善福寺公園めぐり

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ド迫力の映画 白頭山大噴火

TOHO CINEMAS新宿で韓国映画白頭山(ぺくとぅさん)大爆発」を観る。

2019年製作。

共同監督イ・ヘジュン、キム・ビョンソ、出演イ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、マ・ドンソク、チョン・ヘジン、ペ・スジほか。

建築学概論」で初々しい学生の役をしていたペ・スジが妊娠中の若い妻を演じていた。

 

朝鮮半島で最も高い標高2744mの白頭山。伝説によれば、朝鮮族の祖とされる檀君がここで生まれたという聖地であり、北朝鮮にとっては建国の父・金日成が抗日闘争の拠点とした北朝鮮にとっての聖地である山。その白頭山が大噴火を起こしたら朝鮮半島はどうなってしまうのか・・・、という、とんでもない想定のアクション・ムービー。

日本でいったら富士山大爆発といったところか。

 

北朝鮮と中国の国境付近に位置する白頭山で、観測史上最大の噴火が発生した。大地震によりソウルでもビルが崩壊し、漢江は荒れ陸橋が崩壊。白頭山の地質分野の権威である学者は朝鮮半島を崩壊させるほどのさらなる大噴火が75時間後に起こると予測し、大パニックに陥るが、何しろ白頭山北朝鮮領内にある。

そこで、韓国軍爆発物処理班のチョ・インチャン大尉(ハ・ジョンウ)率いる部隊が北朝鮮に潜入し火山の沈静化を図る極秘作戦に乗り出す。

それは何と、北朝鮮が所有するICBMを解体して6個の核弾頭を盗み出し、白頭山付近の鉱山の地下深くまで運んで地下核爆発を起こし、マグマの圧力を一挙に低下させるという作戦だった。

インチャンは作戦成功の鍵を握る北朝鮮人民武力部工作員リ・ジュンピョン(イ・ビョンホン)を探し出すべく奔走するが・・・。

 

とんでもない想定と書いたが、もともと白頭山は火山だから噴火する可能性はある。

事実、これまでも何度も噴火していて、10世紀前半の大噴火は有史以降最大級の噴火で、古代都市ポンペイを滅ぼしたとして知られるベスビオス火山の噴火と比べても同じかそれ以上の噴火規模と見積もられているほどで、火山灰は日本の東北地方にも降り注いだという。

また、1597年10月の噴火では、噴火に伴って発生した地震の振動がソウルでも感じられたとの報告がある。

それでも、どんな大噴火だったとしても、ついでにM7~8クラスの巨大地震まで引き起こすというのはホントかいな?と思うが、そんな素朴な疑問を吹き飛ばすほどFSXをフル活用した映像は真に迫って凄まじく、見る者を震撼させる。ほかにも、銃撃戦あり、カーチェースあり、父と子の悲しい別れあり、ときに笑わせてくれたりして、大画面で見るにぴったりの映画だった。

 

映画を見ていて興味深かったのは、インチャンらの前に立ちふさがる敵役となったのが、北朝鮮軍でも、暗躍するナゾの国際組織でもなく、在韓アメリカ軍だったことだ。

映画では、アメリカ軍は朝鮮半島の非核化実現のために行動している設定になっているが、明らかにインチャンらの行動を妨害して、破滅に向かうのを手助けしているようにしか見えない。

アメリカ軍は韓国軍の司令部に乗り込んで韓国政府と軍の関係者を追い出し、自分たちの指揮のもと爆発作戦を中止させようと躍起となり、妨害のための特殊部隊を現地に送り込む。

次の大噴火が間近に迫るというので人々が次々と国外脱出しようとするときも、アメリカ軍は「アメリカ人が優先」と韓国人はあと回しにしようとする。

実は朝鮮半島はいまだに朝鮮戦争の休戦状態にあって、韓国にはアメリカ軍を中心とした国連軍が駐留している。休戦協定によって中国軍は撤退したが、国連軍、すなわちアメリカ軍は依然として韓国に居すわっている。

もともと韓国軍は国連軍の指揮下にある一部隊という位置づけであり、その後、米韓連合司令部なるものが創設され、韓国軍の戦時作戦統制権はアメリカ軍が司令官、韓国軍が副司令官を務めることになっている。このため、有事の際はアメリカ軍が韓国軍を指揮する決まりになっているのだ。

これでは、主権を外国に譲り渡していることになり、果たして独立国といるだろうか。

だからアメリカは他国であるのに軍隊送って駐留し、わが物顔で振る舞っているわけだが、そのわが物というかわがまま顔に強烈なパンチをくらわせたのが本作。

その意味で、なかなか皮肉の効いた映画だった。