JR東京駅八重洲口から歩いてすぐにある居酒屋、というより大衆酒場といったほうがふさわしい「ふくべ」が、ビル立て替えのため年内で一時休業になると聞いて、呑めなくなる前にイッパイやらねばならぬと酒呑みの友人に誘われ出かけて行く。
ふくべ(瓢)とはひょうたんのことで、中に酒を入れて酒器として利用されていたことにあやかって店の名前としたのだろう。
創業は昭和14年(1939年)というから今から82年前。戦争で一度焼けてしまったものの、昭和39年(1964年)にすぐ近くに場所を移して建て替えられ、以来同じ建物で営業を続けているというから、新しくなってからだって57年の歴史がある。
2階もあるが予約すれば宴会もできる座敷になっていて、ふだん営業しているのは1階フロア。入って左が10席のカウンター席、右側が20人は座れるテーブル席。
当然、座ったのはヒノキの一枚板でできたカウンター席。
目の前に「菊正宗」の四斗樽が鎮座ましましている。
まずは「五橋」の燗酒。
「ふくべ」といえば燗酒だ。この店にはお燗番がいて、燗つけ器でほどよい温度にお燗をつけてくれる。銘柄によってお燗の温度も違うことを教えてもらったのもこの店だった。お燗のつけ方次第でこんなに味が違うのかと驚き、おいしいお燗の酒と出会ったのもこの店だった。
燗酒のあいまに「菊正宗」の樽酒は冷やでいただく。
樽の香りのする酒もうまいが、店主が樽の呑み口からキュッと酒を出す様子を見るのが何とも楽しい。
「菊正宗」の樽酒は一番人気だそうで、この四斗樽が1週間ほどで空になってしまうという。
つまみは、刺身の3点盛り、生揚げ、漬物、その他いろいろ。
お酒も燗酒をいろいろ。
何しろ店内は終始満席(もちろん、隣の席とは仕切りがあって感染予防の対策がほどこされている)で、席が空くとすぐに待ってた人が入ってくる。
長居をしては悪いので2時間ほどで店を出て、少し歩いた「GYOBAR YAESU」というスタンドバーみたいなところでもうイッパイ。
イッパイやりながら見上げると、すき間から東京駅のビルが見えた。