善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「パリの恋人」他

イタリア・シチリアの赤ワイン「キュソラ・シラー・メルロ(CUSORA SYRAH MERLOT)2019」

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生産者のカルーソ・エ・ミニーニは、シチリアの老舗ワイナリーであるカルーソと、最新テクノロジーを導入して投資するミニーニの共同経営によるワイナリー。

シチリア島の西端にあるマルサラ地区でワインづくりをおこなっている。

シラー、メルロ50%ずつでとても飲みやすいワイン。

 

ワインの友で見たのは民放のBSで放送していたアメリカ映画「パリの恋人」。

1957年の作品。

原題は「FUNNY FACE」。

邦題とはまるで違う意味。オードリー・ヘップバーン主演の映画はあらかた見たと思っていたが未見の映画。あるいは大昔に見たもののすっかり忘れていたか。

彼女の最初のミュージカル作品。「おかしな顔」を意味する「FUNNY FACE」という言葉も、この映画をきっかけに「カワイイ顔」の代名詞になった気がする。

 

監督スタンリー・ドーネン、出演オードリー・ヘップバーンフレッド・アステア、ケイ・トンプスン、ミシェル・オークレール、ロバート・フレミングほか。

音楽をジョージ・ガーシュウィンとアドルフ・ドイッチが担当している。

ガーシュウィン作曲の「ス・ワンダフル」をフレンド・アステアが歌っている。

ホントは「It's Wonderful」というところを「'S Wonderful」と歌うところがいかにもアメリカっぽい。

 

ニューヨークのファッション雑誌クォリティ・マガジンは、新しいモデルを探し出してパリの世界的デザイナー、ポール・デュヴァル(ロバート・フレミング)に衣裳を作らせ、パリでファッションショーを開いてその写真を独占掲載し、大いに雑誌を売ろうと計画していた。モデルを探す役はファッション・カメラマンのディック・エヴリー(フレッド・アステア)。苦労の末、小さな古本屋で働くジョー・ストックトンオードリー・ヘップバーン)という娘を見つけるが・・・。

 

まるで「ヴォーグ」の表紙のような映画の始まり。

オードリー・ヘップバーンフレッド・アステアの息の合ったダンスも見事だった。

フレッド・アステアのうまさはいうまでもないが、オードリー・ヘップバーンも5歳ごろからバレエを始め、ウエスト・エイド(ロンドン)の舞台に立った経験もあるほどで、華麗で美しい踊りを見せてくれた。

ローマの休日」から4年後の映画で、このときまだ28歳。

 

脇役陣でよかったのがファッション誌の編集長役のケイ・トンプスン。この映画のときすでにかなりのベテランだったと思うが、歌もダンスもうまくて、三枚目っぽいところがまたいい。

気になって調べたら、1908年生まれで没年は1998年。ということは「パリの恋人」のときは49歳。

歌手で作曲家でボイス・トレーナーやボイス・アレンジャーとしても活躍。作家としても注目された人らしい。子どものころはズバ抜けた音楽センスで神童と騒がれたとか。MGMのボイス・トレーナーをつとめ、ジュディ・ガーランドフランク・シナトラも彼女のお世話になったという。

「パリの恋人」では、オードリー・ヘップバーンのボイス・トレーニングも担当していたようだ。

 

ついでに最近見たほかの映画。

NHKBSで放送していたアメリカ映画「縛り首の木」。

1959年の西部劇。

原題「THE HANGING TREE」

監督デルマー・ディビス、出演ゲーリー・クーパーマリア・シェルカール・マルデン、ジョージ・C・スコット、ベン・ピァッツァほか

 

金の採掘に沸く町にやってきた医師のジョー・フレイル(ゲーリー・クーパー)は、金を盗んで撃たれた青年ルーン(ベン・ピァッツァ)を救う。ルーンは治療代代わりにジョーの使用人となるが、過去を隠したジョーの身の上を不思議に思う。そんな折、強盗に襲われた馬車から生き残った女性エリザベス・マーラーマリア・シェル)がジョーのもとに運び込まれてくる・・・。

 

医師としてのウデは一流だが、寡黙で無愛想で、しかしギャンブルも好きそうでポーカーは負け知らず。孤独のゲーリー・クーパーがひたすらカッコいい。

妻が弟と不倫をして、以来、人を信じることができなくなった男が、最後は純真な愛に目覚める。

 

民放のBSで放送していたイギリス・フランス合作「暁に祈れ」。

原題は「A PRAYER BEFORE DAWN」。

2017年の作品。

監督ジャン=ステファーヌ・ソヴェール、出演

ジョー・コール、ヴィタヤ・パンスリンガム、ポンチャノック・マーブグラン、パンヤ・イムアンパイほか。

 

イギリス人ボクサーの自伝小説を映画化した実録ドラマ。

人生をやり直すため単身、タイに渡ったイギリス人ボクサーのビリー・ムーア(ジョー・コール)。だが彼は、自堕落な生活の中で麻薬中毒となってしまう。やがて警察に逮捕され、チェンマイの刑務所に収監されたビリーが送られたのは、凶悪な囚人たちばかりが集められ殺人やレイプが横行する大部屋だった。

必死にこの場所から抜け出そうとするビリーは、ある日、所内でトレーニングを積む囚人たちのムエタイチームと出会う・・・。

 

「暁に祈れ」と聞くと、昔の人だったら第2次世界大戦終結後のシベリア抑留中の日本人捕虜間で起きたリンチ事件「暁に祈る」事件、あるいは古関裕而作曲の戦意高揚歌「暁に祈る」を思い起こすだろうが、今の人はそんなことは知らない。原題どおりだから別にいいんだけど。

 

徹底したリアリティーを追求しようということか、実際にタイで最も古い刑務所の1つだった廃墟で撮影し、役者の大半もタイの元囚人たちだという。したがって超リアルで、まるで地獄の中でもがいているような映画。見ていて酔いが吹っ飛ぶし、R15指定もうなずける。

 

元囚人たちは全身入れ墨、中には顔中入れ墨の人もいて、その怖いこと。

ただし、タイの入れ墨は日本人のようにヤクザの象徴みたいなのとはかなり違うようだ。

タイ式入れ墨は「サクヤン」といって、サク(サック)は「入れ墨する」、ヤン(ヤントッ)は「護符」のことで、宗教的というか呪術的な意味合いが強い。

悪霊退散とか金運上昇、自分の運命を変えたいなどの願いを込めた護符を体中に彫ることで神秘的なパワーを得ようというわけなのだろう。

怨霊から助かるために全身に経文を書いた「耳なし芳一」の話に似ていて、しごく真面目なことなんだけど、映画では怖いの何の。

最後には原作者のビリー・ムーア本人が父親役で出演し、その笑顔にホッとする。