善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「尼僧物語」「LUCK-KEY/ラッキー」他

イタリア・トスカーナの赤ワイン「ボスコ・デル・グリッロ(BOSCO DEL GRILLO)2020」

トスカーナキャンティ地区協同組合「ジオグラフィコ」がトスカーナ州伝統のゴヴェルノ製法でつくったワイン。

ゴヴェルノ製法とは、干しブドウ状まで乾燥させて糖度の高くなったブドウを、すでにできあがったワインに加えて再び発酵させる製法。これによりワインにより深い香り、骨格を与え、魅力的な味わいをもたらすのだとか。

ブドウ品種はサンジョヴェーゼ(80%)、メルロー(10%)カベルネ・ソーヴィニヨン(5%)、コロリーノ(5%)。

 

ワインの友で観たのは、NHKBSで放送していたアメリカ映画「尼僧物語」。

1959年公開の作品。

原題「THE NUN'S STORY」

監督フレッド・ジンネマン、出演オードリー・ヘプバーン、ピーター・フィンチ、ディーン・ジャガーほか。

 

実在の人物の半生をもとにした小説を映画化した作品で、24歳で鮮烈主演デビューした「ローマの休日」から5年後、オードリー・ヘップバーン29歳のときの1958年につくられた映画(公開は59年)。

今年の1月20日は、がんのため63歳で亡くなった彼女の没後30年というのでテレビ放映されていたもの。

 

第二次世界大戦が始まろうとしていたころのベルギーとベルギー領だったアフリカのコンゴ(現在のコンゴ民主共和国)が舞台。

純粋な心から修道女となったものの、キリスト教の戒律と侵略戦争を憎む俗世の人間としての思いに引き裂かれ、苦悩するベルギーの女性を見事に演じている。

邦題は「尼僧」となっているが、「尼」とは本来は仏教における比丘尼を指す呼称で、日本語に訳すなら修道女が正しいだろう。

映画では、修道院の見習い修行での厳しい戒律と懺悔の日々が描かれている。

しかし、これだけ厳しい日々を送っても、少なくともカトリックでは女性は聖職者(司教・司祭・助祭)にはなれないという。そもそも修道院というところからして、貞潔・清貧・従順の誓いを立てて禁欲的な信仰生活を送る信徒の施設という位置づけのようだ。

男性の場合だったら、修道士を経て聖職者になることはあっても女性はどんなに偉くなっても聖職者になれないというのは、キリスト教の教えがそうだからだろう。

欧米の女性差別の歴史は実はキリスト教の教えを元にしていて、そもそも神は男性であるアダムを最初につくり、「一人でいるのはよくない」というので、ついでのようにアダムの肋骨から女性のイヴがつくられた。アダムとイヴの原罪も、イヴがそそのかしたことによるものとされて、女性は男性より劣った存在と見下されてきた。

それでも修道女は、「主と結婚した者」ということである程度その原罪を免ぜられたというが、そのかわり厳格な戒律が課せられ、どんな理不尽なことも「服従は主の教えによるもの」とされ、甘受するしかなかった。

しかし、「ついでに女性がつくられた」というのは科学的に見れば間違いで、実際には人間の基本形は女性であり、男は女性の体を改造してつくられた。「ついでにつくられた」のはむしろ男のほうなのだ。

 

映画では、戦争が始まり、中立国だったベルギーにも戦火が及び、ついにナチス・ドイツの前にベルギーは降伏する。人々は地下運動に走るが、修道女はすべてに慈悲の心を持たねばならない、地下運動に参加するなんてもってのほか、と戒められる。

しかし、戦争により家族までが殺され、 敵への憎しみを抑えることができなくなった彼女はついに還俗を決意する。修道女の衣を脱ぎ、俗世間へ、つまり侵略に抗して戦う同胞のもとへと帰っていくのだった。

 

あの当時はカトリックの影響力はかなり強かっただろうに、修道女が途中で修道院をやめてしまうという話がよくぞ無事に作品になり映画館で上映できたと思った。

オードリーは自分が出演した作品の中で、本作が最も気に入っていたという逸話が残っている。生まれ故郷のベルギーが舞台だったこともあるかもしれない。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していた韓国映画「LUCK-KEY/ラッキー」。

2016年の作品。

監督イ・ゲビョク、出演ユ・ヘジン、イ・ジュン、チョ・ユニ、イム・ジヨンほか。

 

日本の内田けんじ監督のコメディ映画「鍵泥棒のメソッド」の韓国版リメイク作品。

100%の成功率を誇る伝説の殺し屋ヒョヌク(ユ・ヘジン)。たまたま立ち寄った銭湯でせっけんを踏み転倒したヒョヌクは、頭を強打し記憶喪失となってしまう。さらに、その場に居合わせた売れない貧乏役者ジェソン(イ・ジュン)が、ヒョヌクのロッカーの鍵をすり替えてしまい、2人の立場が入れ替わってしまう事態に。

貧乏役者と思い込んだヒョヌクが、生来の完璧主義から真剣に役者としての成功を目指し始める一方で、ジェソンはヒョヌク宛てにかかってきた電話を取ってしまい、まさかのトラブルに巻き込まれてしまう・・・。

 

銭湯でロッカーの鍵をすり替えてから始まる物語というわけで、ラッキー(LUCKY)ではなく「LUCK-KEY」というタイトルがミソの、大笑いしながら観る楽しいコメディー。

ちなみに元ネタの「鍵泥棒のメソッド」(堺雅人、皆川照之、広末涼子出演)は日本アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞している。

 

民放のBSで放送していたアメリカ映画「16ブロック」。

2006年の作品。

監督リチャード・ドナー、出演ブルース・ウィリスデビッド・モースモス・デフほか。

 

ニューヨーク市警のジャック・モーズリー刑事(ブルース・ウィリス)は、捜査中の事故で足を悪くして以来やる気を失い、勤務中にも飲酒するアルコール依存症の不良刑事。ある日、夜勤明けで帰宅しようとしたところを上司に呼び止められ、午前10時の大陪審に証人として出廷する収監中のエディ・バンカー(モス・デフ)の護送を命じられる。さっさと家に帰りたくて断るが、上司から「裁判所までたった16ブロック(区画)だよ」といわれ、車で15分ぐらいの仕事というので渋々引き受ける。

ところが、護送中に何者かによって襲撃され、襲撃してきたのは仲間の刑事たちだった・・・。

 

この映画についてのアメリカの映画評論家の批評がおもしろかった。曰く。

「中年のアルコール中毒者にとってちょうどよい速度で行われた追跡映画」