク兄弟に保釈金を払ってもらい、デューク兄弟の会社に入社してウィンソープの後釜に就き、独特の相場観で名をあげていく。

酒におぼれ、デューク兄弟の会社に侵入し人に銃を向けるまでに落ちぶれてしまったウィンソープの姿を見て、賭けの結果を確認したデューク兄弟は、再びウィンソープとバレンタインの立場を入れ替え元に戻そうとするが、偶然真相を立ち聞きしたのがバレンタイン。ウィンソープと2人して、兄弟に復讐を開始する・・・。

 

デューク兄弟がやっているサギまがいの商品先物取引の世界が、いかに濡れ手で粟のあぶくゼニの世界かがよく分かる映画。

彼らは額に汗して働いているわけでも、苦労して何かをつくり出しているわけでもない。ただカネを転がすだけで巨額の富を懐にしようとしていて、だからまた、人間を人間として見ようとしない人種差別主義者であり、貧富の格差は当然という偏屈な保守主義者でもあった。

2人のデスクに敬愛する人物としてニクソンレーガン(いずれも元共和党の大統領)の写真が飾ってあるシーンがあったが、監督の皮肉を込めた演出なのだろう。

ただし、最低だったのが日本語字幕。

本作のキモは、デューク兄弟が人種差別主義者であり、黒人を人間として見ようとしないところから物語が始まっているのに、セリフで「ニグロなんかだめに決まっている」というところを日本語字幕では「ニグロ」ではなく「クズ」などとごまかしている。

いったいだれに、何に忖度してあんな字幕になったのだろうか?

 

民放のBSで放送していた韓国映画「詩人の恋」。

2017年の作品。

原題も同じような意味の韓国語。

監督キム・ヤンヒ、出演ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・ガラムほか。

 

済州島に生まれ育った30代後半の詩人テッキ(ヤン・イクチュン)は、生計のため小学校で子どもたちに詩作を教えているが給料は安く、妻のガンスン(チョン・ヘジン)が家計を支えている。妻は子どもを望んでいるが、彼は気が乗らない。しかし、ついに産科検診を受けると、精子の数が極端に少なく元気もなさそうな「乏精子症」と診断され、ますます自信を喪失してしまう。

詩も浮かばずに思い悩むテッキは、ある日、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユン(チョン・ガラム)と出会う。セユンのつぶやきをきっかけに新しい詩の世界を広げることができたテッキは、セユンについてもっと知りたいと、接近していくが・・・。

 

セユンは、恵まれない家庭で育ち孤独を抱える青年だった。そんなセユンを“守ってあげたい”という思うようになるテッキ。やがて同情心はときめきに変わっていくのだが、“詩人の恋”であっても“愛”ではないところが、もどかしいというか、物語の落ち着き先として無難というべきか・・・。