フランス・ローヌの赤ワイン「コート・デュ・ローヌ(COTES DU RHONE)2023」

ローヌ地方はフランスの中でもボルドーに次ぐ生産量を誇り、南フランスを代表する生産地。地中海に注ぐローヌ河に沿って数々の銘醸地が連なるが、ローヌ地方南部に位置するジコンタスのワイナリーがシャトー・ド・サン・コム。
500年の歴史を持つワイナリーで、ワイナリー名はジコンタスにある12世紀に建てられた礼拝堂サンコムチャペルに由来しているのだとか。
シラー100%でフレッシュな果実味が魅力の1本。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたアメリカ映画「きみの帰る場所/アントワン・フィッシャー」。
2002年の作品。
原題「ANTWONE FISHER」
監督・製作デンゼル・ワシントン、脚本アントワン・フィッシャー、音楽マイケル・ダナ、撮影フィリップ・ルースロ、出演デレク・ルーク、デンゼル・ワシントン、ジョイ・ブライアント、サリー・リチャードソン、ヴィオラ・デイヴィスほか。

壮絶な過去を持つ黒人青年がトラウマと向き合い克服していく心の旅を、モデルとなった本人の脚本執筆により映画化。
アメリカ海軍の新人水兵アントワン・フィッシャー(デレク・ルーク)は、ちょっとしたことですぐカッとなり喧嘩を始める短気な性格で、ついに上官から精神科のカウンセリングを受けるよう命じられる。
基地内所属の精神科医ジェローム・ダヴェンポート中佐(デンゼル・ワシントン)は来院したアントワンに、自分自身や家族のことについて話すよう促す。アントワンの気が短く怒りっぽい性格は、彼の生い立ちに何らかの原因があると考えたのだ。
頑なに口を閉ざすアントワンに、我慢強く接するダヴェンポート。やがてアントワンは、生みの親を知らずに孤児院で育ったこと、里子に出された家で受けた耐え難い虐待の記憶を語り始める。
アントワンは、想いを寄せている基地内の書店で働くシェリル・スモーレイ(ジョイ・ブライアント)とも心を通わせるようになる・・・。
本作はデンゼル・ワシントンの初監督作品。
しかも、いろんな偶然が重なり、実った作品でもあった。
最初の偶然は原作者と映画プロデューサーとの出会い。
本作は実在の人物アントワン・フィッシャーの自伝が元になっているが、映画プロデューサのトッド・ブラックがこの映画を製作しようと思い立ったのは、フィッシャー本人がソニー・ピクチャーズ・スタジオで警備員をしていて、彼から身の上話を聞いたのがきっかけだった。
フィッシャーは警備員として働くかたわら執筆活動を行っていて、2001年に自伝的著書「FINDIING FISH」を出版。それとともに彼はカリフォルニア州にあるペテルAM教会が行っていた無料の脚本教室を受講し、映画化が決まると脚本の執筆も彼が担当するようになる。
さらにフィッシャーは、ソニー・ピクチャーズ・スタジオのギフトショップで働いていた新人俳優デレク・ルークを知っていて、彼に自分の役に挑戦するよう勧めたという。
ルークがキャスティングディレクターのオーディションを受けたところOKが出て、次に監督のワシントンに会うために呼ばれた。ワシントンは自身初の監督作品であるだけに意欲満々で、しかも彼は若い世代の黒人俳優にブレイクする機会を与えたいと考えていたところだった。
ワシントンはルークを気に入り、主役に抜擢。本作がルークの映画デビュー作品となった。
ヒロインの役を演じたジョイ・ブライアントも、モデルとして活躍していたが2001年にテレビ映画に出演して女優活動を始めたばかり。
2人の初々しい演技に好感を持てた。
刑務所でアントワンを産み、その後ずっと行方がわからなかった産みの母が映画の最後のところ再会シーンで少しだけ出てくるが、母を演じたのはヴィオラ・デイヴィス。
本作のあと彼女は大ブレイクし、2010年代にアカデミー賞、エミー賞、トニー賞を受賞し演劇の三冠王を達成。彼女が出演しアカデミー助演女優賞を受賞した「フェンス」(2016年)の監督・主演もデンゼル・ワシントンだった。
本作のもう一人の主役といっていいのが監督をしたデンゼル・ワシントンだろう。
アントワンは両親を知らずに育ち、2歳のとき、同じ黒人家庭の養子となったが、その家の夫人は彼を「クロ」と蔑みの言葉を乱発して肉体的・精神的に虐待した。
同じ黒人なのに、なぜ彼は夫人からそんなひどい虐待を受けたのか。ワシントン演じる精神科医ダベンポートは、アントワンに本を読むよう勧める。
それはアメリカの歴史家であり、アメリカにおける奴隷制研究の先駆者の一人であるジョン・W・ブラッシンゲームの「奴隷コミュニティ」(1972年)という著作だった。アメリカ南部の奴隷制についての歴史研究の本だったが、奴隷制の歴史を見直すことで黒人差別がいかに生まれたかを学び、それによって里子に対する虐待がなぜ生まれたかを理解することもできる、とダベンポートはいってるのだった。
本作はまた、虐待の記憶から脱するためのアントワンの“心の旅”の物語だが、同時にダベンポートの“再生”の物語でもあった。
実はダベンポート自身、悩みを抱えていて、それは彼と妻が子どもを産むことができなかったため、夫婦の間に溝ができていることだった。
しかし、アントワンを治療する中で夫婦は再び信頼関係を取り戻すことができ、ダベンポートはアントワンに「感謝すべきは自分だ」と答えるのだった。
人を救うことは自分をも救う。
日本のことわざにもいう。
「情けは人のためならず」
ついでにその前に観た映画。
1970年の作品。
原題「TWO MULES FOR SISTER SARA」
監督ドン・シーゲル、原案バッド・ベティカー、脚本アルバート・マルツ、撮影ガブリエル・フィゲロア、音楽エンニオ・モリコーネ、出演クリント・イーストウッド、シャーリー・マクレーン、マノロ・ファブレガスほか。

