善福寺公園めぐり

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「非ケインズ効果」という屁理屈

それにしても学者というのは、いろんな屁理屈を考え出すもんだねー。
「あらたにす」という新聞の読み比べサイトで、森信茂樹サンという大蔵官僚出身の大学教授が、「『非ケインズ効果』をご存知ですか?」と題するコラムで紹介している。

「不況になったら減税や公共事業をすると景気が回復する」というのが経済学者ケインズの主張。森信氏は日本でも「『失われた10年』と称される90年代に、大量の国債を追加的に発行して減税や公共事業の追加がケインズ政策として行われた」と述べ、こう続ける。

「しかし国民は、将来の国債の償還や利払いに不安を感じ、近い将来増税があるのではないかと考え始め、所得の増えた分を追加的な消費に振り向けず貯蓄に回した結果、景気対策の効果が極めて少なかったという実証研究がなされている」

そして森信氏によると、
「このように、財政事情の悪い中、大盤振る舞いの放漫財政政策を行っても、国民は、将来の増税を予想して財布のひもを緩めないので、期待されたような需要追加効果が出ないことを『非ケインズ効果』と呼ぶ」んだそうだ。

逆に言えば、増税や歳出削減をすると、むしろ景気は上向くようになり、これも「非ケインズ効果」だという。
そのわけは、国民は、現在だけでなく将来の収入を考えたうえで消費にまわす金額をきめる。その一方で、深刻な財政危機の中、公共事業を増やせば赤字が増え、そうなればいずれ増税が待っている、ということも知っている。
すると、今、減税や公共事業の追加を行ったりすれば、「将来、増税があるんだな」と国民は警戒して、消費を抑えるようになってしまう。そうではなく、最初に増税や歳出削減を行えば、将来は割高な増税がないんだなと国民は安心し、消費を増やすから、やがて景気はよくなる。ゆえに不況の今こそ増税をすべきなのである、というわけだ。

国民は、そこまで将来のことを考えて消費行動をしているだろうか? と素朴な疑問を持ってしまうが、少なくとも、消費税の増税をしたいと思っている政府に、これほど都合のいい理屈はなかろう。
実際、副総理兼財務大臣管直人氏はこの理論で消費税増税に言及している。
一方、法人税については「国際競争力」を理由に「増税」の「ぞ」の字もないどころか、新聞を見れば「減税」の見出しが踊るばかりだ。

しかし、本来、どんなに複雑な要素が絡んでいようと、国家財政のルールは明瞭である。
つまり、国民の生活にとっての無駄な支出は極力減らし、「持たざる者」からはなるべく取らず、「富めるもの・持てるもの」には大いに出してもらう、それが基本であり、古今東西変わらない真理である。
「富めるもの・持てるもの(赤字だ赤字だと騒いでいるトヨタだって内部留保は7兆円もあるんだとか)から取る」ということをしたくなくて、何とか持たざる者、つまり一般庶民から尻の毛までムシリ取ろう、消費税の増税を合理化しよう、と考え出された尻ならぬ屁理屈が「非ケインズ効果」なるものなのだろう。
われわれ国民の心理まで、彼らの都合のいいように解釈されようとは。ゾッとしてしまう。