善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+「スイング・ホテル」「グッバイガール」

チリの赤ワイン「モンテス・リミテッド・セレクション・ピノ・ノワール」(MONTES LIMITED SELECTION PINOT NOIR)2023」

ピノ・ノワール100%。もともとモンテスの当主が趣味半分、実験的につくっていたワインで、年間生産量が約4500ケースという希少品だとか。

ボトルに描かれている天使の由来は、創業者の一人が交通事故から奇跡的に助かった際、天使の存在を感じたことがきっかけとなり、以来、天使はモンテスのシンボルとなっているという。

ブドウ畑は、アンデス山脈の最高峰アコンカグア(6960・8m)のふもとに広がっている。

 

ワインの友で観たのは、U-NEXTで公開中のアメリカ映画「スイング・ホテル」。

1942年の作品。

原題「HOLIDAY INN」

監督・製作マーク・サンドリッチ、脚本エルマー・ライス、クロード・ビニヨン、音楽アーヴィング・バーリンロバート・エメット・ドーラン音楽監督)、ダンス振付ダニー・デーア、撮影デイヴィッド・エーベル、出演ビング・クロスビーフレッド・アステアマージョリー・レイノルズ、ヴァージニア・デールほか。

劇中歌の「ホワイト・クリスマス」が今も世界中で歌われているが、初共演のビング・クロスビーフレッド・アステアの歌と踊りが堪能できる音楽映画。

 

歌のうまいジム(ビング・クロスビー)とダンスの上手なテッド(フレッド・アステア)は、ライラ(ヴァージニア・デール)と3人組でニューヨークのナイトクラブに出演していた。ジムは、ライラと結婚して芸人から足を洗い、コネチカット州のミドヴィルで農場生活を始めようとしたが、クリスマス・イブの夜、ショー・ビジネスを諦めきれないライラはジムと別れ、テッドと組んで仕事を続けることにする。

悲嘆に暮れたジムはひとり農場へと旅立ち、1年後、家を改造して祭日だけフロア・ショウを行うホテル「ホリデイ・イン」をオープン。

そこへ花屋の店員をしていたダンサー志望のリンダ(マージョリー・レイノルズ)がやってきて、ジムの歌とリンダの踊りが大評判となる。2人の間には恋が芽生えるが、テキサスの大金持ちのもとに走ったライラと別れたテッドが応援に駆けつけてきて、テッドもリンダが好きになり、また新たな恋愛合戦が・・・。

 

本作は第2次世界大戦の最中につくられた映画。

撮影は1941年11月から翌年2月まで行われたというが、当時は第2次世界大戦の真っ只中で、日本軍が真珠湾を奇襲攻撃して太平洋でも戦争が始まったのが1941年12月8日。映画の公開は翌1942年8月だが、この年の6月にミッドウェー海戦、8月にはガダルカナル島の戦いが始まり、アメリカ軍が太平洋での戦闘の優位に立とうとしているころ。

そんな戦争が激しいときに歌って踊って、甘いラブロマンスのロマンチック・コメディ・ミュージカル映画をつくっている。

もちろん映画の途中には、巧みにアメリカ軍の勇ましい姿やルーズベルト大統領の写真なんかも挿入されて戦意高揚の場面もあったが、娯楽作品として楽しめる内容だった。

ちなみにこの年(1942年)の日本映画のベストワン(キネマ旬報ベストテンの第1位)は、海軍省が企画し、開戦一周年記念映画として日本の大勝利を称賛しようとつくられた山本嘉次郎監督の「ハワイ・マレー沖海戦」だった。

 

ビング・クロスビーが甘い声で歌う「ホワイト・クリスマス」にうっとりするとともに、フレッド・アステアのエレガントで洗練された踊りに引き込まれる。

ヴァージニア・デイル、マージョリー・レイノルズとの見事にシンクロしたデュエット・ダンスがすばらしいし、酔っぱらいながらの踊りはまるでカンフーの酔拳みたいで堪能できる。独立記念日のナンバーでは爆竹を鳴らしながらタップを踏んでいて、さしずめ爆竹ダンス。