メキシコ舞台にシャーリー・マクレーンとクリント・イーストウッドの珍道中アクション西部劇。
アメリカ南北戦争の直後、メキシコはフランスの支配下にあった。元北軍兵士だった流れ者のホーガン(クリント・イーストウッド)は、革命軍と手を組みフランス軍から軍資金を強奪しようとメキシコにやってくるが、暴漢に襲われた尼僧のサラ(シャーリー・マクレーン)を救う。
サラもまた革命軍を支援していて、たまたま数日後はフランスの革命記念日なので仏兵たちはお祭り騒ぎで泥酔するに違いない。そこに襲撃をかけると決めた2人は、味方の革命軍ゲリラと合流するため、一緒に旅をすることに。
道中には、数々の困難が待ち受けていた・・・。
「マンハッタン無宿」で初めてコンビを組んだドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドの2作目。西部劇というよりマカロニウエスタンの雰囲気で、音楽は哀愁を帯びたエンニオ・モリコーネ。
イーストウッドはテレビドラマ「ローハイド」で人気を得て、その後イタリアに渡ってマカロニウエスタンで一時代を築く。「荒野の用心棒」(1964年)「夕陽のガンマン」(1965年)などのあと、ハリウッドに凱旋して撮ったマカロニウエスタンふう西部劇が本作。
髭ヅラで無愛想でマカロニウエスタンのときと変わらぬ風貌はいかにも流れ者のガンマンのイメージぴったりだが、意表をつくのが相手役のシャーリー・マクレーン。
本作の時点で彼女はすでにアカデミー賞主演女優賞に3度ノミネートされていて実績のある大女優だった。透き通るほどの白い肌に、どちらかというと都会のお嬢さんという雰囲気で、メキシコを舞台にした西部劇には似合わないのでは?と思って見始めたが、むしろイーストウッドを食っちゃうような演技だった。
それにしてもなぜシャーリー・マクレーンがマカロニウエスタンふう西部劇に出演するに至ったのか?
もともと本作は、映画監督のバッド・ベティカーがロバート・ミッチャムとデボラ・カー主演の映画として企画したものだった。ミッチャム演じるカウボーイとデボラ・カー演じる尼僧が惹かれ合うストーリーで、尼僧の正体は革命軍からアメリカに逃れてきたメキシコ人貴族という設定だったという。
一方、映画会社が尼僧役の候補にあげたのはエリザベス・テイラー。たしかにエキゾチックな美貌の彼女ならメキシコの尼僧役にはピッタリだ。
そして相手役は「荒鷲の要塞」(1968年)でエリザベス・テイラーの夫リチャード・バートンと共演したクリント・イーストウッドだった。
テイラーも一旦は出演をOKしたが、バートンに同行して撮影地のスペインに行くことになっていて、本作もスペインでの撮影を希望。それが実現せず、テイラーは出演を断ってしまう。
そこで、テイラーに匹敵するスターとしてキャスティングされたのがシャーリー・マクレーンだったというわけだ。
しかし、シャーリー・マクレーンではとてもメキシコ人には見えない。そこで「アメリカからメキシコにやってきた尼僧のふりをした娼婦」という設定に書き直されたんだとか。
原題の「TWO MULES FOR SISTER SARA」は「シスター・サラと2頭のロバ」の意。映画ではシスター・サラは1頭のロバにしか乗ってないが、もう1頭のロバは一緒に旅した流れ者のホーガンというわけなのだろう。
見ていておかしかったのが、シスター・サラがロバに乗って進んでいくとき、ロバのお尻を小刻みにピシャピシャ叩き続けているところ。
ロバはお尻を叩き続けないと前に進んでいかないのだろうか。
民放のCSで放送していたアメリカ映画「2つの頭脳を持つ男」。
1983年の作品。
原題「THE MAN WITH TWO BRAINS」
監督カール・ライナー、脚本カール・ライナー、スティーヴ・マーティン、ジョージ・ガイブ、音楽ジョエル・ゴールドスミス、撮影マイケル・チャップマン、出演スティーヴ・マーティン、キャスリーン・ターナー、デビッド・ワーナー、シシー・スペイセク(声のみ)ほか。

度々タッグを組んだカール・ライナー監督と人気コメディアンのスティーヴ・マーティンのコンビによるブラックコメディ映画。
脳外科の世界的名医ハフハハール(スティーヴ・マーティン)は、愛妻レベッカの死から立ち直れずにいた。そんなある日、美しい女性ドロレス(キャスリーン・ターナー)にひと目惚れしたハフハハールは彼女と結婚するが、実はドロレスは財産目当てで男と結婚して死に追いやる悪女だった。
自身の持つ豪邸でドロレスとの新婚生活を送るうち、次第に彼女の傲慢さが目についてくる。その上、夜の営みを拒み続けるドロレスに対して彼の欲求不満は爆発寸前。そんなハフハハールを見かねた上司の計らいで出張のためオーストリアへ妻とともに旅行にでかける。
そこでハフハハールは、脳移植の権威ネセシスター博士(デビッド・ワーナー)と出会い、博士の研究室にあった心優しい女性の脳“アン・アールメヘイ”(声の出演シシー・スペイセク)に恋心を抱いてしまう・・・。
実にバカバカしい展開なんだが、それなりにリアリティが感じられて、ゲラゲラ笑って見る楽しい作品だった。暑気払いにぴったりの映画で、コメディはこれぐらい荒唐無稽じゃないと。