南アフリカの赤ワイン「ラ・モット・ミレニアム(LA MOTTE MILLENIUM)2018」
生産者は17世紀よりの歴史を持つ南アフリカのワイナリー、ラ・モット。
フランスのボルドースタイルを意識した赤ワインだそうで、銘醸地のさまざまな特徴をもつ畑からとれたブドウを組み合わせてつくられた。
ブドウ品種はメルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、マルベック。
重すぎることなく、さらりとした味わい。
ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたイギリス・フランス合作の映画「ファーザー」。
2020年の作品。
監督フロリアン・ゼレール、出演アンソニー・ポプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツほか。
アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、「羊たちの沈黙」以来2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した人間ドラマ。
舞台劇「Le Pere 父」を映画化。舞台の戯曲を書いたフロリアン・ゼレールが監督と脚本を担当。映画化にあたっては主役の名前も生年月日もアンソニー・ホプキンスに合わせたという。
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアン(オリヴィア・コールマン)が手配した介護人を拒否してしまう。
そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。しかしアンソニーの自宅にはアンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張する。そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。
認知症によって現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、見ているほうもどれが現実でどれが幻想なのかわからなくなっていく・・・。
第93回アカデミー賞で作品賞6部門にノミネートされ、ホプキンスの主演男優賞のほか、脚色賞を受賞。
ただ黙って座っているだけで、その横顔からアンソニーの人生がにじみ出てくる。
やっぱり長生きも芸のうちだ。
ちなみに「長生きも芸のうち」は、名人・8代目桂文楽が著作家で歌人・脚本家の吉井勇からかけられた言葉だといわれる。吉井自身の次の歌がある。
「長生きも藝のうちぞと落語家の文楽に言ひしはいつの春にや」
ついでにその前に観た映画。
民放のBSで放送していたアメリカ映画「タワーリング・インフェルノ」。
1974年の作品。
監督アーウィン・アレン、出演ポール・ニューマン、スティーヴ・マックィーン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、スーザン・ブレークリー、リチャード・チェンバレン、ジェニファー・ジョーンズ、O・J・シンプソン、ロバート・ヴォーン、ロバート・ワグナーほか。
サンフランシスコの空にそびえ立つ地上550m・138階建ての世界一高い超高層ビル“グラス・タワー”が落成の日を迎えた。設計者のダグ・ロバーツ(ポール・ニューマン)は、この仕事を最後に婚約者のスーザン(フェイ・ダナウェイ)と砂漠で生活するため退職することをオーナーのダンカン(ウィリアム・ホールデン)に申し出ていた。
最上階の会場に300人もの来賓を招いた落成式が始まったころ、惨事はすでに始まっていた。地下室にある発電機が故障したため予備の発電機を始動させたとたんショートし、81階にある物置室の配線盤のヒューズが火を発し、燃えながら床に落ちた絶縁体の破片が発動機のマットをくすぶらせ始めた。それは、巨大ビルが地獄(インフェルノ)と化していく予兆だった・・・。
この映画は、史上初めてアメリカの大手映画会社「ワーナー・ブラザース」と「20世紀フォックス」が共同で製作・配給した作品。内容が似通っている2つの原作の映画化権を両社が持っていて、制作費が巨額にのぼるため「それなら共同で」となったらしい。日本でいえば松竹と東映が共同製作するみたいで、当時はありえないことだったろう。
出演者が実に豪華だが、出演者の名前を表示するクレジットタイトルで主演のマックイーンとニューマンの表示がかなり変わっていた。
最初に2人の名前が表示されるのだが、左にマックイーンの名前があり、右のちょっと上にニューマンの名前がある。
これは製作会社の苦肉の策らしくて、2人の主役の名前が並ぶ場合、通常だと英語で先に読む左側の名前が上位となるが、右側のニューマンの名前が微妙に上になっていて、縦位置で見るとニューマンが上位になっている。
結局、どちらが優位かはっきりさせない表示だったらしいが、ニューマンは火災を起こしたビルの設計者としての苦悩と正義感からくる悪戦苦闘の役、マックイーンは消防隊長として活躍するひたすらカッコイイ役。
アカデミー賞に8部門でノミネートされたが、主演男優賞のノミネートはなく、役者で受賞したのは助演男優賞の火災に巻き込まれた三流詐欺師役のフレッド・アステアだった。
民放のBSで放送していたアメリカ映画「砂上の法廷」。
2016年の作品。
原題「THE WHOLE TRUTH」
監督コートニー・ハント、出演キアヌ・リーブス、レニー・ゼルウィガー、ググ・バサ=ロー、ガブリエル・バッソほか。
全編ほぼ法廷劇のリーガル・サスペンス。
莫大な資産を持つ大物弁護士が自宅で殺害され、17歳の息子マイク(ガブリエル・バッソ)が逮捕・起訴される。完全黙秘を続ける彼の弁護を引き受けたのは敏腕弁護士ラムゼイ(キアヌ・リーブス)。
何も語らないマイクをよそに開廷された裁判では、チャーター機のキャビンアテンダントなどの証人たちが彼の有罪を裏付ける証言をするが、ラムゼイはその証言のわずかなほころびからウソを見破る。有罪に見えた裁判の流れが変わり始めた矢先、マイクは沈黙を破って、父と母親のロレッタ(レニー・ゼルウィガー)との確執、そして自分と父との関係について衝撃の告白を始める・・・。
原題の「THE WHOLE TRUTH 」とは、「偽りのない真実」という意味だろうか。
しかし邦題は「砂上の法廷」。
一見すると立派だが実はもろく、やすやすと崩れてしまう「砂上の楼閣」と同じで、ウソと偽りに満ちた法廷、といった意味で、原題とは逆のことをいってるが、日本人にはわかりやすく、なかなか味のある邦題といえる。
なぜなら、アメリカの法廷で証言に立つとき、証人は「I swear to tell the truth , the whole truth , and nothing but the truth , so help me god 」と宣誓し、「whole truth 」つまり「真実のみを語ります」と神に誓う。
宣誓の上で証言した「偽りのない真実」が、実はウソだらけだったとしたら?という物語。
さらに、ウソの証言以上に、裁判そのものが“砂上”のものだったとしたら・・・。
キアヌ・リーブス、レニー・ゼルウィガーがいつになく真面目な役どころ。
駆け出し弁護士役のググ・バサ=ローの鋭いまなざしだけが、真実を見定めようとしていた。