善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「オデッセイ」ほか

フランス・ラングドック・ルーションの赤ワイン「ドメーヌ・ド・ヴィルマジューコルビエール・ブートナック(DOMAINE DE VILLEMAJOU CORBIERES BOUTENAC)2019」

フランス南部ラングドック・ルーションでワインづくりをしているジェラール・ベルトランの赤ワイン。オーナーはかつてはラグビーのフランス代表選手だった人物という。

南仏の代表的なブドウ品種カリニャン、シラー、グルナッシュ、ムールヴェードルの4品種をブレンドして、バランスのとれた味わい。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「オデッセイ」。

2015年の作品。

原題「THE MARTIAN」

監督リドリー・スコット、出演マット・デイモンジェシカ・チャステインクリステン・ウィグほか。

 

火星にひとり取り残された宇宙飛行士のサバイバルをテーマとしたアンディ・ウィアーのSF小説「火星の人(THE MARTIAN)」を映画化。

 

火星での有人探査の最中、大砂嵐に巻き込まれた宇宙飛行士で植物学者のワトニー(マット・デイモン)。仲間たちは緊急事態を脱するため、ワトニーは死んだと判断して探査船を発進させ、火星を去ってしまう。

しかし、彼は奇跡的に助かり、生きていた。死んだと思われて火星にひとり残されたワトニーは、酸素は少なく水も通信手段もなく、食料は31日分という絶望的状況のもと、4年後に次の探査船が火星にやってくるまで生き延びようと、あらゆる手段を尽くしていく・・・。

 

この映画は、命をかけた究極のアドベンチャー物語だが、登場人物は1人も死なない。ワトニーというたった1人の命を救う物語だから、ほかにはだれも死んでもらっては困るからだろう。

アメリカと中国の両政府が仲よく共同作戦を展開するエピソードもはさまっているが、「トランプ前」(中国を徹底して嫌ったトランプ大統領の就任はこの映画が公開されて2年後の2017年)の映画ゆえか。

 

ワトニーは、自身の排泄物をもとにした土で栽培したジャガイモを食べ、火星で生き延びるが、果たしてジャガイモだけで生存が可能なのか?

アメリカのNASAは、人類が火星に定住した場合、火星で育てられる食物が不可欠だというのでジャガイモに目をつけ、ペルーにあるジャガイモ専門研究施設の研究者(何しろペルーはジャガイモの発祥地といわれる)と共同で、火星に似た砂漠の土でジャガイモが育つか実験を行っていて、途中経過は良好だという。

しかし、仮に火星でジャガイモが栽培できたとしても、ジャガイモだけ摂取したとすると、1年もたたずにビタミン欠乏による夜盲症、クル病、神経障害などに苦しむことになるとの指摘があり、ジャガイモよりサツマイモのほうが栄養価は数段すぐれている、ともいわれている。

いずれにしろ、何か1種類の食物だけで生きていくというのはとても無理な話なのではなかろうか。

 

ところで、この映画の原題は「THE MARTIAN」で、日本語に訳せば小説の邦題と同じ「火星の人」となるが、邦題は「オデッセイ」。

まるで原題と関係なく、しかも日本語でもなくカタカナ語だ。

「オデッセイ」のもともとの意味は古代ギリシャの詩人ホメロスの長編叙事詩オデュッセイア」からきていて、「長期の放浪の旅・冒険」を指す。

火星に行って帰って来るのも同じようなもの、というので「火星の人」とか「マーティアン」とするより観客に受けると配給会社が考えたのか。

ちなみに「2001年宇宙の旅」も原題は「2001 A SPACE ODYSSEY」だから、歴史的作品の原題をいただいちゃったことにもなる。

 

ついでにその前に観た映画。民放のBSで放送していたイギリス映画「ナック」。

1965年の作品。

原題「THE KNACK... AND HOW TO GET IT」

監督リチャード・レスター、出演リタ・トゥシンハム、レイ・ブルックス、マイケル・クロフォード、ドナル・ドネリー、ウィリアム・デクスターほか。

 

「KNACK」とは「巧みなワザ、うまいやり方、コツ」を意味し、この映画では「女の子をモノにする」という意味で使われていて、もてない小学校教師の青年と田舎から上京して来た女の子との恋が芽生えるまでを描く青春コメディ。

 

内気でモテない教師でアパート大家のコリン(マイケル・クロフォード)に対して、アパートの入居者トーレン(レイ・ブルックス)はモテモテ。彼のところには連日のように女の子たちがやってくる。ある日なんか、彼に会いたさに部屋の前から外の通りまでミニスカートの美女たちが長蛇の列をつくるありさま。

そんなトーレンがうらやましいコリンは、女性をモノにする秘訣をトーレンから学ぼうとするが、なかなかコツがつかめない。

一方、田舎からやってきたナンシー(リタ・トゥシンハム)は、重い荷物をかついで「YWCAはどこ?」と道行く人に聞くがだれも答えてくれない。途方に暮れるナンシーとコリンは偶然出会い、2人はたちまち意気投合するが、彼女に目を付けたトーレンは、早速ナンパしてしまう・・・。

 

モノクロだが、ポップかつシュールな映像の連発で、要するに登場人物たちが60年代のロンドンの街を縦横無尽に駆け巡る物語。

監督のリチャード・レスタービートルズ主演の「ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!」と「ヘルプ! 4人はアイドル」の2本の映画の間にこの作品を撮ったというから、古い価値観へのこだわりを捨て去る意識をより強く持っていたのかもしれない。それが映画批評家たちには「斬新だ!」「前衛だ!」に受け止められたのだろう、カンヌ映画祭パルム・ドール(最高賞)を受賞している。