善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「サラの鍵」

フランス・ボルドーの赤ワイン「セレクション・アニョー・ルージュ(SELECTION AGNEAU ROUGE)2019」

生産者はメドック格付け第一級で5大シャトーの1つ、シャトー・ムートン・ロスチャイルド

メルロを主体にカベルネ・ソーヴィニヨンカベルネ・フランブレンド。爽やかな果実の風味とふっくらとした口当たりが魅力のワイン。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたフランス映画「サラの鍵」。

2010年の作品。

原題「ELLE S'APPELAIT SARAH」

(原題の意味は「彼女はサラという名前だった」)

監督・脚本ジル・パケ=ブランネール、出演クリスティン・スコット・トーマスメリュジーヌ・マヤンスほか。

 

第2次世界大戦でナチス・ドイツに占領されるも連合軍とともに戦ってドイツ軍を撃退し勝利したフランス。そのフランスの“負の歴史”を描く映画。

 

1942年7月16日早朝。パリのマレ地区・サントンジュに、フランス警察によるユダヤ人の一斉検挙が迫る。ユダヤ人だというだけで迫害を受ける人々。10歳のユダヤ人の少女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)は幼い弟ミシェルを納戸に隠し、納戸の鍵を手にしたまま収容所へ送られてしまう。

そして現代。アメリカ人ジャーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、ユダヤ人迫害事件を取材するうち、あるユダヤ人家族の悲劇を知り取材を始める・・・。

 

全世界で300万部を突破したというタチアナ・ド・ロネの同名ベストセラー小説の映画化。

ナチス・ドイツに占領されたフランスだったが、ドイツに意のままに操られる傀儡政権のヴィシー政権(フランス中部の町ヴィシーに首都を置いたことからこう呼ばれる)が一応のフランス人による政府となっていた。

ユダヤ人の迫害というと、ナチス・ドイツによるホロコースト(大量虐殺)が有名だが、親独のヴィシー政権も迫害に協力していた。

第2次世界大戦が始まった1939年には、パリには15万人ほどのユダヤ人が住んでいたといわれているが、ドイツ占領下でフランス国内でもユダヤ人への迫害を開始。1942年7月16日~17日にかけて、ヴィシー政権はフランスの警察官ら4500人以上を動員してパリ市内で大規模なユダヤ人狩りを行った。

「ヴェロドローム・ディヴェール(冬季自転車競技場の意味。略称ヴェル・ディブ)大量検挙事件」と呼ばれるもので、映画の中で10歳の少女サラが巻き込まれたのがこの事件だ。

このとき、約1万3千人のユダヤ人が検挙され、そのうち約4000人あまりが子どもだったという。

検挙されたユダヤ人のうち、子どもがいる家族はパリ市内にあるヴェル・ディブに入れられ、独身者や家族がいない人たちはパリ郊外の強制収容所に入れられた。ヴェル・ディブは屋根のない競技場なので昼間は灼熱の太陽が照りつける。食料や水などもほとんど与えらず、トイレもなく垂れ流すしかない。劣悪な衛生環境の中で、さながら生き地獄だったという。

その後、ユダヤ人たちはどうなったか。

映画はからくも脱走に成功した少女サラの物語だが、人々はアウシュヴィッツをはじめとする各地の絶滅収容所へと送られ、終戦までに生き延びたのは100人に満たない大人のみで、子どもは生き残らなかったといわれている。

 

事件から今年でちょうど80年。

しかし、何十年たとうと、自分たちの国が犯したこの歴史の汚点に、目を背けてはならないし、なかったことにしてはならない。二度と同じことを起こさせないためにも、繰り返し、繰り返し描かなければならない。

映画はそのことをいっている。

それは、日本もしかり。かつてのアジア侵略や、関東大震災直後の朝鮮人虐殺なども、なかったことにはできない。