善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「タレンタイム 優しい歌」ほか

アルゼンチンの赤ワイン「プリヴァーダ・マルベック(PRIVADA MALBEC)2018」

(写真はこのあと豚三枚肉とジャガイモのクミン風味)

アンデス山脈の麓、「太陽とワインの州」と呼ばれるメンドーサ地区でワインづくりを行っているボデガ・ノートンの赤ワイン。

メンドーサ地区はアルゼンチン全体の80%以上のワインをつくる最大産地。標高が高く、昼夜の気温差が大きい気候が特徴で、雨が少なく十分な日照量を受けるため安定した品質のワインをつくることができるという。

加えてアンデス山脈からの風の影響でブドウは乾燥し、1年を通じて病害虫や腐敗の心配がない、つまり、殺虫剤や除草剤が必要ないため、おのずと自然派のワインができあがるのだとか。

ブドウ品種は、アルゼンチンを代表するマルベック100%。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたマレーシア映画「タレンタイム 優しい歌」。

2009年の作品。

監督・脚本ヤスミン・アフマド、出演パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショールほか。

 

音楽コンクール「タレンタイム」(マレーシア英語で、生徒たちによる芸能コンテストのこと)が開催される高校で、ピアノの上手なムルー(パメラ・チョン)は、耳の聞こえないマヘシュ(マヘシュ・ジュガル・キショール)と恋に落ち、二胡を演奏する優等生カーホウ(ハワード・ホン・カーホウ)は、成績優秀で歌もギターも上手な転入生ハフィズ(モハマド・シャフィー・ナスウィップ)を嫌っていた。

コンクールに挑戦する生徒たちの青春を描きながら、マヘシュの叔父に起きる悲劇や、宗教上の違いからムルーとの交際に強く反対するマヘシュの母、闘病を続けるハフィズの母など、民族や宗教の違いによる葛藤を抱えた人々の姿を通して、多民族国家としてのマレーシア社会を映し出す。

 

2009年に51歳の若さで亡くなったマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの長編映画としての遺作となった作品。本作を発表後、脳内出血により緊急入院し、急逝した。活動期間はわずか6年。その間に残した長編は6本だった。

母方の祖母は日本人で、最も好きな映画に「男はつらいよ」をあげていた。次回作「ワスレナグサ」は祖母をモデルに自らのルーツを探る内容で、石川県などで撮影を予定していた矢先に他界した。

映画づくりでは、誰にでもわかる娯楽性を大切にする一方、マレー系、中国系、インド系などが共存する多民族国家レーシアの文化間対立や差別構造にも鋭く切り込んでいて、本作でも、英語、マレー語、中国語、タミル語などさまざまな言語が飛び交っていた。

 

映画の中で、ドビュッシーの「月の光」が繰り返し流れる。もどかしいほどに静かに流れる夜想曲で、「月の光」と呼ばれるようになる前は「感傷的な散歩道」というタイトルだったという。

マレーシアというと常夏の国で、夜は蒸し暑くて月の光を楽しむなんてとてもムリと思ったら、それは大間違いで、マレーシアの夜は、月の光の中で夜風に吹かれながら語り合う恋人たちにとって、とてもステキで大切な時間なのかもしれない。

 

そういえば沖縄に行くと、昼間は街を歩く人なんか誰もいなくて、月が出る夜になると、人々は外に出てくる。八重山の民謡「とぅばらーま」の歌声を競う「とぅばらーま大会」も、毎年、旧暦8月13日の「中秋の名月」の夜に開催される。

恋の歌は、月の光の下で歌ってこそ相手の心に伝わることを知っているからに違いない。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたフランス映画「最高の花婿」。

2013年の作品。

原題は「QU'EST-CE QU'ON A FAIT AU BON DIEU?」

監督フィリップ・ドゥ・ショーヴロン、出演クリスチャン・クラヴィエ、シャンタル・ロビー、アリ・アビタンほか。

 

奇しくも「タレンタイム 優しい歌」と同様、男女の愛をめぐる民族・宗教の“壁”を描く映画で、多様な人種や宗教が混在するフランス社会を背景に、敬虔なカトリック教徒の夫妻が、娘の結婚相手をめぐって繰り広げるドタバタを描いたコメディドラマ。フランスで1200万人を動員する大ヒットを記録したという。

 

ロワール地方の町シノンに暮らすヴェルヌイユ夫妻は信心深いカトリック教徒で、なおかつ夫はド・ゴールを信奉する保守主義者。ところが、4人の娘のうち3人は、それぞれユダヤ人、アラブ人、中国人と結婚し、これから結婚する末娘には、せめてカトリック教徒と結婚してほしいと願っていた。

そんな末娘の婚約者はカトリック教徒で、名前はシャルル。「ド・ゴールと同じ名前だ」と喜び、安心していた夫妻だったが、会ってみると、相手はコートジボワール出身の黒人男性だった・・・。

 

差別・偏見を腹を抱えて笑い飛ばす映画。

原題の「QU'EST-CE QU'ON A FAIT AU BON DIEU?」は日本人からすると長すぎて何が何だかわからないが、カタカナで日本語読みすると「ケスコナフェ オボンデュー」。

「ああ神さま、何てことしてくれたの?」という意味らしい。