善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「フェンス」他

イタリア・ピエモンテの赤ワイン「フュロット・バルベラ・ダスティ(FIULOT BARBERA D’ASTI)2020」f:id:macchi105:20220227110835j:plain

1385年からの歴史を持つというアンティノリがイタリア北西部のピエモンテで手がける老舗ワイナリー・プルノットの赤ワイン。

土着品種であるバルベラ100%。

ほのかなミネラルと渋みが心地よい1本。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「フェンス」。

2016年の作品。

監督・製作・主演デンゼル・ワシントン、出演ヴィオラ・デイヴィス、ステーヴン・ヘンダーソンほか。f:id:macchi105:20220227111011p:plain

アフリカ系アメリカ人の劇作家オーガスト・ウィルソンの同名戯曲が原作。1987年にブロードウェーで初演され、米演劇界最高の栄誉であるトニー賞の作品賞、主演男優賞(ジェームズ・アール・ジョーンズ)を含む4部門で受賞し、ピュリツァー賞(戯曲部門)にも輝いた。デンゼル・ワシントンが主演の2010年の再演でもトニー賞リバイバル作品賞のほか、ワシントンが主演男優賞、妻役のヴィオラ・デイヴィスが主演女優賞をそれぞれ受賞。今回の映画化にあたってはワシントンが自ら監督を務め、ワシントン始め再演舞台に出演した俳優たちがほぼ全員同じ役を演じたという。

 

1950年代のアメリカ・ピッツバーグ。市のごみ収集の仕事に従事する男性トロイはかつてプロ野球選手だったが、メジャーリーグに行けなかったのは自分が黒人であるため差別されたからだと恨み続けていた。

息子のコーリーは高校のアメリカン・フットボール部で活躍しているが、トロイはアルバイトよりも部活動を優先する息子を許さず、大学からきているスカウトの話も認めようとしない。

「黒人は倍の実力が必要だ」「白人はおまえに活躍なんかさせないから、手に職をつけろ。そうすれば他人のゴミを集めなくてすむ」と頑固にいい張るトロイ。

差別のために夢をあきらめた自分自身の無念と怒り。息子に自分のような思いをさせたくないという親心。同時にそこには、息子が父親である自分を乗り越えていくことへの嫉妬もあり、トロイは二重・三重の苦悩にあえぎ屈折した思いでいるのだった。

題名の「フェンス」は、直接的にはトロイが自宅の境界につくっているフェンスをいっているが、人種の壁、夫婦の壁、家族の壁をも意味しているのだろう。

 

もともとブロードウェイの舞台だっただけに、早口の長セリフが次々に飛び出し、英語の勉強にはいいかもと思いながら見ていくが、頑固で横暴で身勝手な男トロイは映画の始めから終りまでまったく変わらず、頑固で横暴で身勝手なまま、急な病で死んでいく。

だが、なぜかそんな彼の生き方に涙が出てくるのだ。

頑固で横暴で身勝手でも、苦悩を抱えながら家族のために働いてきた彼の人生に強い共感を覚えるのだった。

 

この映画はアカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞と4部門でノミネートされ、トロイの妻を演じたヴィオラ・デイヴィス助演女優賞に輝いた。

それなのに日本では劇場未公開。黒人ばかり出てきて、ハデなアクションもない映画では客が入らないから儲からない、映画は文化なんかではなく金儲けのための興行にすぎないんだから、と配給側は思ったのだろうか?

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「ドク・ホリディ」。

1971年の作品。

原題「DOC」

監督フランク・ペリー、脚本ピート・ハミル、出演ステイシー・キーチフェイ・ダナウェイ、ハリス・ユーリン、マイク・ウィットニーほか。

 

OK牧場の決闘に至るワイアット・アープとドク・ホリディVSクラントン一家の物語だが、主役はドク・ホリディ。

親友ワイアット・アープ(ハリス・ユーリン)に呼ばれてトゥームストンへ向かうドク・ホリデイ(ステイシー・キーチ)は、途中酒場でしつこく娼婦を抱きよせて酒を呑んでいるカウボーイを見て、娼婦を賭けてバクチをやろうともちかけ、見事に女を奪った。これがアイク・クラントン(マイク・ウィットニー)との宿命的な出会いだった。その娼婦ケイト(フェイ・ダナウェイ)を連れて入ったトゥームストンは活況を呈していた。この町の司法執行官ワイアット・アープは、町の民選保安官選挙にうってでて、町を牛耳り甘い汁を吸おうという野心のため、ドクを呼び寄せたのだった・・・。

 

西部劇だが、かつての、ヒーローが活躍する昔懐かしい西部劇とはかなり違っていて、「史実に忠実に、しかも1970年代の目で見つめた映画」という。

この映画がつくられるに当たってはマカロニ・ウエスタンの影響が強くあっただろう。

1960年代前半から登場し世界を席巻したマカロニ・ウエスタンは、ジョン・ウエインなんかが演じていた正義の味方で情にもろい往年のハリウッドのヒーローとはまるで違う、ニヒルで孤独で冷酷で、ときとして「悪」の一面を持つヒーローのスタイルを確立し、それまでの西部劇を駆逐してしまった。

つまり、マカロニ・ウェスタンの登場で西部劇は終わってしまったのが、その幕引き役となったのがテレビ映画「ローハイド」で頼りなさげな青二才役を演じていたクリント・イーストウッドだったのが興味深い。

とにかくマカロニ・ウエスタン以降、ハリウッドがつくる西部劇はリアリズムかニューシネマ風になっていって、本作もその流れによるものだろう。

 

脚本のピート・ハミル山田洋次監督の映画「幸福の黄色いハンカチ」の原作者としても知られる。

 

民放のBSで放送していたアメリカ映画「マーウェン」。

2018年の作品。

監督ロバート・ゼメキス、出演スティーヴ・カレルレスリー・マン、メリット・ウェヴァー、ジャネール・モネイほか。

 

実話にもとづく映画という。

5人の男たちから暴行を受け、瀕死の重傷を負ったマーク・ホーガンキャンプ(スティーヴ・カレル)。昏睡状態から目覚めた彼は、自分の名前も覚えておらず、歩くこともままならない状態だった。脳に障害を抱え、PTSDにも苦しむマークは、リハビリのためフィギュアの撮影を始め、自分や友人たち、そして自分を襲った男たちを模した人形を使って空想の村・マーウェンをつくる。マーウェンの中では、G.I.ジョーのホーギー大佐と5人のバービー人形がナチス親衛隊と日々戦いを繰り広げ、その様子を撮影したマークの写真は次第に評価され、やがて個展が開かれることになるが・・・。

 

映画の冒頭、第2次世界大戦での戦闘機が草地に不時着するシーンが出てきて、CGにしてはずいぶん幼稚でちゃちだなー、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のゼメキス監督なのにお金がなくて予算をケチったのかなーと思って見ていくと、実は主人公がフィギュアを動かして撮影した動画のシーンで、わざとちゃちっぽく映しているのだとわかった。

よくよく見るとバービー人形がしゃべり出したりして、顔は生きているホンモノそっくり(というよりホンモノ)で、手足は作り物。なかなか高度なCGのテクニックを駆使しているみたいだった。