善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「アラベスク」ほか

フランス・ラングドック・ルーションの赤ワイン「エスティバル(ESTIBALS)2019」

ボルドーメドック格付け第5級、ランシュ・バージュが南仏で手がけるワイナリー、ドメーヌ・ド・ロスタルの赤ワイン。

シラーを主体にグルナッシュとカリニャンをブレンド

南仏らしい濃厚な果実味と滑らかなタンニンが奏でるハーモニー。

 

ワインの友で観たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「アラベスク」。

1966年の作品。

原題「ARABESQUE

監督スタンリー・ドーネン、出演グレゴリー・ペックソフィア・ローレン、アラン・バデル、キーロン・ムーアほか。

 

グレゴリー・ペックソフィア・ローレン共演。「雨に唄えば」のスタンリー・ドーネン監督が「シャレード」に続いて手がけたロマンチック・ミステリー。

音楽も「シャレード」と同じヘンリー・マンシーニ

舞台はロンドン。古代アラビアの象形文字の専門家でオックスフォード大学教授のポロックグレゴリー・ペック)は、とある国の大富豪から象形文字で書かれた暗号の解読を依頼される。

引き受けた途端、謎の美女(ソフィア・ローレン)が現れ、危険が迫っていると警告。やがてポロックは訪英するアラブの某国の首相暗殺計画へと巻き込まれてしまう・・・。

 

映画の導入部もラストのシーンも、何だがショーン・コネリー主演の「007」を見ている気分になる。007シリーズの第1作目は1962年の「007は殺しの番号」(原題「Dr.No」)だから、007のほうが先輩だが。

実は「アラベスク」のタイトル・デザインは、007のタイトル・デザインを手がけたモーリス・バインダーによるもの。どうしたって最初から似た感じになっちゃう。

最後にグレゴリー・ペックソフィア・ローレンがいちゃつく場面も、ジェームズ・ボンドと美女のいちゃつき場面にそっくり。

このときグレゴリー・ペック50歳、ソフィア・ローレン32歳。

 

クライマックスでは、目もくらむような高くて細くて長い橋をグレゴリー・ペックソフィア・ローレン、それに某国首相が馬に乗って全速力で駆け抜けるところを暗殺者がヘリから銃撃するシーンがあり、なかなか圧巻。

この橋はサウスウェールズのクラムリン村の渓谷に架かるクラムリン高架橋(Crumlin Viaduct)という鉄道橋だという。

高さ200フィート(約61m)、全長1650フィート(約503m)。日本の鉄道橋で観光地としても有名な兵庫県の余部橋梁があるが、高さ41・5mで長さ310・6m。それよりはるかに高くて長い。そんなところを銃撃を受けながら馬が疾走するというのだからたしかに迫力満点だ。

しかし、鉄道橋というからには線路が敷いてあって馬なんか走れるわけないが、走れるワケがあった。

この橋は1964年6月の通過列車を最後に廃止されて、歴史的建築物というので保存が論議されたが結局取り壊すことになり、66年6月から工事が始まって翌年には完全に取り壊されてしまった。

取り壊しの決定を聞いて「これ幸い」とロケ地に決まったのだろう、橋の閉鎖と取り壊し作業が始まる前に「アラベスク」の撮影が行われた。しかがって線路は除かれ、馬が走れるよう平らにされたのだろう。

その意味では鉄道の歴史を振り返る上でも記念となる映画となっている。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「マグノリアの花たち」。

1989年の作品。

原題「STEEL MAGUNOLIAS」

監督ハーバート・ロス、脚本・原作戯曲はロバート・ハーリング、出演サリー・フィールドドリー・パートンシャーリー・マクレーンオリンピア・デュカキス、ジュリア・ロバーツほか。

 

ルイジアナ州の小さな町の美容院に集う6人の女性たちのおせっかいと友情の物語。

イーテントン家の人々は、長女シェルビー(ジュリア・ロバーツ)の結婚式の準備で大わらわだった。シェルビーと母のマリン(サリー・フィールド)は、式の身づくろいのため偏屈者の未亡人ウィザー(シャーリー・マクレーン)や、町長の未亡人クレリー(オリンピア・デュカキス)など町の女たちの社交場ともなっている美容院にやってきた。

ところがそのとき、シェルビーが発作に襲われた。彼女は1型糖尿病を患っていて、結婚しても子どもを産んではいけないと母親からいわれていた。それでも結婚したシェルビーは、命を賭けてでも子どもを産もうと決心する・・・。

 

映画の主役は老若の女性たちで、何の役にも立ちそうもない男たちは添え物的扱い。それがかえって痛快な映画。

この映画のときジュリア・ロバーツはまだ駆け出しの21歳ながら、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞していて、出世作となった。

 

原題は「STEEL MAGUNOLIAS」。

直訳すると「鉄のマグノリア」。いったいどんな意味なのか?

マグノリアモクレンの仲間で、タイサンボク(泰山木)のことをマグノリアといってるらしい。アメリカ南部を代表する花で、ルイジアナ州では州花になっているほどで、南部女性の代名詞でもある。

南部の女性は一見するとマグノリア(タイサンボク)の花のように愛らしくてやさしいが、鉄のような芯が1本入っていて粘り強い、というわけで「鉄のマグノリア=STEEL MAGUNOLIAS」と呼ばれているようだ。

南部ジョージア州出身の大統領、ジミー・カーターの妻でありファーストレディーとなったロザリン・カーターは、大統領就任中は夫のもっとも親しいアドバイザーでもあったという。ホワイトハウスの自らのオフィスに書類カバンを持ち込んだ最初のファーストレディーであり、南部人特有の愛らしさと粘り強い働きから、ホワイトハウスの記者団から「鉄のマグノリア」とあだ名されていたという。

 

彼女は、ピーナツ農家だった夫のジミーがジョージア州議会議員になったころから政治問題について夫にアドバイスし、ジミーが大統領選への立候補を表明すると、選挙の1年以上前から1人で選挙運動を始め、全米各地を回って夫がなぜ大統領になるべきかを説いたという。

ジミーが大統領に就任すると、彼女は大統領や副大統領、その他の最高幹部が集まる内閣会議にも出席。また、米国内外の集まりで大統領の代理をつとめたこともあり、ジミーもロザリンも、2人は常に対等のパートナーシップを持っていた、と語っていたとか。

さすが「鉄のマグノリア」だ。

ちなみに、ジミー(97歳)とロザリン(94歳)のご夫婦は昨年7月、結婚75周年を迎え、ジミーは歴代大統領の中で最長寿の存命者となっている。