善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「コーダ あいのうた」ほか

南アフリカの赤ワイン「スペシャル・エディション・ピノタージュ(SPECIAL EDITION PINOTAGE)2021」

南アフリカのワインの銘醸地として知られるフランシュックを拠点とするワイナリー、レオパーズ・リープのワイン。

ピノタージュは南アフリカの固有品種で、ピノ・ノワールとサンソーを人工交配してつくりだされた黒ブドウ品種。豊かな果実味と滑らかなタンニンが魅力という。

 

ワインの友で観たのは、日本テレビの地上波で放送していたアメリカ・フランス・カナダ合作の映画「コーダ あいのうた」。

2021年の作品。

原題「CODA」

監督脚本シアン・ヘダー、出演エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、ダニエル・デュラン、マーリー・マトリン、フェルディア・ウォルシュ=ピーロほか。

 

家族の中でただひとり耳の聞こえる少女が、自身の歌の才能と家族との間で悩み、成長する姿、そして家族の愛を描いたヒューマンドラマ。2014年フランス映画「エール!」のリメイクで、2022年のアカデミー賞で作品賞はじめ助演男優賞、脚色賞の3部門を受賞。

 

マサチューセッツ州の海辺の町、グロスター。女子高校生のルビー(エミリア・ジョーンズ)は漁師の家に生まれ、朝3時に起床して父や兄と漁船で海に出る日々をすごしていた。

ルビーの家族は全員が聴覚障害者で、一人だけ耳が聞こえるルビーは幼いころから家族の通訳として欠かせない存在だった。

新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の教師は、名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。

家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが・・・。

 

話の筋はフランス映画「エール!」とだいたい同じ。

ただし、出演者は、フランス版では聴覚障害のない役者が聴覚障害者を演じていたが、本作では実際の聴覚障害者が起用されている。

母親役のマリー・マトソンは生後18カ月で耳が聞こえなくなり、7歳のときに児童劇団に所属して以降、役者として生き、1986年公開の「愛は静けさの中に」で映画デビュー。この作品で聴覚障害者として初めてアカデミー主演女優賞を受賞している。

父親役のトロイ・コッツァーも聴覚障害者だが、本作でアカデミー助演男優賞を受賞した。

 

もうひとつ、フランス版と本作とで違うのは家族が置かれている状況で、その顛末を含めかなり違っている。

フランス版では主人公一家の職業は酪農業だったが、本作では沿岸漁業の一家だった。

フランス版では、主人公一家が暮らす村で村長選挙が始まり、村に工場を誘致する計画の現村長に対し、口(手話)は悪いが熱血漢の父親が、農地を奪われ森林が破壊されてはたまらないと村長選への出馬を決めるところから物語は始まる。

環境破壊とたたかう一家というわけで、エコ先進国といわれるフランスらしい話(その割にフランスは原発を推進しているのは理解できないが)。

一方、アメリカ版の本作では、政府だか州政府から漁獲量の削減が申し渡され、それでは生活できないと主人公の漁師一家が猛反発する話になっている。

アメリカでは、資源保護のため総漁獲可能量が魚種ごとに厳格に決められているそうだ。さらに、漁船1隻あたりの漁獲量にも制限が設けられていて、今年は漁獲制限がさらに厳しくなるというので、それなら自分たちで魚を売るといい出して仲間を募って新しい組織をつくろうと活動を始める。

エコより自分たちが生きていくことの方が大事、というは、決してエゴではない。実に真っ当な話で、資源保護をいうなら漁業者の生活保障が大前提であるのは当然のことだろう。

ただし、連邦政府あるいは州政府による漁獲制限(アメリカの漁業は沿岸3カイリ(約5・6㎞)以内で行われる沿岸漁業は州法で規制され、それより以遠の漁業は連邦法で規制されている)とたたかうというのは並大抵のことではない。

あるいは政府の方針に従った漁業組合の自主規制とのたたかいかもしれないが、いずれにしても簡単にはいかない。そのため映画でもどう決着したかは不明なまま。話の本筋はそこじゃないから別にいいやと思ったかどうかはわからないが、はっきりしないままで終わっている。

一方のフランス版では、工場誘致に反対する聴覚障害者の父親が村長選挙に勝って一応の成果をあげている。映画はもちろん家族の愛がテーマなのだが、背景にある政治的な問題にもちゃんと目配りしているところは、いかにもフランスらしいと思ったのだった。

