善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「四月」「ハンナ」

スペイン・リオハの赤ワイン「アルトス・イベリコス・クリアンサ(ALTOS IBERICOS CEIANZA)2020」

ワイナリーはフランスとの国境に近いバルセロナの近郊、ペネデス地方でワインをつくり続けて150年以上の歴史を持つトーレス

そのトーレスが、ペネデス地方より内陸で、スペイン北部のリオハでつくる赤ワイン。

土着品種のテンプラニーリョ100%で飲みやすいワイン。

 

テレビ放送を収録しておいてワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたジョージア(当時はソ連)映画「四月」。

1962年のモノクロ作品。

原題「APRILI」

監督・脚本オタール・イオセリアーニ、出演ギア・チラカーゼ、タニア・チャントゥリアほか。

2人の男女をめぐって物質文明を風刺するかのような寓話的作品。

 

若い男女は愛し合うカップル。家具も電化製品もないアパートの一室で新生活を始めるが、やがてイスが運ばれてきて家具が増えていく。管理人からドアに鍵をかけるようにいわれて南京錠をいくつもとりつける。

まわりの家々でも家具が必要とされるのか丘の上の大きな木が切り倒され、家具の材料となる。

2人の部屋はどんどん生活用具が増えて便利になるが、物が増えるたびに2人の生活スタイルは乱れ、互いの心も通わなくなる。

ついに2人は、部屋を埋めつくした家具や電化製品を次々と窓から放り投げる・・・。

 

先日、ジョージア(旧グルジア)出身の映画監督オタール・イオセリアーニの長編第1作「落葉」(1966年)を観たが、彼の作品が続けてテレビで放送されていて、「落葉」より前に製作された中編第1作で実質的な監督デビュー作品といえるのが本作。

セリフを使わず(物が増えて互いの心が通わなくなり、2人がいさかいを起こしたときだけセリフ入り。ただし字幕なしなので何をいってるのかわからず)。映像と音楽、ノイズだけの作品。

カメラワークも計算されていて、巧みな映像表現。

セリフがない代わりに、ドアの開閉音とか物がぶつかる音、足音などが登場人物の感情を表現している。

イオセリアーニ監督は1934年ジョージアの首都トビリシ生まれで、本作のときまだ28歳。トビリシ高等音楽院の作曲科で優れた成績を修めているから音楽には造形が深い。さらにモスクワ大学応用数学を専攻したあと、モスクワの国立映画大学の監督科で学ぶ。58年からジョージアで短篇劇映画を数本監督したあと、本作をつくっている。

音楽学校卒業だけに音の使い方にはこだわりがあるみたいで、主人公の男女2人の足音は美しく響くが、家具を運ぶ作業員たちの音は不快な音として響く。そして、物であふれ、いさかいを起こすようになると2人が出す音も不快なものに変わっていく。

本作は完成直後は当局からきびしい目で見られたらしい。寓話的物語はときとして反体制と見られがちで、ソ連当局は本作を「抽象的、形式主義的」と決めつけて一般公開を禁じてしまったという。

さらに、長編第一作としてつくった「落葉」も、反体制的というので上映を禁止された。このためイオセリアーニは一度は映画監督としての道を断念しようと思ったこともあるらしいが、「落葉」が製作から2年後の1968年、カンヌ国際映画祭に出品されて国際批評家連盟賞を受賞し世界的に注目されるようになる。

1976年につくった「田園詩」がベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。彼は79年からパリに移住し、そこで映画づくりを行うようになる。

本作は、権力の圧力に屈しない彼の映画づくりの原点といえるものだった。

 

ところで、ジョージアの映画を見ていつも思うのは、ジョージア文字の何てかわいいこと!

丸っこくて、まるで絵文字のようで、“世界一かわいい文字”と呼ばれてるんだとか。

9年前にジョージアに行ったときに撮った写真。

ジョージアのアルファベットは全33文字で、以下の通り。

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隣接するアゼルバイジャンアルメニアジョージアコーカサス3国の言語は隣同士なのにまるで異なっていて、アゼルバイジャントルコ語系、アルメニアインド・ヨーロッパ語族に分類されるのに対して、3国の中では北に位置するジョージア南コーカサス語族で、まるで共通点がないそうだ。

文字も独自に発達していて、少なくとも5世紀はじめには使われていたとか。

日本のひらがなも丸っこい感じで、世界の文字の中では変わった文字だと思うが、5世紀のはじめごろに中国から伝来した漢字をもとに、平安時代に誕生したらしい。

それぞれの国で発達した文字は、それぞれの国の文化や国民性にもいろんな影響を与えているに違いない。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のCSで放送していたアメリカ映画「ハンナ」。

2011年の作品。

原題「HANNA」

監督ジョー・ライト、出演シアーシャ・ローナンケイト・ブランシェットエリック・バナトム・ホランダーほか。

フィンランドの山奥で、元CIA工作員の父エリック(エリック・バナ)に育てられた少女ハンナ(シアーシャ・ローナン)。一般常識も教えられず、ただ人を殺す技術だけをたたき込まれた彼女は、いつしか父をもしのぐ戦闘技術を身につける。

やがてある任務を負って外の世界にひとり旅立つハンナだったが、そんな彼女を、かつてエリックの同僚だったCIAエージェント、マリッサ(ケイト・ブランシェット)が執拗に追う。

マリッサの放つ刺客との死闘の中でハンナは自分に隠された秘密の存在に気付き・・・。

 

映画「つぐない」(2007年)で13歳の少女を演じアカデミー助演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナンが、同じジョー・ライト監督で今度はサスペンスアクションの16歳の“殺人マシン”を演じている。

「つぐない」でも、そして本作でも、彼女は実年齢で出演していて、まるで彼女の成長の物語を見ているよう。以前、テレビで観た「アンモナイトのめざめ」(2020年)のときは25、6歳のころで、やはり実年齢通りの若い人妻を演じていた。

ただし、本作では、ハンナは「完璧な兵士」をつくるための人体実験の研究により生まれたことになっていて、遺伝子操作によって恐れや哀れみの感情を少なくし、筋力を強くし感覚を鋭くするように手を加えられて生まれた子どもだった。途中、研究は中止され、生まれた子どもたちは処分されたが、唯一生き残ったのがハンナだった。

“殺人マシン”としての訓練を受けたジェイソン・ボーンより、もっとスゴイというか、おぞましい話だが、この計画に関わっていたのがCIAエージェントのマリッサで、人体実験の唯一の生き証人であるハンナ抹殺のために執拗に追いかけてくる。

その役を演じるのが「ロード・オブ・ザ・リング」で美しい妖精のようなエルフの女王を演じたケイト・ブランシェット。悪役を演じる彼女の怖くて冷たい表情を見ていると、そういえば「ロード・オブ・ザ・リング」での美しい女王も冷たい表情をしていたなとフト思い出し、彼女に悪女はハマリ役なのかもしれないとも思ったのだった。