善福寺公園めぐり

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ヒントがいっぱい「TOMORROW パーマネントライフを探して」

銀座のエルメスビル10階にあるミニシアター「ル・ステュディオ」でフランス映画「TOMORROW パーマネントライフを探して」を観る。

写真は、映画の一場面で取材に向かうスタッフたち(HPより)。f:id:macchi105:20201121131818j:plain

「ル・ステュディオ」では年間テーマを決めて毎月1本ずつ映画を上映していて、今年のテーマは「イノベーションの動き」。

「TOMORROW パーマネントライフを探して」は、温暖化など地球規模の危機に直面する現代社会で、既存の枠組みを問い直し持続可能な世界をつくるためのヒントを探すドキュメンタリー映画。2015年製作。

 

 

監督・出演はシリル・ディオン、メラニー・ロラン。出演はほかにも。

シリル・ディオンは1978年生まれのジャーナリストで活動家。メラニー・ロランは1983年生まれ。「イングロリアス・バスターズ」「オーケストラ!」などに出演した女優で、監督としても活躍している。

2人は、2012年に21人の科学者たちが科学雑誌「ネイチャー」に載せた「私たちが今のライフスタイルを続ければ人類は滅亡する」という論文を読んで衝撃を受けたという。

この話を映画にしようと取材と撮影を開始。食べもの、エネルギー、マネー、教育の今を巡る旅に出て、都市農業、再生可能エネルギー地域通貨、教育改革などのキーワードから、“明日”を変えていくためのヒントが見えてくる映画を完成させた。

 

たしかに希望が見えてくるような映画だった。

たとえば農業の未来は、企業化された大規模農業ではなく小規模農業にこそあると提唱している。

大規模農業はそもそも利潤優先で、ムダに機械や農薬を使ったり輸送コストをかけたりするだけでますます地球環境を汚染し、とても持続型農業とはいえない。それより消費者の近くで生産する小規模農業こそ将来の希望となりうる、という。

具体例で上げられたのがアメリカ・デトロイト

大半の住民が自動車産業に従事する単一工業都市だったデトロイトは、1960年以降、工場閉鎖に伴い従業員は失業、人口は200万人から70万人に減少した。

新鮮な食品が手に入らなくなり、住民たちは自給自足を始めた。今では人口の密集する地域に約1600の小規模な農場があり、未開墾地はまだ2400ヘクタールもあるという。

 

イギリスのマンチェスター近郊にある人口1万4000人のトッドモーデンは、世界的なインクレディブル・エディブル(みんなの菜園)の生まれた地。これは、町の真ん中で花壇や公共の土地に作物を植え、共有するというものだ。

何100種類もの果物の木、豊富な種類の大量の野菜を植え、園芸農業の訓練センターを設立し、農民たちの移住を受け入れた。このやり方は数10カ国と数100の町にも広がっているという。

 

政治の分野でも興味深い例が紹介されている。

今や、選挙で議員や首長を選び、政治をゆだねるやり方では本当の民主主義が実現しない時代。二世議員が当たり前になっているように、相も変わらず地盤・看板・カバンの選挙、投票率も低下しつづけていて、国民や市民の声がしっかりと届いていない現実がある。

アイスランドでは、2008年の金融危機によって政府は退陣に追い込まれた。もう議員たちには任せていられないというので、くじで選ばれた市民の代表による政治が始まった。

政治家、銀行家、大企業を監視する組織が生まれ、無作為に選ばれた市民1000人が政策提言し、新憲法を作成する25名の市民を選出。市民による市民のための憲法を作ったのだ。

ウェブを通して寄付金が集まり、検討会はつねにオープンなものだった。

2011年に新憲法の草案を国会に提出、国民の67%が賛成したという。

 

なるほど、“くじ引き民主主義”はこれからの政治のひとつの潮流になるかもしれない。