 

ちなみに本作のタイトルにある「CODA(コーダ)」とは「Child of Deaf Adults」の頭文字をとった言葉で、「聞こえない親のもとに生まれた聞こえる子ども」という意味だという。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたフランス・ポーランド合作の映画「夜明けの祈り」。

2016年の作品。

原題「LES INNOCENTES」

監督アンヌ・フォンテーヌ、出演ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、ヴァンサン・マケーニュほか。

 

第2次世界大戦末期の悲劇的な事件によって傷ついた修道女たちを救うべく尽力した、実在の医師マドレーヌ・ポーリアックをモデルにしたヒューマンドラマ。

 

1945年12月、ポーランド赤十字で医療活動に従事するフランス人女性医師マチルド(ルー・ドゥ・ラージュ)のもとに、ひとりの修道女が助けを求めに来る。彼女に連れられて修道院を訪れたマチルドは、ソ連兵の暴行によって妊娠した7人の修道女たちが、信仰と現実の間で苦しんでいる姿を目の当たりにする。

マチルドは修道女たちを救うため激務の間を縫って修道院に通うようになり、孤立した修道女たちの唯一の希望となっていく・・・。

 

マドレーヌ・ポーリアックは1912年の生まれ。もともとパリの病院の気管切開の専門医で、27歳のときから反ナチスドイツのレジスタンス運動に参加したという。

第二次世界大戦末期の1945年はじめに中尉医務官としてモスクワで働き、同年4月にはポーランドワルシャワにあるフランス赤十字のチーフドクターに任命される。戦争が終わると、ポーランド全土とソ連の一部地域でフランス軍兵士の帰還任務に携わる。女性で構成された赤十字のボランティア部隊を指揮するが、このボランティア部隊は通称「青い騎兵隊」と呼ばれ、トータルで4万キロを走破、強制収容所を含む200以上の収容施設を回り、昼夜となく一日平均700キロを走り回ってはぐれたフランス人を救出したりしたが、ときにはソ連軍の病院にいるフランス人を奪還したり、ソ連軍に捕まって監禁されたりと、非常に危険な任務だったという。

その中で彼女は映画に描かれているようなソ連兵によるポーランド人女性への暴行事件の数々を知る。被害に遭った女性たちを心身ともに助け、その中には修道院に暮らす修道女たちもいた。本作はその修道女たちの救済を描いたものだ。

 

民放のBSで放送していたイタリア・スペイン・アメリカ合作の映画「夕陽のギャングたち」。

1971年の作品。

原題「DUCK YOU SUCKER」

監督セルジオ・レオーネ、音楽エンニオ・モリコーネ、出演ロッド・スタイガージェームズ・コバーン、ロモロ・ヴァッリ、マリア・センティ、フランコ・グラツィオーシほか。

 

20世紀初頭のメキシコを舞台にアイルランド人の革命家とメキシコ人山賊の活躍を描くマカロニウエスタン

 

1913年、革命の荒らしが吹き荒れるメキシコ。陽気で人の好い山賊の首領ファン・ミランダ(ロッド・スタイガー)は、街道で駅馬車を襲ったあと、オートバイで通り合わせたアイルランド人ジョン・マロリー(ジェームズ・コバーン)と出会う。

マロリーはイギリスからの独立をめざすアイルランド共和国軍IRA)の闘士で、やたらダイナマイトを振り廻すところからイギリス政府のおたずね者になっていた。国立銀行への襲撃を計画するファンにとって、ダイナマイトによる爆破のプロ、ジョンと組めば鬼に金棒。2人は銀行のある町へと向かう。

ところが、町に着いてみると銀行は軍隊によって警護されていて、それでも計画どおりに襲撃すると、巨大金庫の中にはカネはなく、メキシコの現政権に反対する政治犯が多数監禁されていた・・・。

 

IRAの爆弾闘争って西部劇の時代にあったの?と思ったら、アイルランドは長くプロテスタントであるイギリスの支配下にあり、独立のためのカトリック系の武装組織はすでに19世紀のころから活動していた。正式にアイルランド共和国軍IRA)と名乗るのは1919年からだが、それ以前から武装組織による反乱を各地で起こしていた。

ただし、本作はそんなアイルランド独立運動とはまるで関係なく、ファンとジョンの友情?物語。英語のジョン(John)はスペイン語ではファン(Juan)。同じ名前だというので、その好(よしみ)ということらしい。