善福寺公園めぐり

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明日に希望を持つ大切さ ミナリ

TOHO CINEMAS新宿で先週金曜日から公開が始まったアメリカ映画「ミナリ」を観る。

平日の午前スタートの回だったが、客席はほとんど満員。幅広い世代で、若い人も目立った。3月だから春休み中なのかもしれない。

 

昨年の「パラサイト 半地下の家族」に続き、韓国系移民2世の監督が韓国の家族を描いた映画で、またもや韓国系の作品がアカデミー賞を受賞するのではと話題の映画。

 

大した事件が起こるわけではない。登場人物も普通の人々。「アメリカン・ドリーム」をめざして、農業で一山当てようとアメリカにやってきた韓国の若い移民家族の、つらいけどありがちな日常を描いているだけなのに、明日に希望を持つことの大切さを教えてくれる感動的なラストに涙が止まらない(最近、涙もろいところもあるが)。

いくら努力してもうまくいかず、借金はかさむばかり。それでも明日への希望が持てる・・・。それはなぜなのか? そこのところは映画を観てもらうしかない。

監督、脚本、撮影、音楽、そのほかのスタッフ、そして出演者の演技、みんなでつくり上げる映画のすばらしさを実感できる映画。

 

2012年設立という若い映画製作会社であるA24と、ブラッド・ピット率いるPLAN Bが、脚本にほれ込んで製作した映画という。

映画には白人も登場するが、焦点が当てられているのは韓国系移民家族であり、ほとんどがその日常が描かれていて、出てくる言葉も家族の会話は韓国語が主で、英語がチャンポンで出てくる。

その意味では“異色のハリウッド映画”といえる(今やハリウッド映画というくくりもおかしいのかもしれないが)。

 

監督と脚本のリー・アイザック・チョンは、韓国系移民2世として生まれ、アーカンソーの田舎の小規模農場で育った経験を持つ。本作は、彼の子どものころの記憶を元にした映画という。

その監督の想い通り、この映画の主役は今年9歳になるという子役のアラン・キム。エンドロールにも最初に名前が出ていたが、その純真なまなざしが観るものの心をとらえてはなさない。

 

1980年代のレーガンが大統領だった時代。農業で成功することを夢みる韓国系移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)は、アメリカ・アーカンソー州の高原に家族とともに引っ越してきた。そのころアメリカには韓国から年間3万人もの移民がやってきていて、韓国野菜をつくって流通させるのがジェイコブのねらいだった。

しかし、荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスの暮らしに妻のモニカ(ハン・イェリ)は不安を募らせ、夫婦はケンカばかりしている。それでもしっかり者の長女アン(ネイル・ケイト・チョー)と好奇心旺盛な弟のデビッド(アラン・キム)は、新しい土地に希望を見つけていく。まもなく毒舌で破天荒な祖母(ユン・ヨジョン)も加わり、デビッドと一風変わった絆を結ぶ。だが、水が干上がり、作物は売れず、一家の困難は続き・・・。

 

タイトルの「ミナリ」は、韓国語で香味野菜のセリ(芹)のことだという。

映画の公式サイトによれば、「ミナリはたくましく地に根を張り、2度目の旬が最もおいしいことから、子ども世代の幸せのために、親の世代が懸命に生きるという意味が込められている」としている。

 

ところで映画では、おばあちゃんが子どもたちに花札を教えるシーンが出てくるが、韓国の花札は日本の花札李朝(1392~1910年)末期に朝鮮半島に伝わり、全土に広まったものだそうだ。

今やコンピュータゲームのメーカーとなっている任天堂はもともと花札製造から始まった会社で、私が最初に買った任天堂の製品も花札だった。