ちなみにこの爆竹ダンスのシーンは、床の上にワイヤーをめぐらせ、アステアの動きに合わせて爆竹を鳴らす仕掛けがつくられたのだとか。曲名は「Let's Say It With Firecrackers」(爆竹で祝おう)だった。

爆竹の歴史をたどると、紀元前のころ、中国で人々が竹を火の中に投げ込んだのをきっかけに生まれたのが爆竹だという。竹が燃えてはじける音に魔除けの効果があるというので悪鬼および疾病駆逐を願う風習となり、やがて中国で火薬が発明されると、爆竹は花火とともにさまざまな国に伝播していった。

中国大ッ嫌いのトランプ大統領アメリカで、独立記念日を中国伝来の爆竹で祝う習慣は今も続いているのだろうか?

 

ついでにその前に観た映画。

U-NEXTで配信していたアメリカ映画「グッバイガール」

1977年の作品。

原題「THE GOODBYE GIRL」

監督ハーバート・ロス、脚本ニール・サイモン、撮影デビッド・M・ウォルシュ、音楽デーブ・グルーシン、出演リチャード・ドレイファス、マーシャ・メイソン、クイン・カミングス、ポール・ベネディクト、バーバラ・ローデスほか。

ニューヨークを舞台に、いつも男に逃げられてばかりの子持ちの元ダンサーと俳優志願の男が、反発しながらも互いに惹かれ合い結ばれていく姿を描くロマンチック・コメディ。

 

ニューヨークの下町。33歳になるダンサーでシングルマザーのポーラ(マーシャ・メイソン)は、10歳の娘ルーシー(クイン・カミングス)とアパートで暮しているが、交際する男性からいつもいきなり“さよなら(グッバイ)”をいわれて逃げられてしまっていた。今の恋人で一緒に住んでいる男優も映画出演が決まると彼女の元から去っていった。

そんな男優の友人で、売れない男優のエリオット(リチャード・ドレイファス)が突然あらわれる。去っていった男からアパートの部屋を譲り受けたと主張し、強引に部屋に入ろうとしてくる。

形勢不利と悟ったポーラ。しぶしぶエリオットとの同居生活を始めるが・・・。

 

夢はあるけれども貧しい暮らしを送っている男と女の、夢を実現させるための奮闘を描いた笑いと涙の物語。

どちらかというと会話劇で、セリフがしゃれてて出演者のやりとりが心地よく聞こえるので、てっきりブロードウェイの舞台を映画化したのかと思ったら逆だった。映画のほうが先で、本作か評判だったのでブロードウェイでミュージカル化され、日本でもミュージカル版が上演されている。

脚本を書いたニール・サイモンはもともとブロードウェイの劇作家。戯曲集を出しているほどの人気作家だ。作品には人間の心の機微を描いた暖かな余韻の残るものが多いといわれ、ブロードウェイの代表作は映画にもなった「おかしな二人」。

本作はアカデミー賞脚本賞にノミネートされている。

 

グッバイガール、つまりいつも男にグッバイされて逃げられるヒロインを演じるのは、当時サイモンの妻だったマーシャ・メイソン。

主役のリチャード・ドレイファスが、風変わりだが心の優しいシェークスピア俳優を演じていて、本作でアカデミー賞主演男優賞に輝く。受賞当時彼は30歳125日で、史上最年少の主演男優賞受賞者となった(それまでの最年少受賞者だったマーロン・ブロンドの記録を破る)。

史上最年少といえば、ヒロインの娘ルーシーを演じたクイン・カミングスは映画公開当時10歳でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、アカデミー賞にノミネートされた史上最年少の人物の一人になった(その後、ジャスティン・ヘンリーが当時8歳で助演男優賞にノミネート)。

実年齢と同じ10歳の娘の役をユーモアと愛嬌たっぷりに演じていたが、彼女はその後、大人になると俳優を辞めて発明家・起業家となり、いくつかの本も執筆しているという。