善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「あなたを抱きしめる日まで」ほか

チリの赤ワイン「マプ・グラン・レゼルヴァ・カベルネ・ソーヴィニヨン(MAPU GRAN RESERVA CABERNET SAUVIGNON)2020」

シャトー・ムートンを所有するロスチャイルド社がチリで手がけるワイン。

カベルネ・ソーヴィニヨン100%で、生産地は南北に細長いチリのセントラル・ヴァレー、マウント・ヴァレー。

チリの国内生産量第1位を占めるのがカベルネ・ソーヴィニヨン。チリといえばカベルネ・ソーヴィニヨンというわけで「チリカベ」ともいわれているんだそうだ。

 

ワインのあは観たのは、民放のBSで放送していたイギリス・アメリカ・フランス合作の映画「あなたを抱きしめる日まで」。

2013年の作品。

原題「PHILOMENA」

監督スティーブン・フリアーズ、出演ジュディ・デンチ、スティーブ・クーガンほか。

イギリスでベストセラーとなったマーティン・シックススミスによるノンフィクションを映画化し、50年前に生き別れた息子を探し続けた女性の姿を描く。英俳優スティーブ・クーガンが企画を立ち上げ、脚本やプロデューサーを務めたほか、原作著者でもあるシックススミス役を演じている。

 

イギリスの公共放送BBCの仕事をしていたジャーナリストのマーティン(スティーブ・クーガン)は、ある日ジェーンという女性から母の話を聞いてほしいと頼まれる。彼女の母フィロミナ(ジュディ・デンチ)は、50年前に生き別れたとなった息子がいて、会いたいと訴える。その願いを叶えるため、マーティンはフィロミナとともに彼女の息子を探す旅に出る。

原題の「PHILOMENA」とは彼女の名前のこと。

50年前のアイルランド。貧しい家庭に生まれながらも、カトリック教徒として育った10代のフィロミナは、未婚のまま妊娠したため女子修道院に入れられ、そこで出産する。カトリック教徒が大半を占める当時のアイルランド社会では、未婚の母は堕落した女との烙印を押されて人として扱われず、強制的に修道院に入れられて洗濯などの過酷な労働を強いられる。

修道院で生まれた自分の息子と会えるのも、1日に1時間でしかない。

やがて3歳になった息子は、アメリカ人夫婦に養子に出されるが、孤児として扱われていて生みの母親にはその行先は一切告げられない。修道院には養子先から寄付と称してお金が支払われていて、事実上の人身売買だった。

(宗教を利用して金儲けする、日本にも似たような宗教団体がある)

 

それから50年、どうしても息子のことが忘れられなかったフィロミナはマーティンとともにアメリカに渡る。「あの子は私のことを、アイルランドのことを、少しでも覚えているかしら」と不安なフィロミナ。調査した結果、息子は立派に成長していたことを知るが・・・。

 

映画の最後のほうで、神の教えの名のもとに母と子を引き裂き、“人身売買”の証拠は焼却して隠滅しようとしてきた修道院に対し、いまもカトリックの信者であるフィロミナは「赦すわ」というが、無神論者のマーティンは吐き捨てるようにこういう。

「私は赦さない」

 

重いテーマだが、コメディータッチで描いているのでさわやかな終わり方だった。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたインド映画「ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画」。

2019年の作品。

原題「MISSION MANGAL」

監督:ジャガン・シャクティ、出演アクシャイ・クマール、ヴィディヤ・バランほか。

 

実話にもとづく映画。

インドでは1960年代から宇宙開発事業が始まり、アメリカなどの力を借りての衛星打ち上げを経て2008年には月探査機「チャンドラヤーン1号」を打ち上げている。「チャンドラ」は「月」、「ヤーン」は「乗り物、宇宙船」を意味する。

火星探査でもインドは中国や日本に一歩先んじていて、13年11月、火星探査機「マンガルヤーン」を打ち上げ、1カ月後の12月に地球軌道を脱出。翌14年9月に火星周回軌道への投入に成功した。

