善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「クライング・ゲーム」ほか

今回も冷やしておいしい赤ワインを2本。

チリの「モンテス・アウター・リミッツ・サンソー(MONTES OUTER LIMITS CINSAULT)2021」

ワイナリーはモンテス。「OUTER LIMITS=ぎりぎりの限界」の名前の通り、ワインにピッタリのブドウが栽培できる限界の地、太平洋から25km離れた場所に位置する畑で栽培されたブドウを使ってワインづくりを行っているのだとか。

ブドウ品種はサンソー。

地中海沿岸で広く栽培される黒ブドウ品種で、今や世界中で栽培されている。

 

もう1本はイタリア・トスカーナの「アルパ・キャンティ(ARPA CHIANTI)2019」

イタリアのファッションブランド「サルヴァトーレ・フェラガモ」のファミリーが、トスカーナに所有する高級リゾート地イル・ボッロでつくっているワイン。

ブドウ品種はイタリア・トスカーナを中心に栽培されているサンジョヴェーゼ。

 

ワインのあと観たのは、民放のBSで放送していたイギリス映画「クライング・ゲーム」。

1992年の作品。

監督・脚本ニール・ジョーダン、出演スティーヴン・レイ、ジェイ・デヴィッドソン、ミランダ・リチャードソンフォレスト・ウィテカーほか。

 

北アイルランド問題でIRAアイルランド共和軍)のテロが頻発していた時代。英国軍兵士のジョディ(フォレスト・ウィテカー)は、北アイルランドベルファストIRAに拉致される。拉致犯たちは英国政府に仲間の釈放を要求しており、要求が叶わなければ人質のジョディは殺される運命にあった。

ところが、IRAのメンバーで見張り役のファーガス(スティーヴン・レイ)はジョディとつい打ち解けてしまう。いつしか2人の間には友情が芽生え、ジョディは、もし自分が殺されたらロンドンの「メトロ」というバーに行き、そこにいる恋人のディル(ジェイ・デヴィッドソン)にマルガリータをおごってやり、「愛していた」と伝えて欲しいと頼む。

そんな中、英国軍による人質奪回作戦が始まるが、逃げようとしたジョディをファーガスが追ううち、ジョディは英国軍の車に轢かれる事故で命を落としてしまう。

申し訳ない気持ちを募らせたファーガスは、ロンドンに行き、美容師をしているディルに会う。やがて彼は、夜はバーで歌うディルの美しく不思議な魅力にひかれ、2人は急速に接近していくが・・・。

 

後半で大どんでん返しがあり、観ていてびっくり。

この映画の見どころは、ひと目見た瞬間からファーガスが心惹かれていく美しいディルの存在だが、実はディルは女ではなく男だったというのが大どんでん返し。

しかし、この役ができる役者を探し出すのは一苦労だったようだ。

監督のニール・ジョーダンは、当時親しくしていたスタンリー・キューブリックにキャスティングについて相談したそうだが、「君のあげた条件を全部クリアしてる人なんて、何年かけても絶対に見つからないよ」と諭されたという。

それでもスタッフたちはロンドン中を探し回り、ついに見つけたのが、当時ファッションデザイナーをしていたジェイ・デヴィッドソン。演技未経験で全くの無名ながらディル役に抜擢したそうだ。

 

この話を聞いて、黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」のエピソードを思い出した。

隠し砦に籠もる殿さまの娘で雪姫というのが出ているが、雪姫を演じたのは当時大学生でズブの素人、映画初出演の新人、上原美佐。「気品と野生の2つの要素が醸し出す異様な雰囲気を持つ女優」を探し出せと黒澤監督から命令が出ていて、全国から4000人もの応募者を集めてオーディションするも見つからず、全国の東宝系社員にも探させたところ、たまたま映画館の観客の中にいた彼女を東宝の社員が見つけてスカウト。特訓の末に撮影に臨んだという。

いかに監督のイメージ通りのキャスティングが重要か、このエピソードからもわかる。

まったくの素人で映画初出演のジェイ・デヴィッドソンの演技はハリウッドを驚かせ、

第65回アカデミー賞で彼はいきなり助演男優賞にノミネートされている。

 

ちなみにアカデミー賞にはほかに作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞編集賞の合計6部門でノミネートされ、監督もしていたニール・ジョーダン脚本賞を受賞。

なお、この年のアカデミー賞で作品賞、監督賞を受賞したのはクリント・イーストウッドの「許されざる者」だった。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたフィンランド・イギリス・中国合作の映画「世界で一番しあわせな食堂」。

2019年の作品。

原題「MESTARI CHENG」

監督ミカ・カウリスマキ、出演アンナ=マイヤ・トゥオッコ、チュー・パック・ホング、カリ・バーナネン、ルーカス・スアン、ベサ=マッティ・ロイリほか。

 

フィンランド北部、ラップランドの小さな村。シルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)が一人で切り盛りしている食堂に、上海からやって来た中国人のチェン(チュー・パック・ホング)とその息子ニュニョ(ルーカス・スアン)が訪れる。

チェンは恩人を捜しているというが知る人は誰もおらず、困っていると、突如、中国人の団体客がバスの故障で昼食予定を変更したからここでお昼を食べさせてくれないかとやってくる。しかし、この店、メニューにはマッシュポテトとフィンランドソーセージぐらいしかない。シルカが困っていると、「私はプロの料理人です。私がつくりましょう」とチェンが料理をつくり、客たちは大喜び。チェンがつくった料理を村の人たちに食べさせると、これも好評だった。

シルカは、恩人捜しに協力する代わりに食堂を手伝ってもらうことにするが、チェンの料理は評判を呼び、食堂は大盛況となる。こうしてシルカや常連客たちと親しくなっていくチェンだったが、観光ビザの期限が迫り、彼はフィンランドを離れなければならなくなる・・・。

 

ミカ・カウリスマキ監督は同じく映画監督のアキ・カウリスマキの兄で、フィンランドを代表する映画監督のひとり。

医食同源」の中国の食文化とフィンランド大自然とが、うまい具合に溶け合ったような映画。

 

民放のBSで放送していたアメリカ映画「ベティ・サイズモア」。

2000年の作品。

原題「NURSE BETTY」

 

監督ニール・ラビュート、出演レネー・ゼルウィガーモーガン・フリーマンクリス・ロックほか。

 

カンザスの田舎町に住むウェイトレスのベティ(レネー・ゼルウィガー)は、女癖の悪い亭主に泣かされる日々だったが、大好きな昼メロという支えがあった。ドラマを見ながら、自分が看護婦になって主人公の医師と恋をするという空想にふけるときが最も幸せな時間だった。

ところがある日、自宅の一室でドラマに夢中になっていると、隣の部屋でマフィアに雇われた殺し屋2人(モーガン・フリーマンクリス・ロック)が夫を殺害するのをドアの隙間から目撃。ショックを受けたベティは、現実と夢の境を飛び越え、自分は昼メロの中の看護婦だと思い込んでしまう。

憧れの医師と結ばれるためハリウッドへと旅立つベティ。

そのあとを、夫を殺した犯人たちが追いかけていく・・・。

 

ドラマと現実がゴチャゴチャに絡み合っていくところが、バカバカしいんだけど、笑える。暑い夏の夜には、こういう映画も暑気払いにいいかも。

殺し屋の一人、クリス・ロックは、今年のアカデミー賞授賞式でウィル・スミスから平手打ちを食らったことで有名。本作のときは無駄口ばかりたたいて口数の多い若いチンピラの役で、最後は殺されてしまうが、それから20年以上がたって、同じようにしてひとこと多かったがゆえにビンタされるとは。