「マンガル」は「火星」の意味で、本作は「マンガルヤーン」打ち上げとその成功までのインド宇宙研究機関(ISRO)火星プロジェクトチームの苦闘を描いている。

 

始まりは2010年、ちょっとしたミスから最新型宇宙ロケットの打ち上げに失敗したプロジェクトの責任者ラケーシュ(アクシャイ・クマール)とベテラン女性研究員のタラ(ヴィディヤ・バラン)は、メインの仕事から外され、誰もが実現はムリと思っていて閑職同様の火星探査ロケットの打ち上げプロジェクトに異動させられる。

しかし、宇宙開発に燃える2人は火星探査を成功させようとプロジェクトをスタートさせる。何とか上層部からゴーサインが出たものの、集められたのは経験の浅い若手や、定年直前の研究者だった。

メンバーは、軽量探査機設計のヴァルシャー(ニティヤー・メネン)、航法・通信技術のクリティカ(タープスィー・パンヌー)、自律システムのネハ(キールティ・クルハーリー)、推進エンジンのエカ(ソーナークシー・シンハー)といずれも女性。これに積載技術のパルメーシュワル(シャルマン・ジョシ)と、構造設計の大ベテランのアナント(H・G・ダッタトレーヤ)という男性2人が加わり、ラケーシュとタラをリーダーに粗末な施設での研究開発が始まる。

しかし、予算は少なく、それぞれも出産、離婚、家庭内トラブル、上昇志向との板挟みなどなどの問題を抱えていて、前途は多難だった。

 

プロジェクトの最大の課題は、いかにロケット燃料を節約して火星まで到達するかだったが、タラが意外なアイデアを思いつく。

インド料理で全粒粉で作った平たいパンを揚げたものを「プーリー」と呼ぶが、帰宅したタラに、家で働くメイドが「全部のプーリーを揚げるにはガスが足りません」と伝える。これに対してタラは「プーリーは余熱で十分に揚がる。だから油が高温になったらガスを止め、油の温度が下がったらまたガスを点火すればいい」と話す。

そう説明した瞬間、彼女は、ロケットが地球周回軌道の外に出るときだけ燃料を噴射し、地球の重力を利用したスイングバイを使えば燃料をうまく節約できることを思いつく。何と、台所での主婦の知恵が、宇宙科学に生かされた。

 

映画はもちろんフィクションだが、映画の最後に、プロジェクトに携わった実在の女性研究者たちの姿が次と次と映し出され、実際に彼女らが火星探査計画の中心になっていたことがわかる。

インドはいまだに貧富の差とともに男女格差が大きいといわれているが、少なくとも高学歴女性に関しては社会進出がかなり進んでいるようで、いつの時代のデータか分からないが、インド宇宙研究機関の女性スタッフの比率は20~25%を占めているとの報告もある(ついでに紹介すればインド国立生命科学研究センター(NCBS)の女性比率は33%。2016年のレポートによる)。

これに対して日本はどうかというと、少し古いが2013年(平成25年)3月現在のJAXA宇宙航空研究開発機構)における女性研究者の在籍割合は8・7%で、3年後の2016年までに12%以上にまで引き揚げることを目標にしていた。今はどこまでいってるだろう?

ちなみに研究者を育成する航空工学分野の女子学生割合は2019年度2130人中256名で12・0%という。

 

研究の現場や、打ち上げのコントロールセンターで活躍する女性研究者が、みんな民族衣装のサリーを着ていたのも、いかにもインドらしい。

あれは映画だからなのではなく、打ち上げのときのインドの女性研究者たちのニュース写真を見ると、みなさんサリーを着ている。しかも、特別な日なので着飾っているというより、仕事着として着ている感じだ。

 

インド、3種の探査機で初の月着陸ミッションに挑む | Business Insider Japan

 

一枚布を身にまとうサリーは、伝統的な美しさを演出するとともに、機能的にも優れているようだ。民族衣装とはそういうものだろう。

中には髪をジャスミンの花で飾る研究者もいるのだとか。